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第漆話 違和感

「ごめんなさいね。結局、協会に戻る事になって。息子も直ぐに来てくれるって言うから私は此処で待ってるわ。心配しないで、あの鳥居の事は誰にも言わないから。貴方達が思っている以上に話が大きくなってるという事よね?」


鳥居の前でタスクが体調を崩した事により、兄妹は彼女を医務室に運ぶ為、協会へと戻る事にした。

側には黄泉の姿もあり、その話を興味深げに聞いているようだった。


「つまり、隼君は毎度真夜中に何処かへ行っているという事か。そんな話、僕は聞いた事すらないけどね。愛君から報告を受けた事もないし。勿論、山岸君達からもだ」


「分かりませんよ?確か水行川にある鳥居も巧妙に隠されていたと聞いています。私達の家の近くも竹林で上手く隠されている。それに真夜中に運び屋がいるのは異様な事ではないでしょう。何かの緊急事態や協会に報告に来たと考える方が普通です」


「今、日常的に夜間業務をしてるのは朝日奈兄妹ぐらいだし目撃者なんて無いに等しい。...ねぇ、もしかして全員グルっていう可能性ない?例えば、隼さんだけじゃなくて山岸さんとかも同じように真夜中に鳥居に入っていたら?同じように黙っている可能性あるよね?」


実梨の言葉に3人は背筋を凍らせる。

タスクに至っては何か思い詰めているようだった。


「私がもっと息子の事を理解して側にいてあげてたらこんな事にはならなかったのに。この町だけじゃなくてもっと違う事に巻き込まれているって事でしょう?仮に息子が何か隠し事をしてたとしても私が聞き出せるかどうか?」


そんなおり、廊下の方から駆け足でこちらへと向かってくる足音がする。

バッと扉が開かれると息を切らしながら隼が入ってきた。


「母さん、無事で良かった。げほっ、体調崩して倒れたって聞いたから」


そのあと、隼は成田兄妹の方を一瞬睨んでいるように見えた。

無理もない。自分の母親が同業者とは言え良く知らない相手に連れ回され、体調を崩したというのだから。

阿闍梨としては手がかりを持っているであろう隼に色々と話を聞きたいのだがこれ以上は無理そうだ。


「ありがとう、心配してくれて。今日は素直に家に戻るわ。久しぶりに協会に来て母さんも気疲れしちゃったみたい。じゃあ、お2人とも今日はありがとう。またお礼の手紙を送るわ」


タスクがそう返事をすると隼はホッとしているようだ。

彼女なりに両者の気持ちに寄り添い言葉を選んでくれたのだろう。

隼は出来るだけ母親と兄妹を接触させたくないようだ。

母親である彼女はそれを感じとり、手紙という形で再度兄妹に対して協力をしてくれるという事になるだろう。

タスクとの手紙でのやりとりが重要な情報源となりそうだ。


親子が帰った後、阿闍梨はホッと胸を撫で下ろした。


「流石は現役最強の運び屋。警戒心が強いですね。お母様の事になれば尚更かと思いますが」


「でもお兄ちゃん、これは立派な前進だよ。なんせタスクさんが味方についてくれたんだから。...えっと、Dr.黄泉は?」


「僕かい?僕はあくまでも中立の立場だよ。正直、先程のやり取りを見ていて君達兄妹もだが隼君も怪しく見えて来たからね。まぁ、運び屋は今も尚神秘のベールに包まれている人種だ。何があってもおかしくないと思うけどね」


「では後はマダムからの報告待ちと致しましょうか。ですが私も動かなければなりませんね。あのお2人であれば比較的に私にも親身になってくれる...はず。いけませんね。全員が敵に見えてしまう。何処まで話した物か」


そのあと、まず最初に阿闍梨は角筈に行く事にした。

ある人物が1人な時を狙い。路地裏へと誘い込んだ。


「どうした、阿闍梨?そんな神妙な顔して」


「しっ、静かに!朱鷺田さんや谷川さんに聞かれては不味いのです」


そう言われ旭は首を傾げながら訝しげに彼を見ていた。

阿闍梨が狙いを定めたのは一度は組織を抜けた経験のある旭と青葉だった。

この2人であれば客観的に他のメンバーをみる事も出来るし、その1人である旭は親しい仲でもある。

なんとか2人から他メンバーの情報を抜き取りたいというのが彼の考えだった。


今の旭の服装は煌びやかな町は勿論、世闇に溶け込むような服装をしている。

煌びやかな純金のネックレスやブレスレットは健在だが、黒いニット帽や空色のジャンバー、銅色のインナーなど以前の白や緑を貴重とした服装とは異なっている。


「実はご相談がありまして。あの、見間違いでなければいいのですが私の知り合いが夢遊病のように真夜中に無断で外に出ているようなんです。身内の話なので出来る限り話す人を選びたくてですね。もしかしたら旭さん達の担当場所にもいるのではないかと気がかりで」


