第百三十二話◆日常編:クラスメート
第百三十二話
新一年G組に俺は重たい足を運んでいた。まさか、自分より年下と一緒に勉強をしなくてはいけない日がやってくるとは思いもしなかったな。
まだほんの少しだけ日陰は寒い。廊下に日が当たっていないために窓から入り込んでくる風が冷たかったりする。新学期から暗いと思うかもしれないがそんなものである。大体、不安と希望が混ざって入学してくる連中が多いだろうが気がついたら希望は消えてしまっていたりするのだ。不安が六、希望が四ってところだろう。
「はぁ……」
そんな後ろ向きな考えを払拭するためにため息をついて一年間お世話になったはずのG組に入る。またもやお世話になるとは思わなかった。きっと、運命の紅い糸で縛られているのだろう、俺とG組は……
「あれ、一先輩じゃないですか」
G組に入ってすぐ、目の前に剣が立っていた。何故、立っていたのだろうか。
「……つ、剣。もしかして、というか……お前、G組なのか」
「はい、そうですよ」
笑う事無く、淡々と告げる。剣の近くには竹刀袋がきちんと存在していた。他のクラスメート達も知り合いと話している為にクラスには入りやすい……いや、入り口に剣が何故か立っているので入りにくい。
「兄から聞いてはいましたが……まさか、同じクラスになるとは思いませんでしたよ」
零一はねぇ、馬鹿だからねぇ、留年しちゃったんだ、あははは~とか言ってそうだな。今度、どついたろうか。
「凄く、心配していました」
「………」
さっきはどついたろうかとか言って悪かった、満。
「きっと周りは一年生ばっかりで大暴れをしないか心配をしていたんです」
「……俺はどんな人間だよ」
笹川、ましてや剣じゃあるまいし…
「まぁ、これから一年間よろしくな」
「ええ、間違っているところがあれば部分部分で注意していきますのでよろしくお願いします」
お前が注意するのかよ……。
まぁ、知り合いがいるだけマシなのかもしれないな。
「そういえば、このクラスに飛び級してきた中学生がいるそうですよ」
「やっぱり噂は本当だったのか……」
留年してしまっているために絶対に馬鹿にされると思いながら辺りを見渡す。
「……んをっ」
「どうかしましたか」
「いや、ちょっと知り合いがいた気がしてな……」
右から左に目を動かしていく。頭のよさそうな奴は失礼だが、皆無。どの生徒も運動会系の人たちばっかりだ……っと、そう思っていた中に、知り合いの顔にそっくりの生徒がいた。
「もしかしてお前、澤田か……」
「え、えっと、やっぱり零一先輩なんですか」
澤田夏樹とは久しぶりに出会う気がした。そうだな、前あったのはバレンタインデーのときだし。
「あの、先輩は何で此処に……二年生に進級したはずですよね」
「俺は……まぁ、ダブったんだよ。ところで、お前は何で此処にいるんだ。澤田は中学生のはずだろ」
そういうと澤田は照れたように笑った。
「実は、飛び級してこの高校に入ることが出来たんです」
「え、お前が……か」
「はいっ、そうなんですっ」
「……」
頭の上からつま先より下、つまりは床まで見下ろしてみた。どう見ても頭がよさそうには思えなかった。
「あぁっ、なんだか失礼なことを考えていますねっ」
「はははは、俺がそんな事を考えるわけ無いじゃないか」
澤田と話をしているとこっちに剣がやってきた。
「やはり、一先輩の知り合いだったのですね」
「えっと、零一先輩……この人は……」
先ほどまでの明るさからは少し身を引いた感じになる。剣って威圧感があるから大人しい子から見たら怖く映るんだろうな。
「吉田剣って言うんだ。俺の友達の妹で礼儀正しい奴だぞ。いきなり噛み付いたりは……」
「しませんよ」
「ま、澤田は大丈夫だろう」
真先輩は残念ながら初見でかみつかれたんじゃないだろうか。
「紹介してもらった吉田剣です。以後、よろしくお願いします」
「あ、はいっ。よろしくお願いします」
うんうん、こうやって友達の輪って広がっていくんだろうな。澤田が剣と仲良くできるかどうなのかはわからないが、きっと仲良くなるだろう。
たまに、そう、たまに思ってしまいますが最近のゲームは簡単なのかもしれないと思います。簡単に言うなら昔はノーマルがハードレベルだったような感じですかねぇ。まぁ、かといって雨月もそこまでゲームが得意というわけではありませんから。ま、それはおいておくとしましょう。いい加減、あの人にもエンディングを与えたほうがいいでしょうからねぇ。四月十七日土曜、九時二分雨月。