第百五十八話◆02編:白金の少女
第百五十八話
02の準備が出来るまで待っておれといわれ、連れてこられた場所は応接間。テーブルの上には『勇者セット』とかかれた……剣道でつかう篭手、胴、他にはレガース、工事現場で使用されているヘルメット、目を保護するためのメガネというよりゴーグルに近いもの、市販されているような安っぽくない頑丈そうなマスクがおかれていた。
「……」
ヘルメットのところには『見学者』と書かれているシールがつけられていた。篭手からはなにやらなんとも言えないにほいが……
ともかく、爺さんがくれた装備なのだからつけてみた。近くにはジュラルミンの盾も置かれており、守りは完璧だ。どうみてもありあわせの道具だと思ったのだが、素材などは違うのか、どれも軽くて動きやすい。
盾は背中に背負うことが出来るようにもなっており、取っ手を可変させて遊んでいるとふすまが開いて爺さんが入ってきた。
「お、どうやらちゃんとつけたようじゃな。色が統一されておらんが警察にはぎりぎりで通報されんレベルじゃ……あと、インカムじゃ。これで02に状況などを伝えるといい」
オペレーターがつけるようなタイプを装着するともう、何の職業についているのかさっぱりわからない。
「絶対に通報されると思うぜ」
鏡があったら絶対に潰していただろう。まぁ、そんなことはどうでもいい。どうせ、行くのは地下なのだから警察だっていないだろ。地下警察なんて……流石に税金の無駄遣いだろうし。
「盾とかは在るんだけど身を守る武器は無いのかよ」
「ん、じゃあこれを渡しておこう」
乱暴に投げられたそれを掴む。木刀の小太刀だった。子どもだって振り回すことが出来る軽さだ。中に鉄芯が入っているわけでもなく、当然、リーチも短い。
「……これ、一本なのかよ」
「ああ、そうじゃ。駄目だと思ったらそれで相手をぶて」
大丈夫なのだろうかと思っていると爺さんの後ろにあるふすまが開いた。
「え……」
「お待たせしました、ゼロワン様」
其処にいたのは簡単に言うならば天辺からつま先まで真っ白の少女。もっと具体的に言うのならば髪の毛は腰まで長くて白く、無機質な瞳も白い。肌も透き通るというよりは単に白かった。病的というほど細い体格ではないが、その白さの所為で何処と無く儚げな印象を受ける。身体にぴっちりと張り付いているようなスーツで、胸は大きすぎず、小さすぎずといったところだろうか……まるでモデルのようだ。
「見とれていましたか」
言葉のニュアンスでそれが誰だったのかようやくわかった。きっと、黙っていれば気がつかないかもしれないな。
「無表情でそれを言われると恐いものがあるぞ」
「わかりました、冗談は控えておきますね」
「ふむぅ、やはりプロトタイプじゃからな。完全に機能はしなかったか……しかし、しっかりと装置は積まれていると言っておったし……」
爺さんはあごに手をやってため息をついていた。何を期待していたのだろうか。
「なぁ、瞳も真っ白だし、髪も真っ白だ。肌が白いと無機質なイメージが強くなる……大体爺さん、02の身体は盗られたって言ってなかったか」
「プロトタイプといったじゃろう。相手はこれがこっちに運ばれていることに気がついていなかったようじゃからな。完全稼動させるにはやはり、完全体が必要になってくる」
「……不安だ」
「安心しろ若造。戦闘能力に関しては殆ど能力差がない」
本当だろうかと02のほうを見ると銃の手入れなんてしていた。
「……02、頼りにしてるぜ」
「任せておいてください、ゼロワン様」
「うん、まぁ、そっちのほうが機械っぽいといえば機械っぽいけどやっぱり違和感はあるなぁ」
―――――――
「じゃ、気をつけて行ってくるんじゃぞ」
爺さんが俺たち二人に向けて敬礼をしていた。そんな事をされるとかなり恐いぞ。
「大丈夫ですよ、ゼロワン様。私は壊れるまでゼロワン様を守って見せます」
背中には登山に使うような大きなリュックがある。そして、銃口部分がちらちらと見えていたりする。暴発とかしないよな……。
「うん、頼りにはしてるけどお前が壊れた時点で俺、多分アウトだから」
地下の扉は今までどおりだったが、長いはしごの先には以前と違って結構大きめな横穴が掘ってあった。横幅十メートル、縦十メートルといったところか……
「ゼロワン様、お下がりください。前方五メートル先より敵反応です」
「……さ、早速かよっ」
てっきり02は銃を装備して戦うのかと思ったのだが、違った。バックパックを下ろしてそのまま走っていったのだ。闇の向こうでは……ぐしゃ、ぐしゃっという音しか聞こえてこない。
「……」
俺はジュラルミンの盾を前方に出してインカムを出す。雑音なんて聞こえず、02からの声が聞こえてくる。
『敵を撃破しました。今、そちらへと向かいます』
「わかった」
02はすぐさま戻ってきて再びバックパックを装着する。まぁ、装着って言っても背負っているだけなんだけどな。
「なぁ、何で背中の銃を使わなかったんだ」
「……どれだけの敵がいるかわかりません。それに、どの程度の実力なのか知っておきたいと思いました」
無表情で真っ白な顔が俺の方を振り向いてそういった。
「で、どの程度の実力だったんだ」
「……まぁまぁです」
02がまぁまぁというのなら俺にとっては……
そんな時、02が前を歩きながらこういった。
「笑えないというのは実に不便です」
「え」
「……私が笑顔で大丈夫ですと伝えることが出来たならば、ゼロワン様は安心してくれるでしょう」
「そりゃまぁ、そうだな」
「その不安そうな表情も消しさることが出来るはずでした……完全体、必要です」
その後、地下一階をくまなく捜査したのだが他に敵は見当たらなかった。02が倒した相手は縦半分にされており、それがマネキンのようだったことに気がつく。
「……」
俺の胸には一抹の不安がよぎった。
ああ、大体の人が今日でGW終わりですねぇ。うう、やらなきゃいけないことがまだ終わってない……誰かぁ、ヘールプっ。泣き叫んでも仕方ないので地道に終わらせようと思います。うん、一日あれば何とか半分は終わるでしょう。さて、以前から頭の中では考えていた02編。色々と考えた末にどうしても02が最後爆発してしまうというオチに……まぁ、たまにはバッドエンドもいいかなぁと妥協してみたりもしましたが02では難しいので零一を爆発させるという爆発オチに……おならに火が引火したとか。ともかく、今日はそんな事を言っている場合ではないのは確かなのでここらでドロン。五月五日水曜、八時五十分雨月。