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第百十話◆朱莉編:過去の修正

第百十話

 お客が来たということは何をしないといけないか……応接間にお連れして、お茶を出し、ついでにお茶菓子も出さないといけないのである。

「こここここここここここ校長っ、先生っ……と、朱莉……じゃなかった、湯野花さん」

 朱莉と呼び捨てにしたら校長と、何故か、佳奈に睨まれた。睨んでも汗ぐらいしか出ませんよ。

「あの、何で此処に来たんですか」

「謝罪と、朱莉についての話に来ただけだ」

 だけのわりには結構重要そうな話が揃っていますね。はて、ところで謝罪って何のことなのでしょうか。

「謝罪を要求しに来たってわけじゃ……ないんですよね」

「何故、君が私に謝罪をしなくてはならんのだ……まさか、お前朱莉に……」

「してませんっ、何もしてませんっ」

 ああ、転校するときに話をしたときの校長先生はこんなに怖くなかった。結構長話で優しい校長先生だって評判だったはずなのに……

「何度も言わせないでくれ。私は君の元にわざわざ謝罪をしに来たのだ」

「おじいちゃんっ」

 朱莉に怒られ、罰が悪そうに俺に頭を下げた。

「……こちらの誤解で停学などという不快、且つ、迷惑をかけてしまった。許してもらえないだろうか」

「あ、ああ……そのことですか。気にしないでください。もう終わったことですから」

「あの、本当におじいちゃんを許してくれるんですか……一方的に停学にしたのに」

 首をかしげる朱莉に頷く。

「人が人のことを思って停学にしたんだろ。まぁ、この場合は家族を守ろうとして邪魔者を停学にしようとしたんだ……家族に守ってもらえるんだから鬱陶しく思うかもしれないけど大切にしたほうがいいぜ」

「零一君……」

 なんだか、しんみりとした空気になったのは何でだろう。誰も茶化したりはしなかった。

「ともかく、謝罪の話はこれで終わりです。えっと、それで朱莉の……湯野花さんの話って何ですか」

「あぁ、それはな……」

 校長先生が少しだけ口ごもった。どうかしたのだろうか。

「悪いが、雨乃佳奈君と朱莉は席をはずしてくれないか」

「え、はぁ、わかりました」

 佳奈が立ち上がり、朱莉に部屋に来るように告げる。ああ、あの部屋はまだ半分程度しか片付けてないぞ。

「おじいちゃん、零一君を怒らないでくださいね」

「わかっている」

 釘をさされ、しぶしぶといった調子で頷いた。おいおい、怒るつもりだったのかよ。

 二人が部屋の中に入っていくのを見届けて校長先生は口をようやく開いた。

「あの子が何で人の跡を尾行するようになったかについてなんだ」

「……はぁ、それが……」

 俺に何か関係でもあるのだろうか。

「小さいころに一人の少年が人を尾行するような遊びをしていたそうでそれを真似たのが私の記憶にある」

「先に言っておきますけど、ここら辺に俺は住んでいませんでしたよ」

「そんなことはわかっている……私はその子どもを捜している。朱莉の未来をめちゃくちゃにした子どもだからな」

 ふんと鼻を鳴らしてふんぞり返った。俺は思い出したことを口に出してみることにした。

「あの、湯野花勇気さんは湯野花朱莉さんのお父さんですよね。探偵業ですし、父親の背中を見て育ったんじゃないんでしょうか」

 校長先生は頷いたがため息をついた。

「小さいころは『ストーカーみたいでパパなんて大嫌いだ』と勇気に言っておった。だが、その少年とであったその日から『父親の背中を見て育つ少女』に変わったんだ」

「なるほど、その少年が湯野花さんにあんな面倒なことを……」

「君の友人に君や朱莉のような癖を持つ人間はいないだろうか」

「……残念ながら、俺、交友関係狭いんですけどいないと言い切れますよ」

 それこそ、朱莉を見たときに驚いたぐらいなのだからそんなへんな癖を持つ友人は他にいない。

「そうか……それなら、君がこれから生きていくうえでそういった人物に出会ったら私に教えてくれないか」

「はぁ、それは構いませんけど……いないと思いますけどね」

「いや、それで構わないんだ」

 その後、朱莉と佳奈が出てくるまでなんだか居心地の悪い空気がずっと続いていた。うぅ、校長先生苦手なんだよなぁ……



―――――――



「あ~あ、せっかく綺麗にしたのにまた散らかしやがったな」

「別に、好きで散らかしたわけじゃないわ」

「……言い訳だろ、それは」

「で、何の話をしてたんだっけ」

「えっとだな……って、俺がお前に話していたんじゃなくてお前が俺に話していたんだろ」

 なんだかややこしい感じになってきたな。

「ああ、そうか……ええっと、今思い出すからね……」

 佳奈が腕組みをしている間に掃除を再開する。まったく、せっかくラックに雑誌を収納したというのにばらばらにしやがって……。

「ああ、そ、そうだったわっ」

「お、ようやく思い出したか」

「うん、えっとね……」



ぴんぽ~ん



「「………」」

 もし、神様がいるというのならきっと佳奈のことが嫌いなのだろう。


人の記憶なんて勘違いによって修正されることがままあります。多分。絶対とは言い切れませんので何もいいませんが……話は変わりますが今日は四月おバカですね。ウソをつきまくっていい日ですねぇ。大好きです。一年分のウソをつかせてもらいますよ。それでは、忙しいのでこれで失礼します。四月一日木曜、七時四十四分雨月。

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