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第参拾伍話 盗み聞き

「良かった、尾山は今日は晴れみたい」


そう言う白山の眺める空はどんよりとした曇り空だった。

彼女の感覚では雨が降らなければ、全て晴れという価値観なのだろう。

尾山は帝国でも比良坂町でも共通して、雨の日が多いようだ。


しかし、そんな曇り空の下に映える華やかな着物を着る人々がいる事も確かだ。

工芸品も多く、それに関わる職人が多いのもこの場所だ。

名産の金箔や漆塗りはこの湿度と相性が良く、空は薄暗くとも此処は華やかで美しい。


そんな中で彼女は騒がしい声を聞く事になる。


「まってよ!ほんとうにここにきてるの!?」


「うそじゃないって!ほかのやつらもみたっていってるんだ!はやくしないと、はくたかにあえなくなるぞ!」


「...はくたか?そんな名前の奴、尾山にいたかな?」


懸命に走る子供達の声を聞くとまるでヒーローのような扱いを受けている事が想像付く。

メモを確認すると、探している仲間の1人に白鷹蓮夜という人物がいる事に気づいたようだ。


「白い髪に赤い瞳。頭脳、身体能力ともに優れた青年。しかし、本人は大人しく。まさに能ある鷹は爪を隠すという言葉に相応しい。...行ってみるか」


子供達を追うように向かうと、まるで人の壁が出来ているようだった。

皆、揃って「白鷹は何処!?」と声を荒げているようにもみえる。これには彼女も驚くのを通り越して絶句していた。


「浅間の後輩、どう考えても可笑しいだろう!?これは本人の所にたどり着くのは無理そうだな。他の子達を探すか」


そんな時、群衆の声の中に混じり派手な容姿の少女が大声で叫んでいるようだった。


「すみません、通して下さい!仲間がいるんです!!白鷹、そこにいるの!?」


その正体は希輝であり、白山とは人混みを挟んで向こう側の道にいるようだ。

対面は出来なくとも、2人の居場所は分かった所で白山は一歩引いた所で再度メモをみていた。


「後は、剣城っていう青年か。この人混みじゃ、合流は無理だな。少し時間を置いてからじゃないと、他の場所に仲間がいないかどうか先に調べにいくか」


彼女が移動でき、人が集まる場所と言えば、和田、氷川、忍岡辺りだろう。そこを中心に探索すると和田にて希輝と同じく派手な容姿の人物を見つけた。


「まぁ、ときちゃん。ありがとう。貴方がいてくれて助かったわ」


「どういたしまして、帰り道どうかお気をつけて」


依頼人なのだろう、老婆の背を見送る朱鷺田の姿があった。

あのあと、なんとか他のメンバーと合流し運び屋としての仕事を行っていたようだ。

そのあと、笑顔が消え。何か思い詰めた表情をしている最中に白山に話しかけられ、驚いたのか一瞬。

心臓と身体が跳ね上がったようだ。


「な、何か?」


「ねぇ、君。突然だけど、浅間遥名を知らない?君の仲間じゃないか?」


「浅間!?その名前を何処で...貴女、彼女の知り合いか?」


「そう、此処では相方をやらせてもらってる。師弟関係と言っても良いだろうけど。浅間から後輩3人と他の仲間がいたら探して欲しいと頼まれてる。協力してくれないかな?」


「それは勿論、此方としても協力するが。ちょっと俺も気になる事があってな。他にも見つけられてない仲間がいるし、とりあえず情報交換だけさせてくれ」


そのあと、白山は朱鷺田に尾山に2人がいる事を教えた。

彼女は臼井坂まで戻り、その事を浅間に報告した。

すると、浅間はホッと胸を撫で下ろしているようだった。


「良かった。とりあえず、2人は尾山にいるんですね。それに朱鷺田さんまで。本当にありがとうございました」


「浅間の後輩君?凄い人気者で驚いたよ。比良坂町でもあんな感じなの?」


「いいえ、学校内での事は私もわかりませんけど。本人が目立ちたくないと言う性格で。家柄が代々、薬局を営んだり製薬会社の研究員をされているみたいで。親族も医療関係者が多いようです。希輝ちゃんが剣城君と一緒に彼のお宅に遊びに行った時。あまりにも大きいというか、部屋数の多さに驚いたらしくて。本人はこれが普通だって言ってたそうですけどね」


