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第百四十八話◆竜斗編:籠の中の竜

第百四十八話

 竜斗が言う『婚前の儀式』とやらはホテルや旅館でやらないようで、隣町のビルの一室を借り切ってやるそうだ。何でビルなんかでやるんだと思ったのだが、ここは野々村グループ傘下の会社だそうだ。しかも、設計は竜斗のおじが担当したそうである。

「毎回ビルでやっているのかよ」

「いいや、違うよ」

どうやら、前のカップルが(なんと、驚くほど手際がよかったそうだ)持ち逃げされたのが原因らしい。そのおかげで警備は厳しくなり、場所も身内しか知らないようにされているそうだ。何処の誰だか知らないが、余計にハードルをあげてくれるのはやめて欲しい。

「信じてもいいって思えるよ、零一くんをみてるとさ」

「変にプレッシャーをかけるのはやめてくれ。もし、失敗したらどうするんだよ」

「その時は零一くんを死ぬまで恨むよ」

 笑いながらさらっとそんな事を言うな。不吉だろうが……ともかく、俺に出来ることは竜斗が教えてくれた計画を頭に叩き込み、それにしたがって動くこと、それだけだ。自分の勝手な判断では危険な状況を生みかねない。どうしようもない時は運に任せるしかないのさ。

「あ、そうそう……言い忘れていたけど失敗したら当然のように今回の儀式をめちゃくちゃにした請求とかされるから覚悟していてね」

「で、でええっ……なんだそれっ。俺は聞いてないぞっ」

「うん、だっておれが言ってないんだから零一くんが知っているわけないじゃん」

 にこっと笑ってかなり、俺にとってかなり重要なことだ、それはっ。

 俺の顔を見てどう思ったのかは知らないが、急に笑顔が無くなった。

「……今更なんだけど、最終的な判断は零一くんにお願いするよ」

「は、どういう意味だよ」

「うん、だから……おれを助けに来てくれなくても別に構わないってこと。じゃあね」

 そういって俺の部屋から出て行ってしまう……最後に顔でも拝もうと思ったのだが、あいにく、見えなかった。

「……何なんだ、あいつは……」

 助けてくれって言ったり、別にいいって言ったり……本当に変な奴だな。



―――――――



「さてと、今から俺がしなきゃいけないのは……んっん~、あっ、あ~……」

 長い髪のカツラをかぶって、胸には詰め物、内股にハイヒールでビルへと入る。勿論、マスクを忘れたりはしていない。

「あのぉ、すみませぇん、トイレ貸していただけませんかぁ」

「は、はぁ、ええと、曲がり角のところにありますから……」

 受付嬢が言い終えるのを待たずに俺は二階に続く階段がある道を向かおうとしたのだがやはり、黒スーツにサングラスの男が数人立っていた。気が付かれないように女子トイレへと向かう。

「……ちっ、俺にこんな恥ずかしい格好させやがって……」

 胸のパッドを取り出して窓の外に放り出し、ハイヒールを捨て去る。そして、一番奥の個室に入って天井の一部をそっと持ち上げ、中に入り込んだ。

「…まるでスパイ映画だ」

 匍匐前進で進みながらペンライトで地図を照らし、道順を確認する。様々なパイプが張り巡らされており、時折、下から人の歩く音が聞こえてきた。そんな時は静かにしていなければばれてしまうと竜斗に注意されていたので動かない。

「……」

 黒い男たちがいるところを越えただろうと勝手に判断し、そのまま慎重に動く。あくまで繋がっているのはそのフロアのみのために一度出て二階に上がる必要がある。竜斗が目をつけたのは今は使用されていない荷物搬入用のエレベーター……搬入口付近のトイレに向かわなくてはいけない。これがまた、先ほどの道よりも狭くなっていて詰まった時は一生このままなのではないだろうかと嫌な感じにさせてくれた。

「……ふぅ」

 女子トイレの個室に出たときには天国に出れたのかと思っちまったぜ……まぁ、あるいみ男にとっては天国……なのだろうか。

 時間が勿体無かったので神経を尖らせ、人が来ていない今のうちにトイレを後にした。変に警備を増やすと場所が特定されると野々村本家と向こう側の人が考えているためにいつもと変わらないそうだ。やっぱり、身内から邪魔が入った時は仕方がないという意見が大半を占めるそうである。

「よし、これだな」

 荷物搬入用エレベーターを見つけ、素早く乗り込む。ボタンを押して滑り込んでみると、さすが荷物用……狭くてぐらぐら……恐い。

 変な震動にびびりながらも二階についたようで急いでそこから出る。辺りは薄暗く、倉庫のような場所だった。現に、近くにはダンボールが置かれている。

 あまり埃っぽいところに長くいるのはごめんだったので廊下に人がいないかどうか扉に耳を当ててさっさと確認する。静かに扉を開け、完全に人がいないのを確認すると曲がり角の女子トイレに躊躇無く滑り込んだ。

「……」

 うぅん、この調子だと学校の女子トイレでもやらかしてしまいそうだ。男子トイレの個室が満員だったらすぐさま女子トイレへ……そんな感覚に襲われてしまいそうである。

「……ふぅ」

 約束の時間まで後十五分。式が始まったら俺がやるべきことは一つだけ。



 ずばり、式が行われている部屋へといって竜斗を連れ出し、逃げなくてはいけないのだ。


本日、何処の地域にどれだけ雨が降っているのかわかりませんが、とりあえず雨は面倒です。雨合羽を着込み、靴が濡れないようにビニールをつけ、自転車に無理矢理傘をとりつけなくてはなりません。ま、梅雨は好きなのですがね。さて、いよいよクライマックスが近づいてきました。日々疲労感が波を寄せて遊びに来てくれますが…おかげで家に帰った後に頭が回りません。それでは、またいつか会いましょう。四月二十七日火曜、八時五十六分雨月。

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