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第百三十三話◆朱莉編:消えた癖

改めて此処に記載しておきますがこの小説は不定期更新ですご了承ください。

第百三十三話

「零一君、遅いですよ」

「悪い、帰りのHRが意外と長引いちまったんだ」

 駅前の喫茶店で待ち合わせをしていた人物がご立腹のようだった。他のお客は楽しそうに人と話しているのになぁ。おい、そこのカップルっ……俺を指差して笑うんじゃねぇっ。

「で、俺に用事って何だ。また仕事の依頼か」

「いえ、違いますよ」

 むっ、それが違うならなんだろうか……

「それが違うなら……今度遊びに行こうってか」

「それも違います。行きたいのですが時間がないので」

 他にもう何も思いつかない。思えば、朱莉と俺って何で仲良くなっているんだっけ。思い出せないな。

「……降参だ、思いつかない。それで、何なんだよ」

「とても、そう、とても大切な話です」

 朱莉はいたって真剣そうにそういった。メガネの奥の瞳がシリアスさを増大させているようにも見える。

「お、なんだか本当に大変そうな話だな……すみませ~ん、オレンジジュースください」

「真剣に話しているんです」

 一つため息をついて俺を呆れたような目で見た。最近なんだか色々な人から呆れたような目で見られることが多いような気がしないでもない。

「あのですね、最近零一君……追跡癖がなくなってきていませんか」

「ん……」

「それに、あたしが後ろをついてきていても気がつかないことが多くなっています」

「え、そうなのか……」

 うぅん、確かに言われて見れば朱莉が俺のことを尾行している気配なんてなかったような……

「ん、でもそれって朱莉の追跡スキルが上昇したって言ういい話かもしれないだろ」

 人って気がついたら説明するものなんだなぁ、まぁ、あまり人としてどうかと思われるものだけどさ。

「残念ながら違います。あたし、やっぱり一ヶ月に一回は警察に呼びとめられることがありますから」

 そういえばこの前初めて公僕に追いかけられている朱莉を見たような気がする……ついでに言うなら満をストーキングしている女子も一緒にいたな。

「……そうか、それならやっぱり俺が普通の人に近づいてきたってわけかぁ」

 思えば、追跡しろと俺に言った爺ちゃんが行方不明になって一年ぐらい経っちまったんだなぁ……時間の流れって案外早いんだな。

「で、朱莉は俺にわざわざ教えてくれたのか」

「のんきにへらへら笑っている場合じゃありませんっ。これは事件ですっ。雨乃零一が雨乃零一でなくなるということですよっ」

 それは……どうなのだろうか。追跡癖=雨乃零一って考えになってるな。

「問題ないだろ」

「あります。大有りです」

「どんなところが問題だよ」

「共通の癖がなくなります」

「誰と」

「あたしとです」

「………」

 いや、別に真人間になろうとしているのだから放っておいてくれてもいいんじゃないのかなぁ…。

「こ、このままあたしをおいていくなら今此処で泣いちゃいますからっ……え~んっ」

 本当に泣き出した(やたら泣き方が嘘泣きっぽい)ようなのであせってしまった。周りの客(特に男共)、ウェイトレスからどうやら俺はにらまれてしまっているようだ。ところで、いつまで経ってもオレンジジュースがやってこないのは何でだろう。

「わかった、わかったから泣くなって……」

「本当にわかっていますか」

「ああ、わかってるって……」

「じゃあ、今度からはすぐにあたしが尾行しているのに気がついたら名前を呼んでくださいね」

「はいはい、わかりましたよ」

 約束、約束とは人と人とを縛る縄のようなものなのかもしれない……そんな哲学的なことを考えることが出来るようになった高校一年生、二年目。



――――――――



 朱莉と分かれ道で別れ、俺はどうしたものかと腕を組んだ。

「んじゃまぁ、とりあえず朱莉を尾行でもしてみるか」

 ちょうどいい標的である。俺が尾行しているということがばれた場合は朱莉が言っていることが正しいのだろう。

 早速、分かれ道まで引き返してある程度、走ることにした。朱莉の後姿を確認すると近くの電柱の陰に隠れる。

 しかし、なんだか違和感が拭えなかった。



――――――――



「む、やっと追いかけてきてくれましたね」

 湯野花朱莉は気がついていないふりをしてそのまま追跡者の追跡を許すのであった。何事もやる気が大切ということでとりあえずやる気になってくれたことにほっとする。

「このまま家までついてきてくださいよ、零一君」



――――――――



「うぅん、いまいち……だよなぁ。何でだろ」

 こんなことは間違っている、心の中で何かが、誰かが……叫ぶのだ。

 そんな時、後ろから声がした。

「あれ、一先輩じゃないですか」

「つ、剣……」

 剣が竹刀袋を肩にかけ、首をかしげている。

「こんなところで何をしているのですか」

「いや、特に何も……」

「じゃあ、一緒に帰りましょう。途中までは家が一緒なのですから」

「そ、そうだな……」

 夕焼けを背景に俺は剣と共に帰路へとつくことにした。まぁ、追跡のことはまた今度でいいだろう。

「そういえば、この前ストーカー特集があっていましたね」

「あ~そうだな」

「見ましたか」

「いや、見てないぜ。見ようって意欲がわかなかったし」

 以前だったら絶対に見ていただろうなぁ。

「そうですよね、でも、対策をたてるにはちょうどよかったと思います」

 正直に言うが剣のことをストーキングしているやつはいないと思う。俺は違うよ、危険を感じてやめたから。

「でも、ストーカーなんて最低ですよね。人間、堂々としていないといけません」

「そうだな、なんだか最近、お前の言うことに納得できるようになったぜ」

「おや、私はいつも正しいことしか言っていませんよ」

 そういわれて俺は気がついた……もしかして、俺って……


先日、投稿した佳奈エンドの絵を無感の夢者さんに書いていただき、みてみんのほうにもアップしていただきました。実にすばらしく出来上がっているといっておきます。どうぞ、見ておいてくださいね。さて、二年生になった零一(以外の人たち)は色々と問題を抱えていたりもします。勿論、一年次の問題持ち越しの人もいたりするわけですね。そういうわけでコンセプトとしては問題を取り上げていこうと思っています。それではまた次回っ。四月十七日土曜、十九時三十二分雨月。

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