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第百四十七話◆竜斗編:野々村の掟

第百四十七話

「男の子が考えていそうなことって大体、えっちなことだろうから……ほら、これで満足でしょ」

「まてまてまてぇっい。勝手に決め付けるなっ」

 シーツを取ろうとした竜斗の手に自分の手を重ねて危険な行為を阻止する。

「……俺は会って数日の相手にそこまで深い関係は求めんぞっ……大体、場数を踏んでない………」

「じゃあ、場数を踏んでいたら……」

 とっても素敵に勘違いをしたような目を俺に向ける。ちっきしょうっ、俺ってそんなにエロいことばっかり考えているような奴に見えるのかよっ。

「そんな目で俺を見るなっ。ともかく、賭けに勝ったんだ。俺の言うことを聞いてもらう。それが俺からの要求だっ」

「………わかった」

「よし、わかったのなら服を着ろ。勿論、俺の目の前とかで着替えるなよ」

 こくりと頷き、俺の部屋へと入っていく。あいつ、何処で着替えているんだよ……まぁ、いいけどさ。

「……さっきのシーツって俺の……だったよな……

 そして、俺の部屋で着替えていたってことなのか……

「……えへ」

「今、何かエッチな妄想しなかったかな」

「し、してないよぉ、俺がさぁ、するわけないじゃん。うんうん、しないしない」



―――――――



「で、お前は何で俺にいちいちちょっかいを出して来るんだ。それを話してもらおうじゃねぇか」

「うん、仕方ないかな……おれ、賭けに負けちゃったからね……まさか、女子にばれるとは思わなかったよ」

 ため息をついてジト目でこっちを見てくる。すっと引き締まった表情はそこらの不良より、そして……栞よりも鋭く、剣よりも恐いものだった。

「あのニアって子……何者」

「さぁ、俺も何者なのかわからないな」

 だが、俺も栞、剣……そんなえぐくて恐い二人組のおかげで不良の視線だけじゃ微ビラなくなったのだ。これって成長だよな……俺、よく育ってくれた。

「嘘ばっかり」

 ため息をつかれたが本当に知らないものは知らないな。

「竜斗、もう一度聞くけどお前は何で俺にちょっかいを出して来るんだよ」

「簡単だよ。君が欲しいからさ」

「………」

 凄いことを言われた気がするがそれもまやかしだ。女の子に嬉しいことを言われたことがない男にとってはそれで引っかかってしまう。だが、俺にそんな女子がいるわけない。俺に近寄ってくる女子どもは何か絶対に裏がある連中だっ。ううっ、清楚で、可憐で、お淑やかで……そんな女子は俺のところには来てくれないのかっ。もう、十六年以上生きているんだから一回ぐらい見たっていいじゃんっ。

 そんな心の乱れは極力顔に出さないようにして俺もシリアス全開の顔で相手を睨みつけるように見据える。

「その理由を教えてくれ。お前、絶対裏があるだろ」

「……ありゃりゃ、やっぱり一筋縄じゃいかないね」

 ま、いいさといい始めて首をかしげた。だが、視線は相変わらず俺の目をしっかりと見据えている。

「……でもさ、これって結構零一くんに関わってくる話なんだけどそこまで詳しく話していいのかな」

「意味がわからないぞ」

「知らないことを知ってしまうともう引き返せないのかもしれないけど、それでいいのかっておれは聞いているんだ」

「………」

 竜斗なりの優しさなのだろうか……厳しい言葉の中にも気遣いといったものを感じる事が出来る。

「あまり知らないほうがいいことだってこの世の中にはあるって思うんだ。おれはそれを実感したことがあるから……今此処で賭けに負けたから話せといわれても正直、話すつもりは無いよ。でもね、いつか絶対に零一くんに話すって約束する」

