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第百四十九話◆:ゲート・キーパー

第百四十九話

 式が始まっていると思われる部屋からは確かに、人の声が聞こえてくる。第二会議室と書かれている扉に手をかけて息を深く吸い込む。


「失敗したらどうなるか……」


 竜斗の声が頭の中で繰り返される。

もう一度息を深く吸い込んだときに気がついた。

「は、ははは……足が今更震えてやがる……」

 ついでに言うなら、手も震えていた。

「し、失敗したら……」



―――――――



「ええっ、こんなに借金しちゃったのっ……零一、あんた馬鹿でしょっ」

「零一ぃっ、うちを破産させる気なのかっ」

「……悪いけど、零一君はやっぱりうちでは預かれないわ」



―――――――



「………」

 こ、これってかなり危ないことだよな。失敗したら保護者って達郎さんと鈴音さんだし……迷惑かけちゃう……よな、やっぱり。

 一度あふれ出した恐怖は抑えることができない、視界がぶれ、手がぶれ、最後に足が震えていた。

 そんな時、扉が開けられて中から出てきた一人の女の子と目があった。

「あ……」

「ん、おや……」

 あ、ああ……胸の名札には野々村としっかり書かれていた。つまり、野々村グループ……終わった、俺の人生が……

「あれ……洋一郎」

「え」

「あ、いや、違うか……そんなに目、恐くないし……」

 一人でぶつぶつ言っている。俺を誰かと間違えているようだ。しかし……以前にもこんなことがあったような気がする。

「ん、ともかく部外者よね、ここにいることがばれたら大変だから……部屋、もしかして間違えた……とかかしら」

「あ、いや、俺は……その、新婦……じゃなかった、新郎のほうに用事があるんで……って、あ……」

 馬鹿なことを言ってしまったと思った。勿論、行っている間は心臓ばくばくで何を言っているのかわからなかったのだが……言った後に気がついた。

「ん、もしかしてあんた……」

「えっと、その、ええいっ……こうなったらままよっ」

「え、ちょ、ちょっと……」

 女の子を押し退けて俺は扉を開けた。その先には綺麗な女性と、やつれた竜斗、他の参加者の姿が映るが……俺は竜斗の名前を呼んだ。

「竜斗-っ」

「あ、れ、零一……くん」

 驚いたような顔を何故、するのだろうか。しかし、今はそんな事を考えている場合ではない。俺は他の人たちがきょとんとしている間に竜斗の手を掴んで扉からさっさと出て行く。もう、ためらわない。

「い、今の奴は……男……だったよな」

「あ、ああ……もしかして竜斗は男がすきなのか……」

 廊下を走り、女子トイレまで逃げ込む。竜斗は途中何度か転びそうになったので背負って走ることにする。

「ちょ、ちょっとあんた……そっちは女子トイレよっ」

「うわ、追っ手がもう来たっ」

 二階女子トイレの天井裏に潜もうと思っていたのだがそれも出来ないようだ…そして俺たち二人はたった一人の女子に追い詰められてしまった。息切れしているが、獲物を絶対に逃さないぞという意気込みを感じる事が出来る。

「ぜぇ、ぜぇ……あんたら男二人で逃げてどうするつもりよっ」

 どうやら、この人は野々村でありながら竜斗が女であるということを知らないようだ。てっきり、野々村全員が竜斗が女だということを知っていたのかと思っていたのだが……違うのか。

 背中に背負われている竜斗がおろすように俺に指示を出した。その指示に従っておろすと相手に一歩近づく。

「……あの、悠さん。実はおれ、女だったんです」

 目の前の女子はどうやら野々村悠という名前らしい。

「は、え、嘘……」

「嘘じゃありません。女同士で結婚するのが嫌で、前回の儀式で悠さんがご友人達に頼んで式をめちゃくちゃにしたあれを真似てみたんです……もっとも、悠さんと違っておれが信頼できる友人は一人だけですけどね……あまり長く話したくないので……見逃してくれませんか」

「う、うぅ~ん、確かに女の子同士は結婚できないものねぇ……それなら何でこれまで皆に黙っていたの」

 もっともな意見を突きつけられたが竜斗は落ち着いている。タキシード姿が妙に似合っているな……

「貴女にも事情があるように、おれにも事情があるんです。邪魔するというのなら構いません……貴女が以前見せてくれたあの写真の男子生徒、この手で堕としますよっ」

 い、言い切った……目の前の女の子も驚いたような顔をしている。

「は、はぁ、あんた自分が何を言っているのかわかっているのっ」

「見逃してくれますよね、いや、協力してくれますよね……貴女の首が縦に振られない場合、貴女におれと同じように苦しんでもらいますから」

「……しょ、しょうがないわね……あ~もうっ、せっかく戻ってきていたのにっ」

 相当目の前の女の子が恋焦がれている男子生徒は女が好きなのだろうか……ん~でもまぁ、もしかしたら責任感の強い人かもしれないから過ち犯したら間違いなく、竜斗を彼女にするんだろうな。もしくは、この人以外にもその人のことを好きな女子が沢山いたりして……ああ、俺も一度でいいから複数人の女子から思いを寄せられてみたいぜ。


今回の話を書いて痛感しました……文章能力が足りていないと。実力がある人が書いたならば読者の方に擬似的に潜入感を与えていたことでしょう。簡単に言うならドキドキさせることが出来たはずなのですよ。雨月も以前はライトノベルを読んでドキドキとかしていました。もちろん、中にはがっかりするような作者様もいましたよ。お金を払うのだからプロなんですよね。ま、ここで言っても何の意味もありませんけど。駄目な作者は駄目なりに努力して読んで頂いている方々の中の一人でも、そう、それこそ心の中でおもしろかったと思わせたらいいのですからね。四月二十八日水曜、八時四十分雨月。

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