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第参拾陸話 カーテン

「すげぇ!白鷹だ!本物!?」


「...そうだけど。いや、ちょっとどうなってるのこれ」


いつも、希輝の後ろに隠れている彼だが今回ばかりは様子が異なるようだ。

彼の周りには人だかりが溢れており、目を輝かせる子供も多い。


その周囲の反応に対し、彼は嬉しさと同時に恐怖心もあった。彼にはいつも思う事があるらしい。

物事は全て結果論でしかなく、人が評価するのは過程でなく結果だと。

だからいつも、テストで満点を取れたとしても通知表の評価が良かったとしても喜ぶ事など出来なかった。


そんな彼を見て、両親は心配しながらも見守っていたようだ。

いつか、自分達のように医療系の大学や職業に進むのだと言い聞かせずとも分かっていたからだ。

しかし、希輝や剣城に出会ってからは時折寄り道をしたりアイスを買い食いする年相応の姿を見て安心感を覚えていたという。

それほどまでに白鷹は完璧過ぎた存在という事なのだろう。



「帝国一の最強の運び屋と言ったらやっぱり白鷹さんでしょ!」


話を戻し、そんな人混みをかき分けて希輝が白鷹の元へと辿り着く。

結果ではなく、過程を。自分達の着々とした成長を共に歩める仲間達に出会えた事が彼の財産となっていた。

ヘトヘトになりながらも、自分の事を心配してくれた希輝に対し感謝の念を抱いていた。


「助かった。希輝、剣城と浅間先輩は?」


「ごめん、アタシの行動範囲じゃ無理だ。比良坂町の容量でやったら絶対に合流出来ない。白鷹ともようやく尾山で合流出来ただけだし。担当場所が違いすぎる。多分、朱鷺田さんや谷川さんと合流する方が簡単かもしれない」


「...そうだね。ちょっと、違う手段でやらないと厳しいかも。ここじゃ、無線機も意味をなさないし。そもそもないしね。希輝、一緒に来てもらえる?出来るだけ帝都の近くまで移動出来るようにはするから」


「ありがとう、白鷹。助かるよ。はぁ、旭さんもいてくれれば頼りになるのに。今回も全然見つからないよ」


そのあと白鷹達は温泉地へと足を運んだ。

此処までが一番帝都まで距離を縮められる場所である。

2人にとっては見慣れない土地、戸惑いながらも歩を進めるとある人物を見つけた。


「朱鷺田さん!?良かった、ご無事だったんですね」


彼を見つけ、2人は安心した様子で其方に駆け寄った。

そのあと朱鷺田は白山がくれた情報や自身が合流した仲間について話している。


「浅間の相方が教えてくれたんだ。尾山に見慣れない運び屋がいるって。剣城とも明け方だが越後で連携が取れた、夜勤の運び屋になってて驚いていたぞ。しかも、範囲も広大だし尾山や藤居山にも印がないからお前達より、俺や隼達と合流する方が簡単だったらしいな」


「やっぱりか、通りで会えない筈だ。でも、浅間先輩に相方がいるって面白いかも。ずっとソロでやってるイメージがあったから。どうなんだろう?これで粗方皆んな誰かと接触は出来てるのかな?」


「今夜、全国に散らばってる仲間達を協会に集めるそうだ。夜勤者がいるからな。それに合わせる。だとしても、旭もそうだが望海や夢野さんの行方が分かっていない。どうなってるんだ?」


その言葉に2人は集会を開く事に驚いたというより、朱鷺田が光莉の事を“夢野さん”と呼んでいる事に反応しているようだった。


「えっ、朱鷺田さんって。光莉と仲悪いの?凄い意外なんだけど。2人ともキャリア長いし、今も堂々としてるのに」


「希輝達は若手だから知らないかもしれないが、当時の夢野さんは本当に凄いというか。めちゃくちゃ怖かったぞ。旭も怯えるぐらいだしな。望海が加入してようやく落ち着いたって感じだったからな。それ以上に俺も昔は旭にべったりで影に隠れて守られてたって感じだったし」


「...じゃあ、今の朱鷺田さんって結構最近出来た感じなのか。全然、そんな感じしないけどな。俺の中の光莉って結構親しみ易い存在だし」


「そうだよね、アタシも望海と一緒にいるの好きだし尊敬してるんだ。剣城も児玉さんをリスペクトしてるっていつも言ってるし」


「凄いなお前達。そう言えば、小坂で一緒に仕事してるって言ってたもんな。こうなるのも必然か。そうだ、ちょっと気になる場所があってな。夜まで時間があるし、付いてきてもらえないか?」


希輝と白鷹は首を傾げながらも朱鷺田に付いて行くことにした。

場所は越後の海岸、朱鷺田の指差す方向に奇妙な物があった。


「俺の中ではオーロラに似てると思ったんだが、あまりにも近すぎる。というか“カーテン”のように空間を仕切ってるように見えるんだ」


「「....」」


唖然とする2人の目線の先には不気味にも炎が上がったかのような赤いオーロラのような物が降りていた。

ただそれは天上にある物ではなく3人の目の前、水平線の手前に存在していた。


「ねぇ、これさ。アタシ達、閉じ込められたんじゃない?この帝国に。壁の次はカーテンと来たか。これはまた厄介な」


「...朱鷺田さん、これって多分。こっち側だけだよね?こっちは所謂、西海岸側。東海岸は見てないの?」


「俺も忍岡までしか行けないからな。東海岸までは行けないんだ。ただ、帝都は人が集まる。噂話も聞こえるだろう。その中でカーテンの話を耳にする事もあるんだか、いずれも西海岸のみだ」


その言葉に希輝が何かに気づいたのか、水平線の向こう側をジッと見ていた。


「多分これ、このカーテンの向こう側に何かあるんだよ。じゃないとこんな事をする理由がない。比良坂町と一緒だ。“何かあるから”隠そうとするんだよ。何か不都合な事があるんじゃないかな?」


「だろうね。希輝の意見に同意する。この事は夜の会議で共有すべきだね。ただ、何となく僕達がここに連れて来られた理由が分かる気がする」


「そうだな。比良坂町の鎖国を解いたのは紛れもなく俺達だ。その経験がここでも活かされてる。ただ、このカーテンは見かけ以上に比良坂町の壁より分厚いぞ。...旭、こういう時。なんでお前がいないんだよ」


その時だった、希輝が何かに気づいたのか慌てて朱鷺田の両肩を両手で掴んだ。


「...朱鷺田さん。今、何て言ったの?」


「いや、だから。旭がいてくれれば、頼もしいのになって」


その言葉に白鷹も気づいたのか、カーテンをジッと見ている。


「...もしかして、旭さんは向こう側にいるってこと?」


「有り得ない話じゃない。と言うか、望海も会議の前に体調崩してたし。朱鷺田さんが会議を離れた後、光莉が1番に倒れた。あの3人って1番最初に倒れたのに何で帝国にいないの?それ自体が可笑しいんだよ。やっぱりこれ、何かあるな」


そのあと、朱鷺田は悲しげな表情をしながらもジッとそのカーテンを見つめていた。

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