 しっかりとした瞳に刻まれる決意は相当固いようで、ここで口を割らせてもあまりいいとは思わなかった。と、言うよりわらせる自信なんてさっぱりない。

「わかった、今は聞かないってことにするよ……けどさ、いつか教えてくれよ」

「ありがとう……それでさ、物は頼みなんだけど一ついいかな」

 また、変な賭けでも持ち出すのだろうかと思っていると竜斗は笑顔を見せる。

「ふふ、そんなに注意深くならなくていいよ。これはおれに関係する話だからさ」

「……それが面倒そうなんだよ……で、何だ」

「やっぱり、零一くんって優しいね。惚れちゃいそうだよ」

 にこっとした表情……ドキッとしてしまった。

「くっ、お前はよくもまぁ、そんな恥ずかしいことを言えるな」

 冗談とはいえ、面と向かって言えるなんてすげぇな。俺も今度試してみようかな……ん~でも、冗談いえる相手なんていないな。

「……おれの苗字は野々村だよね」

「ああ、そうだ。それがどうかしたのか」

「野々村はね、面倒なことをやるんだよ。東ってグループも同じようなことをするんだけど……」

 ちらりと俺を見た。まるで、それで何かを悟ってくれといわんばかりの表情だ。

「はぁ……まぁ、おれはまだ結婚できないけど、それ以前に結婚式のようなことをやるんだよ」

「……それがどうかしたのか」

「うん、今度のゴールデンウィークにそれをやるんだ」

「誰が」

「おれが。しかも、相手は女の子なんだよ」

「………」

 嫌になっちゃうよと竜斗はため息をついた。

「大体、おれの名前だって『竜斗』だし……本当、馬鹿な両親には嫌気がさすよ。中学上がったらいきなり高校二年生になったらやるって言っていたし、許婚までいるっていわれたし、しかもっ、相手は女の子だってさっ。男なら諦めるよっ、でも、女だよっ、女っ」

「か、顔が近いぞっ、顔がっ」

「……だからお願い、おれを助けてくれよ」

 頭を下げ、珍しくしおらしい……。

「……おれが賭けに勝ったとき、君にお願いすることと実は何ら変わりは無いんだ……父親は君を連れてくるだけでいいって言ったんだけどね。おれと零一くんが今、こうやって平和で過ごすにはこれしかないんだよ」

「………何で俺が……」

「お願いだよっ。もしうまくいったらおれ、なんでもするからさっ」

 俺の両手を掴み懇願してくる。相当、許婚と結婚するのが嫌なんだろうな……俺も、許婚がいて相手が男だったら泣くわ。

「ごしょ~だよ~」

「俺は何をすればいいんだよ」

「ありがとう、零一くん……」

 こうして、俺は竜斗の面倒な話を聞き、どのようなことをもってして竜斗を助け出すのか考え合った。誰かとこの面倒を共有したかったのだがそれは竜斗が許してくれない……一人のほうがやりやすいとのことである。でも、どう考えても車の運転手とか逃走手段を手引きしてくれる何者かが必要なのではないだろうか。

「あのさ、これがうまくいったらおれと友達になってくれないかな」

 いきなりそんな事を言われ、俺は首を傾げるしかなかった。

「友達になるも何も……俺とお前はもう友達だろ」

 びっくりしたような顔をするのは何でだろうか。

「お前、俺のことを何だと思っていたんだよっ」

「……おもちゃ」


ぐさっ


 心に言葉のナイフが……抉りこむように、抜けないように刺さった気がした。

「……でも、友達って言ってくれてありがとう零一くん。じゃあ、次のステップとして親友になってくれないかな」

「……なんだよ、そのステップは……まぁ、お前が親友名乗りたいなら勝手に名乗れよ」

 ともかく、俺は竜斗に言われたことをやるだけである。ぎりぎりの日程で言われたために決戦の日は近い。


昨日のバイトで筋肉痛、そして寝不足、目の前霞んでます。倒れたら倒れたで次回の後書きでネタに使いましょう…さて、そろそろ竜斗の話が終わりそうです。長かった、本当にここまで長かった…前作でも野々村家が登場しましたが、何気に繋がっていますので知っている方は入りやすいかもしれません。知らない人は知らなくてもなんら問題はありませんので安心してください。これ以上ヒロイン増えたらA.B班にわかれないとにっちもさっちもいかなくなるので気をつけないといけませんね。月曜だというのに全然フレッシュじゃないというのが今の心境です。四月二十六日月曜、八時五十5分雨月。

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