第一話◆:行方、不明
第一話
両親が行方不明の場合、他のご家庭がどのような対応をしているかは知らないのだが俺の場合は祖父母に引き取られた。まぁ、祖父母……といってもばあちゃんはすでに俺が生まれる前に他界してしまっているのでじいちゃんに引き取られたわけだ。
引き取ってくれたことは非常にありがたかったし、じいちゃんは俺に対してすごく優しかった。甘やかされたという記憶もないが優しかったという記憶だけは残っている。ただ、一つ変な癖というか、何と言うか……俺に課題を与えたのだった。その課題が全く出来なかった、やらなかったといったことでも何らペナルティはなかったのだがそれが出来ればお小遣いが上乗せというものであった。それは一週間に一度は誰か一人を追跡し、行動を観察するというもの。それが一体全体何に役に立つのかさっぱりわからなかった……だが、人間とは悲しい、そして情けないものでお小遣いに関して少し不満を持っていた俺はじいちゃんの言うとおりにその課題を実行した挙句……様々な失敗と経験を積んだおかげ……ではなく、その所為で追跡癖となってしまった。
仇名が『ストーカー』とはこれ如何に。気がつけばやつがいる……とか中学時代には言われていた。中学時代も追跡癖は治ることなく、男女問わず、幅広い年齢層の人々を追跡し続けた。住所、推定年齢、性別、一週間の夕方から帰宅するまでの時間帯どのようなことをしていたか一人一週間単位で調べ上げた。勿論、中には感が鋭い人もいて警察が張り込んでいたこともあったがその警官を追跡したこともある。そういったことをしていたので友達はあまり出来なかったし、部活にも入っていなかった。振り返ってみればあまりいい中学時代を送っていなかったんじゃないかなぁ、そう思える。そして、平々凡々な高校へと進学。知り合いだが、友達じゃない連中が入学式には周りにぞろぞろいるというそんな状況だった。
それともう一つ、俺の生活に変化があった。高校に入ってすぐに今度はじいちゃんが行方不明になったのだ。俺がそれに気がついたのは家に帰ってきて、三十分ほど経ったころだったろうか……夕飯が出来たとじいちゃんに告げにいくと部屋の机の上に『Good Luck』と書き記されたメモが置かれていたのである。
最初はあほらしいと思いつつも無視していた結果、一日経っても二日経ってもじいちゃんが帰ってくることは無かった。そして俺は今、親戚の家にいる。ちょっと途中を端折りすぎてしまったな……
変な話だが一週間後に親戚会議が行われ、妙にみんなが納得していたのだ。失踪届けを出したのが三日目のことだ。
「あの人、失踪するって手紙も出していたからねぇ」
そう語ってくれたのは親戚の中でもとりわけ噂とかが大好きなおばさんの話。ちなみに、この人は静岡に住んでいる。元から変な人だったからなぁ、以前も問題を起こしていたしとあまりじいちゃんに関してはいい印象が出なかったりする。相当な変わり者だったということを知ることが出来た。俺から見たらちょっとへんなところはあったが優しいじいちゃんだったことには変わりない。ともかく、周りは迷惑をかけている老人だと捉えていたらしい。
そういった経緯もあってか警察は微妙な反応だった。一応、探しておくとやる気なさそうに言われた。ともかく、今はため息をつくしかない。そして、俺の身は先ほども言ったとおり親戚の家にある。
居候という形で置かせてもらっているがさっさと何処かで独り暮らしをしたいなぁ、それが俺の本音だ。与えられた部屋で背伸びをしてもここは自分の家ではないと当然考えてしまうし、何かと遠慮や礼儀をわきまえねばならない。まぁ、白のお飯を食べさせてくれているので文句は言えない立場だが。
結局、高校も県が変わってしまった挙句、かなり遠くなってしまったので通学時間でお昼を過ぎるだろうという事態に陥った。勿論、転校することになった。転校といっても簡単なものではなく、なにやら書類に色々と書き込んだり編入試験まで受けねばならなくなった。これがまた、難しくて面倒で、それを失敗したら一気にフリーターなのだ。何とか合格できてよかったが……此処だけの話、高校に受かったときよりも嬉しかった。
ため息をついたら幸せが逃げるというけど、つきたくなる環境にいるために仕方がないということでどうか、見逃して欲しい。
こうして、俺の高校生活は五月からという微妙な時期から始まったのである。
第一話目から早速後書きではたわごとを述べます。後書きを読んだ気分悪くなって反復横とびをしたくなるほどのものを書いておきますね。読んだ後に『ああ、まだタンスの角で小指を打ったほうがましだった』なぁんて、言わないでくださいよ……最近、あれですね。時代劇というか、歴史関係の武将とかが流行ですね。人の創作にいちいち突っ込んでいたら趣味が悪すぎですが突っ込まずにはいられませんっ!突っ込ませてくださいっ!!武将の名前使いまわしすぎで、かつ、そういった作品ものを見たり聞いたり読んだりしている方……名前一つで複数の人物を思い出すようじゃ駄目ですよ。まぁ、ここで言っていても誰も読んでいないでしょうし。大丈夫ですね。可能な限り更新していきますのでよろしくお願いします。二千十年一月三十一日日曜、十九時四十六分雨月。