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第百四十二話◆竜斗編:理由と手段

第百四十二話

 生徒会からのお達しで掃除時間が今日だけ放課後となる珍しい事件が発生。ものすごく、面倒だぁ……

「あ~あ、何で俺が掃除なんてしなきゃいけないんだ。しかも、満と同じ場所で」

「まぁまぁ、二年生と一年生が力を合わせて学校を綺麗にするという考え……最高じゃないか」

「そうそう、さらにぼくもいるからねぇ。三位一体、トリニティ~だよ」

 真先輩、俺、満と言うなんだか久しぶりに三人で顔を合わせたような気がした。

「そういえば先輩、最近見なかったんですけど何かしていたんですか」

「ん、そうだよ。ちょっと他校の生徒にお礼をしに行ったんだよ。ほら、今年でぼくは卒業だからさ。長年のうらみつらみを晴らしに旅に出ていたのさ」

「………」

 何気に恐いオーラを出しながらそういうのでやっぱり、真先輩は笹川のお兄さんなんだなぁとため息をついた。

「おや、あそこにいるのは栞じゃないか」

「え」

「あ、本当だ。栞たんと……あれは……竜斗だね」

 満、真先輩が見ている方向へと俺も視線を動かす。そこには葉桜となった木があるのだ。その木の下でなにやら二人が楽しげに話をしている。俺たち三人はばれないように茂みの中へと姿を隠す。満は遠い場所に一人で隠れ、双眼鏡を取り出してみていた。何故、こいつがそんなものを持っているのかは不明だ。

「ははぁ、こりゃまた偉い美人さんがいるもんだな。何で彼女は男子用の学生服なんて着こんでいるんだい」

「あれ、真先輩は竜斗が女だってわかったんですか」

「ふっ、そりゃあ、ぼくも男だから超高性能センサーを心身体の奥底に埋め込んでいるのさ」

 センサーって何だと思ったが、あえて突っ込まなかった。なんだか、下ネタっぽいし。

「まぁ、それはいいですけど………」

「ふむ、一種のコスプレかな………しかし、日常生活であそこまで違和感無くなりきるなんて凄いな。まぁ、ぼくの友人にだっているし、他にも……」

 それ以後、凄く長い言葉を言おうとしているようだったのだが……省こう。そんな最中、竜斗の声が聞こえてきた。

「おれ、前から君のことが好きだったんだ」

「え……」

 笹川が何を言っているのかは聞こえない。遠いというのもあるのだが、真先輩が俺に話しかけてきた所為でもある。

「えぇ、そうなのか……あの野々村竜斗という美少女男装生徒はそっちの気があるってことなのか……うぅむ、そして栞のようなガサツ系の………なるほど、まだまだ世界にはぼくのしらないロマンスであふれかえっているようだ。零一君、君の友人にはすばらしい個性を持っている人たちが沢山いて実にぼくを楽しませてくれる。礼を言おう、ありがとう」

「は、はぁ………」

 きっと、他の人たちから見たら真先輩もその個性が凄い人の部類に入るのではないのかなと思ってしまった。

「あ、あのね、わたしも……その、野々村君のことが好きだったの……」

 うわ、笹川には似合わねぇ……とか思ってしまった。隣の真先輩は校舎に拳を打ち付けて笑っている。右手では校舎を叩き、左手は腹が痛いのか一生懸命押さえていた。足はがくがくしている。兄としてその対応はいかがなものなのだろうか。

「真先輩、大丈夫ですか」

「零一君、校舎裏で告白する男女なんて今のご時勢、そうそういない。しかも、それが女の子同士と来たものだ……しかし、もしかしたら、いや、絶対に栞はその竜斗ちゃんが女だとは気付いていないのだろう。ふふ、知っていたとしたら栞は大変な世界に目覚めてしまったということになってしまうだろう。ふむぅ、これは兄として止めるべきか、止めざるべきか……」

 またもやぶつぶつと独り言を続ける真先輩をそっとしておいてあげるとして、俺は笹川たちの方へと視線を送った。すると、竜斗がいきなりこっちを見てVサインを……いや、あれは『二人目、落としたよ』という知らせだな。

「まずい、気が付かれてしまったようだ。零一君、そして満君……逃げよう」

「了解です」

 いつの間にか満が戻ってきており、俺の手をしっかりと掴んで逃げ出したのだった。

「ふむぅ、なかなかやるな、竜斗のやつ」

「満、お前が怒り出して竜斗に襲い掛からず、冷静なのが俺は不思議だ」

「僕のほうこそ、君が叫びながら止めに行かないかひやひやしながら見ていたよ」

「そうかぁ、というか、何で俺が」

「……ふっ、鈍いんだね」

 お前のほうが鈍いといわせてもらおう。ほら、あそこの三階の窓から窓用洗剤を腰につけた女子生徒がお前を見ているぞ。



――――――――



 放課後、俺は一人で下足箱にいる笹川を偶然見つけた。

「お、笹か……んぎゃ」

「雨乃の、馬鹿っ」

 張り手ではなく、力のこもったぐー。笹川、俺はお前とじゃんけんなんてしようとしてないぞっ。

「い、いってぇなっ。何で殴ったんだよっ」

「拳よっ」

 少し、変な空気が流れた。

「「………」」

 今、根本的な何かがずれた気がした。えっと、何だろ……凄く、違和感を感じたぜ。

「……雨乃が馬鹿だからよっ」

 どうやら、間違っていたことに気がついて言い直し、走り去ってしまった。

「………天然、たまに入ってるんだな」

 二年目の発見。そういっておくとしよう。しっかし、本当一瞬だけ気絶しちゃうかもって思うぐらい本気で殴りやがったな、あいつめ……何をそんなに怒っているのだろうか。

 頬を擦りながら考えてみたのだが、答えは出てこない。


雨月の移動手段は基本的に自転車です。バイク、自動車などは持っていません。だって、自転車は地球に優しいですから……まぁ、免許が無いのは仕方ありません。連日の雨のおかげでせっかくのクロスバイクも泥だらけ。チェーン部分に汚れがびっしりということで洗浄。一時間程度チェーン周りを洗ってブレーキの効きが悪かったのでいじって効きを良くしました。後はタイヤに空気を入れて完成……素人ながらよくやったと自分で自分を褒めたいものですがきっと、その道の人から見たら口やかましく言われるんじゃないかなと思ってしまいます。次の更新は一時間後を予定しております。四月二十四日土曜、十六時五十分雨月。

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