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第十五話◆:雲空と屋上

第十五話

 屋上、不良の方たちの姿が見えないということは何処かに行ったのか、もうここに来たくなかったのかもしれない。ともかく、いないことは幸いだった。

「いやぁ、梅雨を感じさせる風が吹いてるなぁ」

「……そうね、明日は雨だって言っていたからそうかもしれないわね」

 そういって笹川は転落防止用の柵に手を乗せた。

「なぁ、お前って案外読書文芸系だったんだな」

「……意味がわからないわ」

 俺のほうを見るでもなく、笹川は校庭を見下ろしているようだった。気がつけば空はどんよりと曇っており笹川天気予報士が言っていたように明日雨が降るかもしれないな。

「お前の名前が図書館の壁に書かれていたからよ」

「……ああ、読書数が多い生徒を無駄にランキングしているあれね」

 そういってこっちに顔を向ける。

「……もともとわたしは読書とかが好きだからよ。何か悪いかしら」

 怒っているというわけではないがあまり機嫌はよくなさそうである。下手につつくと餌食になりかねない。

「別に、悪いってわけじゃねぇよ。意外だなって思って言っただけだ。ほら、ファーストコンタクトって言うかだな、屋上で不良の方々をぼこぼこにしていた記憶のほうが強すぎるからよ」

「あら、隣なのにわたしが普段何をしているのか知らないのね」

「悪いな、んな、隣をじっと見れるわけ無いだろ。見ていたらお前、絶対『何見てるのよ』ってな感じで怒るだろうし」

「ま、そうかもしれないわ」

 否定していないところが怖いな。惨劇がクラスで行われる……かもしれない。

「しっかし、俺に対してだけ態度が酷くないか」

「別に、気のせいじゃないの」

 この笹川、酷い話だが俺以外のクラスメートとは引っ込み思案といっても良いぐらいの対応をしているのである。俺と一緒にいるときは俺のほうに話をふって誤魔化したり、雲隠れしたりする。他と話すときは俺の後ろにいたりするという、徹底ぶりである。

 気になって俺はクラスメート達に笹川について尋ねた事があった。勿論、笹川が席をはずしているときにであるが。

「え、笹川さんってどんな人……う~ん、普通に優しい子だね」

「ああ、そういえば子猫を拾ってあげてるのを見たって誰かが言っていたよ」

「あの子、清楚そうですっごく、可愛いよなぁ、おれ、今度告白してみようかなぁ」

 そういった類の、とっても優しくて、小動物にも優しい(だから、さっき子猫を真似してみたが俺には容赦なし)、清楚ですっごく、優しいあの子……猫かぶりとはこのことだ。

「優しくしてくれとはいわねぇけどよぉ、もうちょっと丸い対応できないのか」

「丸い対応ってどういうの」

 どういうのって言われてもなぁ…

「おはようって俺が言ったらおはようとか……いつも無視されてるし」

 さわやか過ぎて女子にモテモテになってしまうじゃないかと、俺は危惧している。だが、まだ下駄箱の中にピンクの便箋は入っていない……不良からの呼び出しはあった気がしないでもないが。

「……なんでわたしが」

 つんとした態度をとられた。

「えぇ、いいじゃん。隣じゃん、俺達友達じゃんかぁ」

「……転校生君を……」

「それもそれもっ、俺の名前は雨乃零一だからな。名前を忘れるんじゃないぞ、笹川栞っ」

 そういって後頭部に手刀を叩き込もうとしたらまた、腕をきめられてしまった。

「にょ、にょはははは……相変わらず手馴れた動作で」

「……信用できないのよ、転校生君。あなた、まだ誰にも言ってないわよね…あの事を」

「言うわけないだろ、約束したんだからよ。俺をどっかの約束破り、道場破りと一緒にすんな栞たん……にょはははははっ。ぎ、ギブアーップっ」

 まったく、容赦という言葉を知らない女子高生だ。あと、手加減とか塩加減とか知らなさそうである。お茶目も知らないな、きっと。

「……わたし、帰る」

 そういって俺を残したまま、屋上を出て行ってしまった。

「……まったく、何処が優しい子なんだか……」

 バタン、そう乱暴そうに閉められた扉を眺めながら、俺も帰ることにした。

「……ん、あれ……」

 取っ手を回してみたが動かなかった。ガチャガチャとうるさい音が曇った空に響くだけだった。

「……まさか……」

 内側から鍵を閉められたのだろう。更に、不幸は重なるものである。

「……え、嘘だろっ」

 ぽつり、ぽつりと空から何かが降ってくる。それは、あっという間に群れをなして俺の頭上から襲い掛かってくるのであった。


 屋上から飛び降りて帰る。


→待機。


さぁて、一度しかない人生、楽しまないといけませんね。やることないと面倒ですが、やることなんてたくさんあります。誰か、雨月に時間を分けて欲しい。そう思ったこともありますが、今度は身体がついていきません。疲労がたまるということで、身体を休ませる、鍛えなくてはいけないのですが、それにもやはり、時間が必要。行動を起こすということは代償としてまず第一に時間を払っているということを頭の隅っこにおいておきましょう。わかりきっていることなんですけど、ね。さて、哲学ぶって第十五話。次回の更新はいつになることやら。二月二日火曜、十三時二分雨月。

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