遠回しに、隼の事を言い。尚且つ、旭にも協力を仰げないか心理戦に持ち込んでいるようである。

旭は二度うなづいた後、考えながらこう言った。


「それは大変だな。言ってしまえば、阿闍梨の祖父母が認知症で勝手に外に出てるって事だろう?あぁ、言ったらダメなんだっけか」


「いいえ、そのような解釈で構いません。デリケートな話題なのでどうしても言いにくくて、ですが私や妹でもどうにもならず。てんてこ舞いなのです」


なんとか阿闍梨の中でも解答の範囲内に収まる答えが旭から出て来たようである。

夢遊病という単語に何か反応するかどうか知りたかったのだが旭の思考は良くある解釈、一般的な思考のようだ。

しかし、再度首を傾げ何か考え混んでいるようだった。


「...なぁ、阿闍梨。もしかしてその“知り合い”って俺の事か?この際だ、2人きりなんだし隠し事は無しだ。で、どうなんだ?」


突然言われた文言に阿闍梨は目を丸くする。

いや、言われて見ればそうなのだ。

阿闍梨本人でさえ、自分が夢遊病に苛まれている事は自覚している。

旭もまた知りたいのだろう。自身が置かれている状況に対して、何か出来ないかと。


「...いいえ、正確には貴方の事ではないのです。言えるのは同業者という事だけ。...いいえ違う。これではフェアな関係ではありませんね。正直に言います。私は貴方達運び屋を疑っている。何か隠している事があるのかもしれないと勘繰っているのです。ですが、旭さん。貴方は一度組織を抜けた身だ。比較的警戒する必要がないのではないか?というのが私の考えなのです」


旭はその場で腕を組み、下を見つめ熟考しているようだ。

しかし、阿闍梨の言葉は受け入れているようで噛み締めるように何度も頷いていた。


「じゃあ、俺から出せそうな情報を言おう。数年前からだな、違和感に気づいたのは。トッキーと同居し始めた時にさ、夜中に怖い夢を見たって泣きじゃくっていたんだ。で、俺はあいつの部屋に行って安心出来るまで側にいる事が多かったんだ」


「旭さんは素敵な彼氏ですね。私は抱き枕で毎夜涙を流しているというのに」


その返答に旭は苦笑いしながらも話を続けた。


「問題はそのあとだ。時々さ、あいつの寝顔を見て安心したのかそのまま寝落ちする事があってさ。そしたら、どうなっていると思う?」


突然の質問に阿闍梨は顔を赤らめ興奮した様子で返答した。


「それはもう、勇者的に言うと昨夜はお楽しみでしたね展開に間違いないでしょう。...もしかしてそうはならなかったという事ですか?」


「あぁ、俺も最初寝ぼけながら自分の部屋に戻ったのかと思ったんだ。でも可笑しいんだよ、何度も同じ状況に遭ったとしても必ず自室の部屋で床に就いている。まるで夜中に自分の身体が勝手に動いたみたいにな」


「それをお2人に話した事は?」


「いや、ない。仮にそうだったとしても身体に何か異変がある訳じゃないしな。それ以上に証拠もない。だから阿闍梨も困ってるんだろ?そうじゃないのか?」


そのあと、一瞬阿闍梨は自分の枕元にあった地図を彼に見せようとしたが旭の無線機が鳴り、会話を中断させざるを得なかった。


「トッキーからだ、そろそろ戻らないとな。その調子だと他の所にもちょっかい出しに行くんだろ?また後日地下で話をしよう。あの秘密基地、便利が良いからな」


「わかりました。私としては青葉さんとも接触をはかりたいと考えていまして。ですが、お互い面識がなく。貴方が仲介役となってくれればこれ以上にありがたい話はないのですが」


「青葉か。じゃあ、彼女にも声をかけておくよ。あぁ、また無線が。トッキーの鬼電は凄いからな。俺が向こうにかける暇すらないもんな」


そのあと、旭は慌てながらも朱鷺田の方へと向かって行った。

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