表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
156/290

第百五十六話◆笹川編:秘密の文章。

第百五十六話

 笹川栞は奪い返したメモリをじっと眺めながら自分のパソコン画面を見つめていた。

「……見てないって言っていたけど……」

 不安だった。見られている可能性も無くはない。雨乃零一という人物とは付き合いが一年になるが、まだ全てを知っているわけではないのだから。

 さて、これからもう一度かれのアパートまで走っていって尋ねようかと思っていると後ろから兄である真の声が聞こえてきた。

「おいおい、栞……てっきり泥棒が入ったのかと思ったよ」

「あのね、兄さん……盗られる物なんて此処には何も無いわよ」

 そうだろうかと真は辺りを見渡した。何故、そんなものがわからないが英語の原書のようなものまでこの部屋の本棚には収まっていたりする。見る人が見たらもしかしたら価値がある本の一冊ぐらい、あるのかもしれない。

 ぐるりと本棚を見渡して、真はあることに気がついた。

「おや、最近恋愛小説が増えているんじゃないのかい」

「気のせいよ」

 どうでもよさそうにそう呟くが、兄は話を聞いていない。

「ふぅむ、栞もそんな年になったのか……」

「そういうわけじゃないわ」

「やれやれ、何処の誰に心を奪われたのやら……まぁ、栞が言わなくてもぼくは見当がつくけどね。ふぅむ、しかし……実に倍率の高い競争なんだろうな。見る人が見たら、彼は結構いい線行っているんじゃないのかなとぼくは思うわけだよ。意外とどこかの御曹司だったりしてねぇ……おや、そうしたらぼくにすばらしい弟が出来るかもしれないということか。これは実にめでたいことだな。そうだ、父さんと母さんに告げてこよう……ぐぎゃっ」

 先ほどまで眺めていた何かの英語の原書が顔面にぶつかる。栞は兄のおしゃべりを黙らす方法を暴力で押さえ込むか、無視するかのどちらかでいつも対処している。勿論、普段は無視の方向だがいらいらしたときは暴力に訴える。



――――――――



 帰宅し、窓の外の夕陽を眺めながらため息をついた。最近、日が落ちるのが極端に遅くなったなぁとは思うけど毎年のことだ。

「なぁ、02」

『はい、何ですか』

「ちょっと気になることがあるんだけどいいか」

 ケータイの待ち受け画面では首をかしげる02が表示された。死んでも、絶対に今のクラスメートには恥ずかしくて見られたくないな。

『気になること……今日の晩御飯の候補予定ベスト十六ですか』

「いや、今日はインスタントだ」

『さびしい生活ですね』

「今日は作る気にならないんだよ」

『一日でもサボったらサボり癖がついてしまいます』

 いちいちお節介が過ぎるな、02は。

 ため息を一つついてから俺はもう一度たずねることにした。

「話が逸れているぞ、俺はな……」

『……ゼロワン様、笹川栞様からの着信です』

「はいはい……もしもし、どうした」

 ディスプレイ上の02は踊っていた。何故だろう……

『これから会える……わよね』

「ああ、暇だし、料理は作らないし……笹川ん家に行けばいいのかよ」

「ううん、わたしがそっちに行くわ……というより、もう来ているけどね」

 玄関の扉が開け放たれ、笹川がケータイを耳に当てながら歩いてきた。

「ん、そんなに急用だったのか」

「別に、そうでもないんだけど。今度の休日、一緒にまた初版を買いに行きましょう」

 何故だろう…まるで勝負を挑んでいるような目つきだ。恐い……とは思わないが変に緊張させられるそんな瞳だった。

「わかった、予定を空けておく」

「ん、ありがとう……じゃあね」

 立ち上がり、スカートを翻して玄関のほうへと歩いていった。

「おいおい、お前何処に行くんだよ。せっかく来たんだからお茶でも飲んでいけよ」

「わたしも忙しいの。それに、迷惑でしょ」

「お前が迷惑なんて言葉を知っていたなんて俺はびっくり……ごはっ」

「知ってるわよ、迷惑って言葉ぐらい」

「あやうくびっくりご飯っていいそうになったじゃねぇかっ」

 何だよ、びっくりご飯って。新手の失敗メニューか。

「けどま、忙しいのなら仕方ないな。また今度時間があるときに寄れよ」

「……うん、ありがとう」

「お前が素直にお礼を言うなんて珍し……おいおい、褒め言葉褒め言葉。そのかた~く握った拳はそっと……そうそう、じゃんけんでもしようぜ、笹川。最初は……ごはっ」

 さ、最初のグーから攻撃してきやがった……

「じゃあね、雨乃」

「あ、ああ……気をつけて帰れよ」

「誰に言ってるのよ」

 それだけ残して笹川は帰っていった。いつもどおりの調子で何よりだ。パンチのキレも一段と強くなってきている気がしてならない。


ゴールデンだか知りませんが、昨日の疲れが今日まで響いています。ふぅ、意外ときついですねぇ……。さて、とりあえず笹川編が終わりました。どうみてもタイトルのつけ方失敗してしまった感があります。まぁ、過去を悔やんでも仕方ありませんので未来を見据えましょう、はい。次回、ハッピーエンドは此処ですか?は『うそ、俺の関節があっという間に三つ以上になっちまった』をお送りします。(注:内容は変更になる可能性があります)それでは、感想、メッセージ、評価してくれる方、よろしくお願いします。あ~、これをいうのもなんだか久しぶりな気がします。休載に関してはまぁ、もう、一週間ぐらい休んだので……ぬるい休載だったなぁ……五月三日月曜、七時三十九分雨月。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