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第百十五話◆剣編:縁

第百十五話

 期末テスト一日目、俺は中間テストでへまをしてしまっているためにこの教科を落とすと留年となる可能性が非常に高くなる。赤点が墜落点数だったとしたらすでに中間テストで墜落していたりするのはまだ佳奈にも誰にも言っていない。しかも、この教科に関しては朝の課外に出なくてはならず、テストその日の朝にもあったりする。もし、遅刻を一度でもしたら……ちょっと、よくないことが待っていたりするのである。

 そういうわけで、佳奈が起きるときに俺は学校へと向かっている。留年なんてしたくないので当然である。

「お、あの後姿は……」

 俺の前を歩いているのは一人の中学生。竹刀袋に木刀が入っているのを知っているのはどれだけいるのだろうか……まぁ、あれで叩かれた奴なら知っていることだろう。

 前を歩いている吉田剣を追い抜くか、追い抜かざるべきか悩んでいるといきなり歩道で倒れたのである。

「お、おい……大丈夫かよっ」

「いたたたた……」

 腹を押さえ、その場にうずくまっている。顔には玉汗が浮かび、流れていくものもあった。

「きっと日ごろの行いがいいんだな……ちょっと待ってろ、其処の医院から医者呼んでくるから」

 近くに病院があってよかった……

「……だ、大丈夫です。自分の足で行きますから……」

 そんな事を言って立ち上がる。すげぇ意志だが……数歩歩いたところで再び膝をついた。

「しょうがねぇ、乗れよ」

「……い、いえ……」

「いいから、乗れっ」

「……はい」

 無理やり背中に吉田剣を背負い、俺は病院の戸を叩いたというわけである。



――――――――



「で、色々と医者に話していたら遅れてしまったと」

「……はい、そうです」

 普通だったら担任教師に問われるところなのだろうが何故か、俺は校長室で立たされている。シリアスの匂いが全然しないと思われがちだが校長先生の顔はシリアス以外の何者でもない。

「……君の処分に関しては後々、報告しよう」

「……はい、わかりました」



――――――――



 期末テストも散々だったわけなのだが……笑ってくれて構わない。鈴音さんに怒られ、達郎さんにも怒られた。ついでに言うのなら佳奈にも馬鹿にされて……ううっ、泣きたい。

 寒さに震えてコタツに入っている俺の耳にチャイムが聞こえてきた。

「はーい」

 鈴音さん、達郎さん、佳奈は今いない。それぞれ用事があるために何処かに行っているのであろう。

 居候ではあるのだがこの家の一員と言えなくも無いので出るのは当然だ。そういうわけで、出た。

「……えーと、どちら様……」

「こんにちは。今日はお礼をしに来ました」

「やぁ、零一」

「満に……」

「はじめまして……は、おかしいと思いますが吉田満の妹、吉田剣です。この前は助けていただいてありがとうございます」

 女子制服姿の吉田剣は腰を折って丁寧に頭を下げてきた。

「え、ああ、いやいや……まぁ、二人とも散らかっているけど上がってくれよ」

「では、失礼します」

「お邪魔します……いやぁ、佳奈つんの家でもあるんだよねぇ……」

 二人を応接間へと通し、お茶とお菓子を用意する。

「お構いなく」

「いただきまーす」

「対照的な兄妹だな……」

 遠慮という言葉を知っている妹に遠慮を知らない兄……全く、本当に兄妹なのか……って、顔がなんとなく似ているな。

「雨乃零一先輩」

「ん」

「兄から聞いていた話とかなり印象が違います。失礼ですが、兄からは『人間の屑の集合体のようだ』と聞きました」

 その瞬間、満の顔が青くなっていた。

「ははぁ、そんなこと妹に言ってたのかよ」

「ま、間違ってはいないだろう」

「いや、俺は其処まで落ちちゃあいないぞ」

 女に土下座してまで交際するなんてそっちのほうが落ちてるだろ。自分を卑下しすぎだ。

「ともかく、兄の非礼、お詫びします」

「気にするな。いつものことだから」

「いつも……兄はいつも雨乃零一先輩にそんな言葉を浴びせているんですか」

「ん~まぁ、友達だから」

「いえ、友達といえどそのような言葉を相手に向かって言うのはどうかと思われます。雨乃零一先輩もそのようなことを兄に向かっていっているのですか」

 思ったとおり、面倒だな……この子。満に視線を送るとどうしようもないといわんばかりに手をあげた。

「いや、言った事はないなぁ……」

「まぁ、そうだね。言われたことは無いね」

「じゃあ、一方的に兄が雨乃零一先輩に罵声を……」

「「……」」

 二人してどうしたものかと顔を見合わせた。これは話を変えないとなんだか血を見ることになりそうだ。

「と、ところでお礼と言っていたが何のことだ」

「お礼…そうでした。この話は今度させてもらうとして……何にするのか迷いましたが英語のノートを買ってきました」

「英語の……ノート……」

「はい。高校生だとのことで英語を習っているでしょう。ですから、必要なものを選んで買ってきました」

「あ、ああ……まぁ、たしかにそうだな。ありがたくつかわせてもらう」

「いえ、助けてもらったお礼ですから」

 てっきり、お菓子が出てくると思っていたんだがな……

「こんなにいい先輩がいるんだから羽津高校にして良かったと思っています」

「え…えぇっと、吉田剣ちゃんだったかな……」

「ちゃんは不要です。呼び捨てで構いません」

「剣は……俺らと同じ高校に来るのか」

「ええ、そうです」

「……」

 満を見るが、私はこの件については関与しませんという面をしていた。なんとなく、神様はこの世にいないんだなぁ、そう思った。


今日でとりあえずバイトが終わりですな。そういう理由で明日から……バイト先の犬の散歩に行ったため、疲労しました。隣で犬がめちゃくちゃ疲れています。とりあえず明日はきちんと朝に投稿出来そうです。四月五日月曜、十二時三十ニ分雨月。

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