「生まれながらのエリートって事か。あの派手な子は?あんまり想像出来ないけどな」


「希輝ちゃんの祖父母は和菓子家さんを営んでて、良くお手伝いに行っているみたいですよ。結構、古風な趣味も持ってて。でも、幼い頃からこんにゃくとダルマが苦手みたいで。店前に飾ってあるダルマを可愛い顔に変えようとしたりとか、色々と工夫を凝らした話は聞いた事があります」


「確かに、あのカッと見開いた目とか太い髭とかは苦手な子もいるだろうね。最後に剣城は?何かある?」


そう言われると浅間は首を傾げてしまう。

考え事をしているようだが、言葉に詰まっているようだ。


「何?まさか、此処に来て何もないとか言わないよね?」


「いいえ、そうじゃなくて。本人の気持ちを尊重した方が良いのかなと思っちゃって。剣城君、何か隠し事をしているみたいで。というより、私偶然知ってしまったんですよね。ご家族の事。彼、時より電話している事があって。その中に「お祖母様」という単語が聞こえて来た事が何度かあって」


「じゃあ、その剣城の家っていうのはそのお祖母様って人が家を指揮ってるって事?偉大な人には変わりないんだろうけど」


「ただ、本人は一般家庭だって言ってるんですよね。それで気になって調べて見たんですけど、そのお婆様はその業界では女帝とも評される敏腕女社長のようで。母方なので苗字は違えど、孫にあたるんですよね。彼は。そんな中で彼は恐竜を好きになったキッカケを教えてくれたんです。多忙でラジオやテレビ出演も多い中で時間を割いて、誕生日に恐竜博物館に連れて行ってもらった事が思い出に残ってるって」


「...浅間、さてはその言い方だと剣城に調べてた事バレてるな」


そう言われると、彼女はその時の事を思い出し諦めたように軽く笑っているようだった。


「賢い後輩を持つと、先輩は大変なんですよ。なので毎年、誕生日が近くなると彼の為にお祖母様がホテルを丸ごと貸し切って彼の為にパーティーを開くんですって。友達も連れていらっしゃいと言うんですけど。彼は断ったそうです。パーティーにもいかないと。その代わりに「俺は貴女を超える」と挑戦状を贈ったそうです」


「家の力には頼らず、自分の力で事を成し遂げたいっていうのが彼の気持ちって事だね。そうか、今の比良坂町にはそんな子達が運び屋をしてるのか。そして浅間の力になってくれている。...なんとなく、私が此処に来た理由が分かったような気がするな」


最後は呟きながらお茶を飲む彼女を見て、浅間は思い詰めた表情をした。

《解説》

剣城のお婆様はなんか素敵な派手な帽子を身につけていそうですね(小並感)

一応、3人の情報は北陸三県に合わせているのでご紹介したいと思います。


・白鷹が薬学部志望や両親が薬剤師なのは「富山の薬売り」からの発想で江戸時代から富山では薬は勿論なんですがそれを入れるガラス製品の製造も盛んに行われていたそうです。

・家が広いと言われていましたが、住宅の一つあたりの規模が都道府県の中で一番広いのが富山県だそうです。

他にも福井や山形など日本海側に偏っているそうですね。


・希輝がこんにゃくやダルマが苦手なのはかがやきの通過駅である高崎に由来します。

高崎はダルマの名産地で、お土産としても沢山売られています。

金沢を連想させる物として可愛らしい顔をしたダルマ、正式には加賀八幡起き上がりという工芸品があって。

金沢駅に行くと、それをモチーフにしたマスコットキャラの「ひゃくまんさん」が飾られています。


・作者、ドーミーイン派閥の人間なのでアパホテルをあまり利用しないんですよね。でも、やっぱり有名ですよね。

会長が石川県、社長が福井県のそれぞれご出身で初めての店舗が金沢とまさに北陸発祥のホテルです。

福井県は社長輩出率が全国でも長年トップに君臨しています。

なんか、剣城も将来は社長になると当たり前のように言っていそうですね。リアル年齢が9歳なのもあって簡単に想像がつきます。

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