第百六話◆真編:真による、真ラブの、真だけの話
第百六話
「やぁやぁやぁ、零一君じゃないか。おや、それと親戚の佳奈ちゃんだったかな。こんにちは。ん、そういえば佳奈ちゃんには以前もあったことがあるのかもしれないけどちゃんとした自己紹介はまだだったね。ぼくの名前は笹川真って言うんだよ。零一君のクラスメートである笹川栞の兄、言い換えればお兄ちゃん、兄貴、兄上、おにぃ、兄様、にいたん……他にもあるけどそんなところかな。そういえば、姉に対して『おねぇ』はあまりよくないそうだよ。何でかっていうとただ単純にそう呼ばれたくないそうだよ。ちょっと違う意味になってしまうと聞いたことがある。もっとも、ぼくは男だから栞の姉になることは一生無いだろうけどね。二人には兄弟がいないのかな……ああ、いないのか。なるほどね、しかし、傍から見たら君たち二人、『きょうだい』に見えなくも無いよ。え、どっちが年上に見えるかってそれは……ねぇ、ちょっとぼくの口からは言えないかな。言ってしまったらお互いに不幸になってしまうと思うよ。いや、ぼくと、君たち二人のどちらかが不幸になるって言う意味さ。佳奈ちゃん、意味がわからないのは仕方がないけど、零一君は頷いているようだから大丈夫、後で聞いてみるといいよ、彼はわかっているようだからさ。そうそう、そういえばこの前満君の妹さんに再び会ったよ。その時は偶然といっていいけど栞がいてね……零一君に是非とも見せてあげたかったよ。え、何でかって……そこでいきなり喧嘩に発展したんだよ。『兄が兄なら妹も妹だ』という言葉で栞が怒ったんだろうね。あちゃあって顔をしているようだけどぼくはほっとしたよ。一応、他の人からみたらちゃんと兄妹に見えているのだからね。てっきり、彼氏彼女に見えてしまっているのではないかという問題は杞憂に終わったようだ。喧嘩の話に戻るけど……木刀と拳の喧嘩って基本的にリーチが長い分、木刀とかの方が勝つはずなんだけどね。栞はそれを避けて戦っていたよ。相手もそうだ。うん、変な戦いで決定打をうつことが出来ないまま決着がつかなかった。お互い、悔しそうな顔をしていたところを見ると両者共々、自分は勝つことが出来ると思っていたようだね。まだまだ、修行が足りないってそこでぼくが言っていたらきっと、ぼこぼこにされていただろうね。まぁ、今思いついた言葉だからきっとあの時思っていたら言っていたと自負するよ。ああ、そういえばそのとき『あの馬鹿兄の友人の雨乃零一という人を知っていますか』と訊ねられたよ。安心してくれ、ぼくはちゃんと知っていると答えたよ。おや、なんでそんなに絶望的な顔をしているんだい。それと、満君の妹さんから言伝を預かってきているよ。『私が高校に入学したら堕落しきったその性格、きちんと直して見せます』だそうだよ。よかったね、君がこの高校にいる状態で進級したらすばらしい後輩が増えそうだよ。ほら、佳奈ちゃんも笑っているんだからそんなに暗そうな顔をしちゃ駄目だよ。え、ああ、佳奈ちゃんは満君の妹さんの名前を知っているんだね。そうかそうかぁ、なるほど、生真面目で正義感に燃えている少女だってよ。けどさぁ、結構いい子みたいだからよかったね。うん、心の底から羨ましいと思うよ。ん、代わって欲しいってそりゃ無理だよ。ぼくは『笹川真』で君は『雨乃零一』だ。君には君の道があってぼくにはぼくの道があるんだよ。それは長くて険しいものなのか、なだらかで楽しいものなのかはぼくにはわからないし、君にだってわからない。この道の果てにあるものは自分自身じゃないと確認なんて出来ない。途中で誰かと出会って道を共にするのかもしれない。さぁ、いざ行かん、己の険しき道を一生懸命走破するのだっ。なぁんて言ってみたけど正直、悩んでいるんだ。実は昨日、まちがって栞の本にコーヒーをぶちまけてしまってね。それがまた、栞のお気に入りの奴で……勿論、謝ったよ。でもね、言葉だけじゃ足りないことだって世の中にはあるんだ。うん、心の底から謝ったつもりでも相手からみたら馬鹿にしているとしか取られていなかったりするんだ。昨日は本当、典型的なその例だったよ。悪かったと頭を下げたら持っていたコーヒーが別の本にもかかってしまってね。あそこまで怒った栞を見るのは結構久しぶりなんだと思うよ。零一君に出会って結構温厚になってきたんだけどねぇ。ああ、そうかい。やっぱりクラスメート達にぼくのことを適当に話していたんだね。どういったことを話していたのかな……なるほど、『話が長い』とか『理屈っぽい』とかか……全く、ぼくの話が長いとかどこの誰が思っているのだろう。実際に話してみたらその噂が適当に流されたものだって気がついてくれるんだろうけど、人は会って話してみないとわからないものだって高校生じゃあわからないんだろうな。うん、だけどその点では零一君はぼくがどういった人間かわかってくれているよねぇ。うん、一生懸命頷かなくてもわかるよ。そうそう、佳奈ちゃんのほうもぼくのことをよろしくね。あれ、なんだか疲れているような顔をしていないかな。昨日、夜遅くに寝たりしたんじゃないの……あまり、夜更かしは駄目だよ。気をつけておいたほうがいい。おっと、もうこんな時間か……今日はちょっと用事があるから失礼させてもらうよ。じゃ、また学校のどこかであったら話でもしようじゃないか」
理屈っぽい人は嫌われますね。ええ、どうせ雨月は嫌われますよ。理屈っぽいですから。さて、ひがんだところで後書きです。作者予想キャラ投票第一位が笹川真です。彼の長話っぷりは他の人が舌を巻くはずです。慣れている人は聞き流したりしますけどね。正直、読んだ人凄いですわぁ。話は変わりますが今日は片道一時間をかけて行かなくてはいけないところに行ってまいりました。用事は五分で終了。そしてまた、一時間の片道をかけて家に帰ってきたというわけです。昼からきちんと小説の執筆をしていましたよ。ええ、あんまり進まないのは仕方ありません。ネタ切れというわけではないのです。まだまだ、先は長いので……。先日、無感の夢者さんに通称マネキンの絵を送り、アドバイスを頂いてバージョン2を書きました。最初は男マネキンでしたが後に女マネキンへと変貌していたりします。よい子の夢の中で大暴れするような外見だと自負します。勿論、うまいというわけではありませんので気をつけてください。ちなみに、絵の投稿はされていなかったりします。三月二十九日月曜、十九時十七分雨月。




