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第百三十九話◆竜斗編:賭け

第百三十九話

 朝食を食べ終えた時間帯がいつもより少し遅くなってしまった。これも、時計が遅れていた所為でもあるし、おもえばゼロツーがまだ爺さんのところから戻ってきていないのもある。ゼロツーがいてくれれば絶対に起こしてくれるのにな。電話自体は玄関近くに置かれているために毎晩佳奈から電話がかかってきている。それ以外にこれといって電話は来ない。

 食器を水につけていると間延びしたチャイム音が聞こえてくる。また、野々村竜斗か……嫌な思い出が甦るが、出ないわけにもいかないので玄関を開けた。

「一先輩、おはようございます」

 俺は一つ、ほっとため息をついたのだった。

「あ~、おはよう……わざわざ迎えに来なくても学校には行けるぞ」

「いえ、最近朝にマラソンをするという習慣がなくなっていましたからね。明日からまた始めたいと思ったのです」

 なるほどなぁ…って、納得している場合じゃないな。

「わかった、とりあえず今日はもう行こうぜ。遅くなっているし」

「そうですね」

 剣が遅めの時間帯に来るなんて珍しいと思いつつも俺は支度を急いでして、共に学校へと向かうことにした。今日も空は蒼いな。

「ん」

「どうかしましたか」

「いや、なんだか今……視線を感じたんだが」

 隣にいる剣を見る。剣がいれば謎の視線なんて一発でわかってくれるはずだ。俺よりも神経が敏感そうだし。

「気のせいですよ。私は何も感じませんでした」

「そっか、お前が気がつかないのなら俺が気がつくわけもないなぁ」

 やっぱり、気のせいなのだろうか。



―――――――



「零一先輩、ここの問題わかりますか」

「おいおい、飛び級のお前が俺に聞いていいのかよ」

「まぁ、ほら、先輩って大体飛び級しても一つ上じゃないですか」

「………何気に凹むようなことを……で、どれがわからないんだっけ」

「ここと、ここです」

「何気に増やしてないか……まぁ、いい。ここはな……ん」

 辺りをきょろきょろと見渡す。

「どうかしたんですか」

「いや……なんだか誰かに見られている気がしてな」

「えっと、それって……もしかして……」

 澤田は何かあててでもあるのかあごに手を当てていた。

「お、何だよ」

 何か思い当たるようなことでもあるのだろうか。期待してみているとにこやかに笑って告げた。

「……多分、零一先輩の被害妄想ですよ」

「………」

 何気にまたも凹むようなことを……しかし、二度あることは三度あるってことだし。次は覚悟しておくとしよう。



――――――――



「あら、雨乃じゃない」

「よ、笹川。今日も本読んでいるのか」

「そりゃあね」

 昼休み、図書館へと向かった。暇だったからである。とりあえず図書館に行けば時間を潰すことができるだろうと考えたからだ。

「今日は何を読んでいるんだよ」

「恋愛小説よ」

「へぇ……どんなのだ」

「興味があるのかしら」

「まぁ、少しはな……で、どんな話だよ」

「高校二年生のカップルの片割れ、彼氏のほうが他の女子に手を出して………それがばれて、卒業式の日に彼女に裏庭へと呼び出され……」

「え、何だよ。聞こえなかったぞ」

 笹川はとても昏く笑っていた。

「………えっとね、要約すると浮気をしてしまった彼氏が彼女に……されちゃう話」

「………」

 ぼそぼそとした調子で話していたために何を言っているのかはわからないが…恐ろしい単語のような気がする。

「そっか……ん」

「どうかしたの」

「いや、今……視線を感じたんだよ」

「それってきっと裏庭の下にいる彼氏の視線かもよ」

 人を馬鹿にするように笹川は笑うのであった。う、うう……なんだか笹川が怖いな。ま、前から怖かったんだけどな。



―――――――――



 誰もいない廊下までやってきて俺はため息をついた。

「……いい加減、出て来いよ。もう正体はわかってるんだ」

 どうせ、朱莉だろうと思ってそう言った。すると、別人の声が聞こえて驚く。

「ありゃりゃ、ばれちゃったか。よくおれがいるってわかったね」

 姿を現したのは野々村竜斗。飄々としてつかみどころが無いのは昨日と何ら変わりがない。ついでに言うなら男のようで女なのも変わりがない。

「………なんで朝から俺を見てるんだよ」

 犯人を間違えたのはこの際、おいておくとしよう。言ったところで馬鹿にされてそれで終わりだ。

「あのさ、おれと賭けでもしないかな。零一くんが勝ったら何でも言うことを聞くよ」

「はぁ、賭けってお前は……」

「賭けは簡単。おれが零一くんの知り合いの女子の心を全部奪えたら、おれの勝ち。出来なかったら零一くんの負け」

 一方的にそういわれても、色々と突っ込みたいところがある。人の話にかぶせるように話すタイプだな、竜斗は。

「待った、期限とか決めないと時間かかっていいならお前が勝つのは当然だろ」

「まぁ、一概にはそういえないけど……一学期以内に決着をつけて見せるよ」

 相当な自信なのは何故だろう。それほど、自分が女子にモテるという自信があるからなのだろうか……モテない男が聞いたら目が血走りそうな話である。

「あれ、零一くん……目が血走ってるけどそんなに盗られたら嫌で、気になる女の子がいるのかな」

「……別に、血走ってねぇよ」

「あ、その女の子っておれのことかな。それならいいんだけどなぁ」

「けっ、言ってろ」

 べらべら喋る奴も嫌いである。面倒だし。それに輪をかけて、ぺらぺら喋る割には肝心なことを口が滑ってしゃべらないやつは嫌いだ。

「じゃあ、今日から開始」

「おい、俺はまだ……」

「よ~い、どん。スタートっ」

「………はぁ」

 一目散に走り去った野々村竜斗の後姿を見ながら俺は一人ため息をついたのだった。ま、こっちには切り札がいる。そいつがいる限り俺の勝ちは期待できるだろ。不安なのは最近、学校に来ないって聞くからな。


え〜久しぶりに以前書いた小説を自分で読み直しました。しかも、誤字脱字が素晴らしいぐらいひどいやつを。内容もひどく、一話読み終わってやめました。あれはひどい。死んでしまえとリアルに言われるぐらいひどいもので改訂したいものでしたが、やる気を削がれ、只今K.Oされています。次回は百四十話ですね。四月二十三日七時五十二分雨月。

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