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第百三十八話◆竜斗編:ジョーカー

第百三十八話

 電柱から電柱へ、そして曲がり角へと移動して尾行する。勿論、それらを他の人に見られたりしてはいけない。ばれたら警察に連絡されてしまうからな。こっちに来て俺はまだ警察に追われたりしていないのでがんばらないと……。

「……」

 一人暮らしとなったために自由度が増したといっていいだろう。どんなに遅くなったとしても家族に迷惑をかけないというのが利点でもある。

 俺が追跡しているのは当然、野々村竜斗。飄々としたような感じの人物のためにつかみどころがないと言うのが他の人の意見だった。女子に聞いたところ『彼氏にしたい人物ベスト1』だそうである。白馬の王子様、異世界の勇者、ハーレムを築くライトノベルの主人公といった存在…羨ましい野郎だ。男子からはやはりというか、あまり評判がよくない。『女にモテて憎い存在ベスト1』だったりする。女っぽい、カマっぽい、体育の時は必ず見学をしているが留年しなかったなどという当然といえば当然の結果だった。

「野々村グループって言ったらめちゃくちゃ有名なところだからな……どんな豪邸に住んでいるのか見せてもらおうじゃねぇか」

 気がつかれることなく結構遠くまでやってきた。奴はしっかりと前だけを見て歩いているために後ろを振り返ろうともしない。

「……」

 そして、気がつけば俺のアパートのところで立ち止まった。

「え」

 俺の部屋の前を通り過ぎ、お隣の部屋の扉に鍵を突っ込んでまわした。そして、開いたら中へと入っていく。

「………」

 俺は何も見なかったことにして帰宅することにしたのだった。あ~あ、疲れた。



―――――――――



「ふぅむ……どんな偶然だよ……」

 ここにやってきたときに隣にも挨拶に言ったのだがその時はおっさんが一人出てきただけだったはずだ。もしかして、その時は偶然いなかっただけなのかもしれないな。



ぴんぽ~ん



 若干間延びしているチャイムなのだが……まぁ、それはおいておくとしよう。誰かお客が来たようなので出ることにした。さて、誰だろうか。候補としては……十通りぐらいかな。

「やぁ、零一くん。おれだよ、おれ」

「……今更そんな詐欺に引っかかるとでも思ってるのか」

 玄関の先には野々村竜斗が……

「実はね、昨日お隣に引っ越してきていたんだ。これからよろしくお願いしますって挨拶に来たんだよ」

「へぇ、そうなんだぁ」

「もう、冷たいなぁ。胸を触ったくせに」

「それとは関係ないだろ。大体、お前は何者なんだ」

 不思議な存在だ。俺をおちょくりまくりやがって。しかも、なんだか裏がありそうな性格をしていそうで面倒なやつだな。

「あ、そうだ。これ、お近づきの印に羊羹を持ってきたんだ」

 にこにこと笑ったままで高そうな、というか……あの有名な羊羹店の羊羹を突き出された。

「まず、俺の話聞いてないし……」

「いいじゃんいいじゃん、おれ達友達なんだし」

「なれなれしい奴だな……おい、気安く肩に手を回そうとするな」

 しっしと手を振って羊羹を危うくなりながらも手渡される。

「もう、つれないなぁ」

「そんなもんだろ」

「零一くん、おかしいよ」

「お前のほうがおかしいぞ」

「まぁ、いいか。うん、あのさ、おれに教えて欲しいんだけど零一くんって女の子の知り合い……どんな人がいるのかな」

「何でお前にそんなことを教えてやらなきゃいけないんだよ」

「いいじゃん、教えてよ」

 面倒な奴がお隣にやってきたものだな……さっさとあしらって帰らせるしかない。

「じゃあ、今日は一人だけ教えてやるからそれを聞いたら絶対に帰るって約束するなら教えてやるぜ」

「うん、それでおれは構わないよ」

 よし、納得したな……この勝負、俺の勝ちだ。

「一人目、お前だ」

「え……」

「野々村竜斗。名前は男のようだが女だ。さぁて、今日はもう帰ってくれ」

 ぽかんとした面をした竜斗に俺は笑いながら言ってやった。

「えぇっ、零一くんのいじわるぅ~」

「なぁにが『かっこいい零一くんのいじわるぅ~』だ」

「いや、かっこいいとは言ってないよ。あんまりかっこいいとはおれ、思わないけどな」

「うるさいな、帰れっ」

 まるで野良犬をさっさと何処かにやるかのように俺は再び手をふった。

「ちぇ、そんな反則卑怯だよ~」

「でも、ウソは言ってないだろ」

「うぅ、確かにそうだけどさぁ………今日は負けを認めるよ。けどね、そんなに卑怯な手を使うと……」

「今日だけじゃなくてこれから向こう三十年ぐらいは負けを認めておいてくれ」

 それだけあればこいつから逃げるのには充分だろうし。

 とぼとぼと帰っていく後姿。何者かはわからないが……相当濃い奴が知り合いの中に入ってしまったものだな。

「……はぁ」

 ため息なんていくらでも出るさ。しかも、まだまだ嫌な予感が……俺の予感って結構当たるほうだからなぁ。


人は誰しも嘘をつきます。出来ると言って出来なかった場合、それは嘘になります。もちろん、出来なかった過程が納得するものなら人はチャンスをくれます。ま、あんまり気負いすぎると押し潰されるのは当然なのですがね。最後に、冗談が通じない人はかなり、面倒だと言っておきます。何か言いたい事があれば感想、メッセージで受け付けます。四月二十二日八時五十二分雨月。

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