第百四十四話◆竜斗編:無視と屋上
第百四十四話
朝食を食べ終え、朝から疲れた体で登校すると窓付近に竜斗がいた。何をしているのだろうか。今日は女子と一緒にいないんだなぁと思っているといきなり、窓の外に飛び出したのである。
「………」
朝から、何を考えているのかわからないやつだ。そう思って通り過ぎようとすると窓の外から声が聞こえてきた。
「ふふ、おれのことをずっとつけていただろ。子猫ちゃんめ」
「あん、捕まってしまいました……」
「………」
あ~正直、飽きてきたな。パターン化してきたし……もう、面倒だ。というより、眠くて仕方なかったりする。ちらりと一瞥することも無く、もはや何度も読み直した漫画のように読み飛ばすことにしよう。
俺はあくびをかみ殺しながら自分の教室へと向かったのだった。
「え、ちょ、ちょっと、何ですか、この扱いはっ」
聞こえないったら聞こえない~。
――――――――
昼休み、恐ろしい形相をした朱莉が教室へとやってきた。一年生が怯えたような顔で朱莉を見ている。かわいそうに。
「流石に一切の突っ込みもないうえに完全な無視はひどいと思いませんか」
「え、俺と朱莉は今日一度も会ってないぞ~」
「朝、会いましたよっ」
「……また俺のことをつけていたのか。いやぁ、全く気がつかなかった。朱莉、成長したなぁ」
「くぅ、よくもそう白々しいことが……」
「んじゃ、俺、用事があるからもう行くわ」
一年生が朱莉のことを恐いと思うように、俺も一年生だ。さっさとその場から退散した。
「やぁ、零一くん」
「……竜斗か。どうした」
「いや、報告にきたんだよ。おれ、四人目落としたから」
「そうかいそうかい。そりゃよかったな」
「ん~でも、なんだかぜんぜん見てくれていなかったみたいだね」
「ああ、眠いからな」
話している途中だったがあくびが出てきたのでかみ殺す。
「相当、眠そうだね」
「まぁな。何処かいい寝場所知らないか」
「ふぅむ、そうだねぇ」
それから数秒後、ぽんと手を叩いて竜斗は言った。
「屋上の校舎の上。あそこはちょうどいいよ。わかるかな。屋上に出て、それから校舎のほうにはしごがかけてあるじゃん。そこに登って、登った後ははしごを上に上げておかないといけないよ。他の人が来ちゃうからさ」
「そうか、詳しくありがとよ」
まぁ、そうすることにしよう。まだ時間はあるし。
――――――――
空はどんよりと曇っていたのだが居心地のいい場所に変わりは無かった。珍しく番長たちも姿が無いので下を気にする事無く眠ることが出来る。あの人たち、うるさいもんなぁ、一昔の漫画みたいな喋りかただし。
「……ぐぅ」
あっという間に睡魔に襲われ、俺は校舎に吸い込まれるような感覚を覚えた。
――――――――
「んが……」
気がついたら、夕方。コンクリートの床に涎の跡が……。
「………ん~なんだか朱莉が『や、やめてくださいぃ、もし屋上に人がいたらどうするんですかぁ』って言って竜斗が『いいじゃないか、おれに君の全てを見せてくれよ』なぁんていっていた気がするが……」
下を確認するが、誰もいない。
「……右頬が痛いな。何でだ」
誰かにぶたれたかのようにひりひりする。
わからないことだらけだったがしっかりと寝ていたおかげでなんとか体力のほうは回復することが出来た。いや、誰かにぶたれたような嫌な感じが残っているので体力的にも精神的にもショックを受けたぜ。
「今、何時間目だ……」
時間を確認すると五時間目があと三分ほどで終了する時間帯だ。六時間目にはどうやら間に合いそうだと俺はため息をついて……ポケットに紙が入っているのに気がついた。
「……『四人目、落とした』か。きっちりしたやつだな」
くしゃくしゃにしてそれをゴミ箱に捨てる。きちんとゴミは捨てないといけないよな。
他の人に負けたくないこと、ありますか。ちょっとしたプライドぐらい誰にだってあります。でも、力の伴わないプライドほど厄介なものはありません。周りから見てみれば一発でわかりますが自分ではわからなかったりします。でも、そのプライドは確かに厄介なものかもしれませんが大切にしなくてはいけないものです。出来ないことは出来ません。でも、出来ないことを出来るようにするのは誰にだって出来ることです。だから、プライドを持ち続けていればいつか、胸を張ることが出来る……と、以前誰かに、もしくは何かの本で見たことがあるような気がします。ん~だけど、それって結構、いや、かなり難しいことですよね。今、小説を描いている自分は書き出した頃の自分に比べて成長はしていると思いますが、思い切りはなくなったなぁと実感します。あの頃のめちゃくちゃ設定、今じゃ出来ませんからね。ま、文章が拙いのはあまりかわりませんが小さい一歩は踏み出せているはずです。やめなければ、何らかの答えは導き出せる……そう信じることにしましょう。今日はこの辺で失礼します。四月二十四日土曜、二十時四十一分雨月。