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第百二十九話◆佳奈編:決意

第百二十九話

「俺、この家を出て行くよ」

 自然と出てきた言葉に少しだけ驚きながらも俺は佳奈の目をしっかりと見据えていった。以前の俺だったらごまかしたりしていただろう。

真正面に立っている佳奈の口はへの字になっていて眉は吊りあがっている。怒っている、そうとっても問題はなさそうだ。いや、これで喜んでいたとしたらポーカーフェイスって言うのだろうな。そこまで佳奈が器用な人間だと俺は思わない。

「何で」

 勿論、言葉自体にもとげとげしさがあって安易な言葉ではその考えを訂正させることなど出来ないだろう。ここは慎重に言葉を選ばなければいけない。

「俺が此処にいてくれていい理由を佳奈、お前がくれたんだ。嬉しかった……だけど、それだけじゃいけない気がしたんだ」

「それだけじゃいけないってどういうことよ」

 タイムラグの無い返事。直球ど真ん中。まるで、変化球の投げ方がわからない少年のような瞳だった。

「俺にもうまく説明できる自信はない、それに、我がままなことだと思ってる」

「本当、我がままな話ね」

「……悪い、だけど……お前が言ってくれたことも大切にしたいんだ」

 佳奈は俺を睨むようにして眺めている。腕組みをして仁王立ちという、どうみてもご立腹ですと主張しているような空気だ。

「大切にしたいか……本当、我がまま。大嫌い、どうせすぐ帰ってくるんなら此処にいてくれればいいのに……もう、好きにしなさいよ」

 俺の脇を通って自室へと行ってしまった。

「……これで、これでよかったんだよな……」

 呟きにさえ答えは戻ってこない。ああ、そういえばゼロツーは部屋においてきたんだったな。



―――――――――



 佳奈は部屋に篭もったきり、出てこようとはしなかった。それから一時間ほど待っていると鈴音さん、達郎さんが帰宅。達郎さんは部屋に着替えに戻る事無く、テーブルについて俺に前に座るように促した。

「……鈴音からは聞いたけどお前の口からも聞きたいからな。理由を聞かせてもらいたい」

「佳奈や鈴音さん、達郎さんから此処にいてもいいって言われて嬉しかった……のは確かです。それと、佳奈から家族になってほしいとも言われました。正直、これまで爺ちゃんと一緒に過ごしてきた俺には味わうことの出来ないものの連続だったと思ってます。家族なんて要らないなんて思ってはいませんが家族になるって言うのには覚悟がいると思ったんです。だから、改めて此処の大切さを知るためにひとりで生活したいと思いました」

「……なるほどなぁ。お前の決意は固いのか」

「……」

 俺の決意は固いのだろうか。

「わかりません。正直に言いますけど誰かに止めてもらいたいのかもしれません。佳奈にごねられたり、達郎さんに殴られたら絶対にやめると思います」

「……そうか、まぁ、可愛い子には旅をさせろって言葉もあるからな。安心しろ、俺はお前を止めたりしない。止めたいのはやまやまだけどな。自炊はきっちりしろよ。お前のことだから大丈夫だとは思うけどな」

「はい、がんばってみます」

「んじゃ、今度は部屋を探しに行かないとな……」

 そういって達郎さんは部屋に引っ込んでしまった。

「佳奈にはちゃんと言えたのね」

「何とか……」

「そう、それはよかった。もうわたしから何かを言うこともないわね……身体に気をつけるように」

「はい」

「ところで、いつから一人暮らしを始めるつもりなの」

「えっと、来年度から始めようかなって思っています」

「そう、それなら部屋をきちんと見つけておかないといけないわね」

 こうして、俺の一人暮らしへのカウントダウンは始まったというわけである。


ああ、皆様に言い忘れていたことを思い出しました。先日、食事中にイヤホンぶらさげていたらマッシュポテトの中に右耳のイヤホンが落ち込み…結果、音が出なくなりました。雨や雪、様々な悪い環境のなかで使用してきても一切問題なかった歴戦のつわものだったのですが、まさか、まさか…ジャガ芋をすり潰した食べ物に負けるとは思いもしなかったでしょうね。って、終回前に何を言っているのでしょう…ともかく、第百三十話は佳奈のエンディングです。ちなみに、いつ投稿するのかはまだわかりません。四月十五日八時五十二分雨月。

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