第百六十二話◆ニア編:ニア家に泊まろう
第百六十二話
連れてこられたのは山奥。小雨の中、俺に渡されたものは突撃銃と手裏剣だった。
「え、こ、これをどうすればいいんだよ」
「ニアに向けて撃ってくれ」
「いや、危ないだろ」
そういうとニアは笑って俺に引き金を引いた。
「うわ……」
白いシャツに蛍光ピンクがよく映える。な、なんじゃこりゃああっ。
「染料が体に付着するだけだ。もちろん、目にあたったりすれば痛いけどな」
痛いで済まされるレベルなのかどうかは置いておくとして、手裏剣のほうは危ないだろう。手渡された手裏剣の片方は棒手裏剣で投げ方を俺は知らない。
「これ、どうやって投げるんだよ。ダーツのように投げるのか」
「ああ、そうか、じゃあ今日はこっちだけでお願いするぞ」
突撃銃を手渡される。今日はって………また明日とかするのだろうか。
切り開かれた場所で俺から数十メートル先の白線へとニアは離れる。ニアの服装は露出の高いクノイチのような服で、腰には短刀と刃の長いクナイが二本さされていた。
「好きなタイミングで撃ってきていい」
「わかった。悪いけど、撃たせてもらうぜ」
しっかり狙いをつけて引き金を引き続ける。ドラム式マガジンがすさまじい音を立て、銃口から銃弾が飛び出していく。しかし、銃弾はニアに襲いかかることなく、ぬかるんだ地面に埋まるだけ埋まっていった。そして、俺はニアの姿を見失っていた。
「どうした、零一。ニアはここだぞ」
「くぅっ」
ニアは俺の隣にいた。いつの間にここまでやってきたのかは分からないが………
「なぁ、ニア。前々から思っていたんだがお前は何者なんだ」
「ニアはニアだ。ニア・D・ロード………忘れたのか」
「いや、そうだな。ニアはニアだ」
俺が使い物にならないとわかったのか突撃銃を取り上げられた。
「零一、帰りにニアの家に寄ってくれ。話したいことがあるから」
「わかった」
どうでもいいことなのだが、カーキ色のクノイチの服がぬれてぴっちり身体に張り付いているもんだからニア相手に目をそらさなければいけなかったりする。
――――――――
バスタオルを借りて身体を拭いているとニアにお茶を渡された。
「ありがとな」
「友達として当然のことだ」
まだ熱いお茶をすすりながらニアは俺のことを見ていた。
「どうかしたのか」
「……零一はニアの友達でうれしいか」
「急に変なことを聞くなぁ。どうかしたのかよ」
「…………ニアはこう見えて友達が少ないんだ」
そういわれて俺はどう答えればいいのかわからない。とりあえず、ケータイを見せることにした。
「俺の登録件数少ないだろ。友達の少ない数ならニアに勝てるかもしれないな」
「………変な奴だな」
「ニアに言われたくないぜ」
「でも、元気は出た。ありがとう、零一」
大人びたような印象を受けるがまだ中身は完全に子供だなと笑顔を見てそう思った。
「そうだ、零一………今日は夕飯でも食べていってくれ」
「え、いいのかよ」
「構わないぞ。この前ハヤシライスを食べさせてもらったからな」
ちょっと待っていてくれとそう告げてニアが部屋から出て行った。以前は忍者屋敷のような扉だったが、今は普通に引き戸になっていたりする。
「ふぅ………」
殺風景極まりない部屋の畳に背中をつけて天井を見ていると板が外れて人が降りてきた。
「じ、爺さんじゃねぇか。どこから出てくるんだよっ」
「ここはわしの家じゃ。わしがどこから出てこようが勝手じゃろう」
そう言われるとそうかもしれないし、大体ニアの家はおかしいところが多いので驚くほうがおかしいかもしれないな。
「今日は泊まっていくのだろう。ニアから聞いたぞ」
「え、嘘。俺は夕飯をごちそうするって聞いたぞ」
「そうなのか、まぁ、別にいいじゃろ。客人の服はきちんと準備されているからな」
こうして、俺はニアの家に泊まることになったのである。まぁ、アパートに帰っても誰もいないから別にいいけどな。
バイト昼休みです。ふーむ、人生とは谷ばっかりですねぇ。女にふらーれました…そういうわけでかなり不安定です。突くと爆発しますよ。こんな喪失感は生まれて四回目ぐらいです。さて、ニア編終わったら都合がつけば竜斗編に行きたいなと思っています。五月九日十二時十二分雨月。