第十三話◆:追跡少女、登場。
第十三話
からかう行為って意外と代償がでかい、そう思えて仕方がなかったりする。そう思えて、この空気を壊したくないなぁという理由もかねて俺は世間話でもすることにした。佳奈とこっちで会ったとき『どなたでしょう』って言ったのが今更だが悔やまれるな。
「なぁ、そういえば五月の末って中間テストがあるんだろ」
「そりゃあ、そうよ。あるわよ、それがどうかしたの」
高校に入って初っ端のテストである。いや、俺の場合はすでに二回目のテストであるのだが……もちろん、編入テストより難しい、はず。
「じゃ、そろそろ勉強しておいたほうがいいんじゃないかなぁ、そう思ってさ」
「何、零一は自信がないの」
小ばかにしたように、こっちを見てくる。
「そりゃあな、頭を使う作業はあんまり得意じゃないし……って、それじゃあ俺が馬鹿みたいじゃないかっ」
くわっとにらんでみるも、佳奈は笑うだけだった。
「大丈夫よ、わからないところがあったら私に持ってくれば教えてあげるから」
「お、悪いな……お前、いつも勉強してるのかよ」
「そりゃあ、ね。陰の努力家だから」
上からすとーんの胸を張る。
「けど、今、自分で陰の努力者って言っちまったから陰でもなんでもないな」
「……れ、零一だけが知っているんだからそれでいいじゃない。まだ一人しか知らないことなんだから陰でいいのよ、陰でっ」
笑顔もいいけど、あせっている顔も意外と可愛いもんだなぁ……もちろん、口が裂けても言わないがな。
平凡って言ったらそうかもしれないが、俺にとっては非日常な登校時間は気がつけば終わっていたのであった。
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「んっ」
違和感を覚えたのは昼休みだった。誰かに見られている、つけられている気がした。後ろを振り向くことも無く、そのまま曲がり角を先ほどとなんら変わりのない歩調で曲がり、物陰に隠れた。
俺の目の前を長髪でメガネの女子が通り過ぎていく。そして、立ち止まってきょろきょろと何かを探しているようだ。
「あの~」
「はいっ」
後ろから声をかけてやると驚いているようである。内心、大声で笑い転げながらも次の言葉を用意する。第一、校内で話しかけられてそうびっくりするひとなどいないだろう。
「……この前俺を尾行していたとおりすがりの美少女って人っすよね」
「……そ、そうですが」
「また、尾行していたんですか」
「え、ええ……いつもの追跡癖なんです。あれからまた、警察のご厄介になってしまいました」
てへへと頭を掻いている。やれやれ、この人も大変なんだな。警察に厄介なんて可哀想だ。俺は……ほら、俺は毎回毎回ろくなことが起こっていないからな。よくよく考えてみたらそっちのほうが大変だな。
「そういえば、名前は何ていうんですか」
「え、名前ですか……あたしの名前は湯野花朱莉ですよ」
ゆのはな……あかり……。
「いい名前ですねってほめたほうがいいですかね」
「……そういうことはあたしに聞かないほうがいいんじゃないのでしょうか」
それもそうだな。そして、この後にいい名前ですねってほめても単なるアホって思われるんだろうなぁ。
「……じゃあ、その名前気に入っているんですか」
「まぁ、結構」
うん、通りすがりの美少女と自称するんだからやっぱり可愛いものなんだなぁ、心が和むわ。
そういえば、自分の名前を相手に伝えていなかったことに気がついた。
「あ、俺の名前は……」
「雨乃零一君ですよね」
「え、ええ……」
「任せてください、一通りのことはすでにノートにまとめてありますから」
「……ノートって……」
左手で握っているノートが非常に気になる。手を伸ばそうとしたら引っ込められた。
「だ、駄目ですよっ」
「ちょ、ちょっとだけでもいいじゃないっすか」
奪い取ろうとしたが、避けられ、走り去られてしまった。追いかけてもよかったのだが、もう、どうでもよくなってしまった。
「あ、転校生君」
そんな声が後ろから聞こえて気がした。
俺も逃げる。
→土下座。
はい、十三話目です。ばしばし、更新できるのも残りわずか……そういうわけで、気合入れていきます。二月二日火曜、十時四十六分雨月。