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第百三十一話◆日常編:クラスチェンジっ

第百三十一話

 春、卒業式を終えて、入学テストがあって……それまで一年生だった者達が上級生へとクラスチェンジする季節でもある。



吉田満/新入生 → 吉田満/駄目な高校二年生(女憑き)



 こんな感じ。

 今年の桜が意外に長持ちだったおかげで新一年生が入ってくるまで綺麗に咲いていたりする。

「さてと、俺のクラスは……」

 一年ごとにクラス替えが行われる羽津高校では春のイベント一発目がクラス発表だったりするから驚きだ。入学式より早くに行われるため、一種の合格発表のようなものだったりする。

「……また、満とか笹川、もしくは佳奈に朱莉にニアの誰かと一緒だったらいいんだけどなぁ」

 そうやって自分の名前を確認する。まず、最初に一番心当たりがあるクラスの名前を確認していくと……なるほど、俺の勘というものはすばらしいな。

「なぁんだ、またGクラスか……」

 他に知った名前はない……というか、俺以外の名前が書かれていなかったりする。

「一年G組か……やっぱり、留年しちまったか」



――――――――



 一人暮らしのアパートに帰りつくと見知った顔が手を振っていた。

「零一、帰ってくるのが遅いよ」

「満……お前何をしに来たんだよ……それに笹川までいるじゃねぇか」

「いちゃいけないの」

 笹川の眉が危ない角度へと上昇中。その結果として俺の冷や汗が流れ始めたりする。

「いや、そういうわけじゃねぇけどよ……というか、俺がここに引っ越してきたのよく知っていたな」

「栞たんが教えてくれたんだ。偶然零一がここに荷物を入れているところを見たんだって」

「なるほどな……」

 まぁ、教える手間が省けたから別にいいか。

「悪いけど、まだ中の荷物を片付けたりしてないぞ。それでもいいのか」

「構わないよ。家捜しする手間も省けるだろうし」

「そうか……って、自重しろよっ」

「まぁ、立ち話もなんだから中で話そうよ」

「それは俺の台詞だっ」

「ああ、零一に五分だけあげよう。栞たんに見られては困るものが散らかっている可能性があるからね」

「余計なお世話だっ」

「何の……話をしているの」

「「いや、よい子は知らなくていい話さ」」

 さっさと二人を中にいれ、俺はどうしたものだろうかとため息をついた。

 テーブルを出してその上にお茶を出す。

「そういえばさ、やっぱり留年しちゃったんだね」

「やっぱりとか言うなよ。大体、ここって成績で一を一つでも出したら留年確実だろ。俺以外にも留年者は沢山いるはずだぞ」

「まぁ、そうだろうねぇ。でも、一年G組には留年者一人だけだったと思うけど……」

「うぐっ……」

「そうね、G組で馬鹿な生徒は雨乃だけってことになるわ」

「へぐっ…」

 確かに、俺以外にG組の奴は名前がなかったな。

「栞たんはこの僕がもらうよ。いやあ、実に惜しいライバルを失ったものだ」

 へっ、勝手に言ってろ。きっと、笹川の彼氏になった奴は殴られ続ける変態がお似合いだぜ。

「しかしまぁ、確かに残念だったな。お前らと同時に上がれなくて寂しいもんだ。まぁ、なんだ、俺が飛び級でもしたらお前らに追いつくことが出来るんだろうけどよ」

 近隣の高校では飛び級をした生徒が二人もいるらしい。両方とも海外留学に行くレベルなのだからきっと、美人で、頭が良くて、日の打ち所の無い優等生様なのだろう。

「ああ、そういえば……今度この高校に飛び級で上がってくる中学生がいるんだってよ」

「マジでか……俺、虐められないか不安だぜ」

「ちなみに、飛び級してくるのは僕の妹じゃないよ」

「わかってる、そういえば…剣はこの高校に本当に来るんだってな」

「うん、そうだよ」

 木刀を肩に乗せてマスク、パーマ、ロングのスカートをはいた剣を想像してしまった。

「いや、流石にそれはないよ」

 満は俺がどんなイメージをしたのかわかったらしい。なんだかんだで約一年一緒にいるとここまでになっちまうんだな……。

「そうだよなぁ、けど、女番長って考えられるかも。現に笹川がそうだ……冗談だよ、冗談。静の中にちょっとした動きを入れたりするのが冗談だろ……だからな、俺も場の空気を読んで……いたっ」

「冗談はやめて、女番長だなんてぞっとするわ」

「僕も、違う意味でぞくぞくしてるよ」

 番長皿屋敷……なんちゃって。

「それで、お前達二人は本当にここに何をしに来たんだよ」

 そういうと満がため息をついて、笹川は何かを取り出した。

「君が落ち込んでいやしないかと思ったんだよ」

 傷口に塩を塗るような真似をしたくせして意外と友達思いな奴だな。

「ケーキでも食べて留年したことは忘れるといいわ」

 留年したということをケーキで誤魔化すことができるのだろうか……しかし、まぁ、こうやって心配してくれる友達が俺にも出来たんだな。

「あれ、零一どうかしたの」

「ん、いや、お前ら二人に初めて感動した気がしてよ」

「それはひどいな」

「そうね、流石にひどいわ」

 先ほどまで俺を虐めていた連中とは思えないほどショックを受けたような面をしていた。なんだかんだで、二人とも顔の面は厚いから仕方ないか。その点、俺はとても繊細な人間だからな。

「まぁ、ありがとな。助かった」

 持つべきものは友達だって言うけど、一応、信じていい言葉なのかもしれない。ケーキと激励のお礼に俺は二人にコロッケをご馳走した。


ええ、もう、エンディングは終わりました。ええ、雨乃零一の家族を求める高校一年生のワンダフルデイズは終わりを告げたのですよ。本当に余談なのですが高校三年生で留年してしまった場合でも卒業式にはちゃんと出なくてはいけなかったりします。卒業式でないて、また春から受験生。それまで休みを一度もしたことなければ四年目も皆勤しなければ皆勤賞が解禁されません。さて、話は戻りますが零一は一人暮らしをすることになったというわけです。正直、一人暮らしは生活力のない人がやっても悲惨な結果になるだけです。料理もある程度のレパートリーがなければあっというまに出来合いの惣菜などになってしまいます。もう一人暮らしをしているよという人は改めて自分の生活を見直してみましょうね。何かいいたいことがあればどうぞ、言ってください。では、また次回お会いしましょう。四月十六日金曜、二十時四十四分雨月。

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