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第百五十五話◆笹川編:の中身は

第百五十五話

 笹川栞は珍しく慌てていた。

「……何処にもない」

 ポケットに入れていたはずの8GB、B○F○LL○製のフラッシュメモリが忽然と姿を消していたことに取り乱しているのだ。

 本棚を全てひっくり返し、隣の兄の部屋も無断で入って調べ上げた。机の上におかれていた兄のパソコンの電源をつけてデータがコピーされていないか、兄がからかっているのではないかと調べてみるもどれもこれも、エッチな画像しか出てこない。他には読んでも価値の無い文体だけだった。

「……もしかして……外で落としたのかも」

 雨が降っていたとなるともう駄目だろうと考える。だが、駄目なら駄目で物品を手に入れておきたかった。

 栞は急いで一階へと駆け下り、傘も持たずに飛び出した。

 それから数分後、帰宅した兄、真が泥棒に入られたと警察に連絡を入れたのは仕方のないことかもしれない。



――――――――



「あれ、先輩……パソコンとかするんですか」

 学校へと持ってきてしまったメモリをついつい机の上においていると澤田が手にとって眺めていた。

「俺のじゃねぇよ」

「じゃあ、剣先輩のですかね」

「いや、違う……それはな、拾ったんだよ。どうしたものかと思って考えていたんだが、もしかしたら落としている人が困っているかもしれないだろう」

「もしかしなくても、困っていると思いますけど」

 澤田はメモリを持ち上げたり置いてみたりをしていた。

「雨乃、ちょっといいかしら」

「あれ、笹川じゃんか。珍しいな」

 一年の教室に二年生が来ること自体、珍しい。そして、悲しそうな顔をしていた。

「どうかしたのか」

「うん、ちょっと……手伝って欲しい」

「何をだ」

「えっと……」

「先輩、なんだかとても大切な話をしているようですからこれ、おいておきますね」

「ああ、悪いな」

 澤田がメモリを俺の机の上にそっとおいた。

「ん」

 笹川の視線が俺からメモリのほうへと動かされる。俺もそれにならってメモリのほうにむける。

「これ、誰の」

「さぁ、拾ったものだからわからな……ぐぁっ」

 気がつけば笹川の顔が真正面にあった。周りの生徒達がざわざわと騒ぎ出す。胸ぐらをつかまれて引き寄せられていることに今更ながら気がついた。

「ど、どうしたんだよ。そんなに熱くなって」

「……何処で拾ったの」

「本屋だよ、本屋」

「それで、中身を見たとか……言わないわよねぇ」

 ひぃっ、そんなに恐い顔しちゃいやん……とここで言って通じるものだろうか。よし、ためしに言ってみよう。

「そ」

「何」

 鬼だ、鬼が此処にいるぞ。桃太郎を呼べ、犬と猿と雉では相手に出来ないだろうから光波翼天使02も呼んでくれぇっ。

 馬鹿なことを考えるより先に笹川を冷やすほうが先だ。

「いや、そんなに恐い顔をするなって。安心しろ。俺は読んでないぞ」

「じゃあ、誰が読んだの」

 02が全部読んで添削までしましたといえなかった。02の存在って結構面倒だからな。大体、どうやって説明すればいいんだよ。ん、しかし、02の場合は『読んだ』というより『読み込んだ』という表現が正しいはずだ。

「安心しろ、やっぱりまだ誰も読んでないぞ」

「何よ、やっぱりって……しかも、まだって……」

 ここでようやく開放され、俺はため息をついた。

「今日の昼休みパソコン室で見ようかなと思っていたんだ。これ、もしかしてお前のだったのか」

 差し出すと黙り込んだ。

「ち、違うわっ。これは真夜ねぇのものよ」

「真夜ねぇ……って誰だ」

「写真屋よ、私の従姉妹のっ。雨乃も会った事あるでしょう」

「ああ、あの人か。じゃあ、これ渡しておいてくれよ」

 頭の中で微笑みながら俺に手を振ってくれている。

「当たり前よっ」

 メモリを手渡すと乱暴に奪い取った。そして、何処かほっとしたような顔を見せる。

「じゃあね、雨乃」

「ああ……って、ちょっと待った」

 踵を返して教室から出ようとした笹川を呼び止める。

「何よ」

「俺に何か用事があったんじゃないのかよ」

「……別に、ただ雨乃に会いに来ただけよっ」

 吐き捨てるようにそういうと去っていった。な、なんだか今日の笹川は普段より恐さが三割増しのような気がするなぁ…。

「……なんだったんでしょうね」

「さぁな。俺がわかるわけ無いだろ」

 そういうと澤田は俺の顔をじーっと見つめてこういった。

「そうですね、先輩が、わかるわけありませんよね」

 いちいち区切っていう辺り、何かの悪意を感じる。

「なんだか引っかかるような言い草だな……」

「そうですかね」

 しらばっくれる澤田は珍しいものだな、笑う笹川並に珍しいかもしれない。

「あれ、クラスが騒がしいようですね」

 そんな時、教室の後ろの扉が開いて剣がやってきた。その手には本が握られており、方には木刀の入った竹刀袋がかけられていた。

「……今頃桃太郎の登場か」

「は、どういう意味でしょうか」

「いや、こっちの話だ。気にしないでくれ」

「はぁ、わかりました」

 首をかしげる剣に俺は再びため息をついた。もし、剣がいたら大変なことになっていただろうなぁ。


ゾンビのゲームをやりました、開始一時間以内に確実に集られてあっという間にやられちまいましたとさ……というのは嘘で中ボス的存在の人間に銃で撃たれ、やられちまったということです。やっぱり、武装している人間って強いんですね。さて、五月に入って二日目です。失敗したことが一つ、ありました。休載じゃなくて小説を書くこと自体をやめていたといった表現のほうが正しいことに気がついたのです。まぁ、似たようなこと……ですかね。ま、以前は不調でしたが今ではアイディアがどんどこどんどこ頭の中からにじみ出ています。五月二日日曜、九時十分雨月。

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