第百六十一話◆ニア編:友よ…
改めて言っておきますが零一が澤田夏樹にGWに連絡をいれたときから他の編の話はなかったことになっています。
第百六十一話
梅雨、雨が雨雲から降り注ぎ、アスファルトへとたたきつけられる。もちろん、アスファルト以外にも人や車、建物なんかにも降り注いでいる。
「………はぁ」
ああ、俺が今頃二年生であったならば二階から見える景色はさぞかし、そういったものが見えていたことなのだろう。雨は一生懸命校庭に降り注いでいるだけとしか俺の目には映らなかった。
「憂鬱だ」
昼休みに話すべき友人たち(澤田、剣ともに行方知れず)がいないため、一人で過ごさなければならない。そんな時だった。
『校内放送、校内放送………二年D組、ニア・D・ロードさん、至急職員室まで来てください。繰り返します………』
ニアが呼び出されるなんてめったになかったというより、初めてなのではなかろうか。ついつい、俺は興味を覚えて職員室へと向かうことにしたのだった。
―――――――
職員室は二階にあり、正直言って生徒がめったに近寄らないような場所だ。しかし、俺は以前ここに何度か足を運んでいたりするわけだ。
職員室の中をのぞいてみたのだがどうやらまだニアは来ていないようだ。
物陰に隠れる必要があるのかどうかはわからないが一応階段あたりに隠れてあたりをうかがう。
「あれ、零一じゃないか」
「ニア………」
なんと、後ろからニアがやってきた。まさかこっち側からやってくるとは………
「こんなところで何をしているんだ」
「ん、あ~、まぁ、ニアが呼び出しされたから何となく気になってきてみたんだ」
「そうか、それなら一緒にくるか」
「い、いや、俺はな………」
ニアに腕を掴まれると強引にそのまま職員室へと連れて行かれてしまった。もちろん、抵抗はしてみたのだが俺の抵抗なんて毛虫が歩く程度しか考えていないのだろうな。
「先生、来ました」
手をつかんだままの俺を先生はどう見るのだろうか。
「……ロード、お前の隣にいる奴は友達か」
「はい、そうです。ニアの大切な友達です」
「そうか……それならいい。悪かったな、戻っていいぞ」
先生はそれだけ言ってあっさりとニアを職員室から追い出した。だが、俺だけ残るようにと言われたのである。
「あの、俺に何か用ですか」
「ああ、ロードは友達と一緒にいるところが少ないからな。友達がいないのかと不安だったのだが……君は友達なのだろう」
「ええ、まぁ」
友達だろうな。うん、親友と言っていいかはさておき、仲がいいのは確かではあるし。
「よし、それなら今後も彼女の友達としてやってくれ。話しているところなんてめったに見ないからな」
「え、そうなんですか」
「ああ、その場にいても全く気がつかないと言っていい。まるで忍者のようだよ」
「………」
「それにな、最近学校に来ない時も多いんだ。家庭訪問したりもしたんだが残念ながら誰もいなかったということも多々あったな」
今時珍しい熱血先生のようだ。まぁ、俺が関与しなくてはいけない話題だろうが口にするのはどうかと思った。
先生、あの家は少し、いや、かなり変です。
―――――――
放課後、下駄箱で待っているとニアがやってきた。
「ニア、たまには一緒に帰ろうぜ」
「………ああ、いいぞ」
珍しく、すぐさま回答をしてくれるとはいかなかった。
「なぁ、最近学校にも来てないそうだな」
校門を出てすぐ、尋ねてみることにした。
「ちょっと忙しいんだ。じーじがな、後継者をニアにしたいって言い出してそのための試験があるんだ。このことは秘密だからじーじは誰にも言うなって言っててモヤモヤが溜まるんだ」
「………」
「ん、なんだか不思議な顔をしているぞ、零一」
「今、お前俺にいったぞ」
「………」
人差し指をおでこにあてて、ニアは何やら考えていた。そして、俺のほうを見た。
「聞かれてはいけないものを零一は聞いてしまったな」
「あ、安心しろよ。俺は誰にも言わないから」
「そうか、それならいいぞ」
何がいいのかはさっぱりわからないが次からは気をつけよう。うかつに知ってしまうと危ないようだし。
「うぅん、それならいっそのこと零一にお願いするか」
「何をだ」
「修行だ」
最近の女子高生が絶対に口にしないような言葉をニアは平気で使うから怖い。修行ってなんだよ。
NのAさんへ。ニアの他キャラとの辛みが少ないのはちゃんと理由があります。シーンのカットに関してはなるほど、おっしゃる通りです。飛ばしまくっている感がありますからね。今後の方針を考えることとします。さて、今日のあとがき終わり。五月八日土曜、九時七分雨月。