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第拾漆話 相棒

前回から投稿間隔が短いので大丈夫かな?と思ったんですが、先程ニュースで「はやぶさ」「こまち」の連結部分が運転中に外れてしまい運転見合わせをしているということで今回の投稿内容があまりにもリンクしすぎててですね。お焚き上げレベルだったので、早めに投稿させて頂きたいと思います。

6章はほぼ完成しておりますが、細かい調整や話のストックを貯めたり、続編の制作もしたいと言う事で来月に投稿出来るようにさせていただきますのでご理解とご協力をお願いします。二重の意味で危機だぞこれは。

皆様の無事と運転が早急に再開できます事を心から願っております。

「...お...。お...い。おい!目を覚せ!聞こえるか、青年!?」


雨音のする路地裏、そんな中で壁に(もた)れ掛かるように寝ていた隼は目の前の女性の声を聞き、目を覚ました。

周囲の雨の匂いとゴミの匂いに混じり、桜の匂いがするのだから彼は混乱した。


「酔っ払いか?いや、それにしては若すぎるな。家出の可能性もあるか。いずれにせよ、親元に返さなければ」


「...貴女、誰だ?」


近くでブツブツと呟く彼女に声をかけると相手は此方を振り返った。

一瞬、何処となく望海に見えるなと隼は思ったようだが良く見れば異なる所も多い。


男装にも似た、青の羽織と袴姿に腰には刀を差し女性剣士という言葉が似合うだろう。

黒髪を一つにまとめ、頭の天辺には桜を模した髪飾りが付随している。

それに加え、彼女の瞳はまるで炎のように燃え上がっているように見えた。


「良かった、目を覚ましたか。私は運び屋をしている者だ、名は富士宮咲耶。この青い羽織がその証拠だ。安心してほしい。そうだ、灯りをつけよう」


富士宮は懐からマッチを取り出し青を背景に山模様が描かれた紙灯籠が宙に浮かぶ。


「あ...えっと此処は?」


「豊前だが君は此処の人間ではないのか?確かに見慣れない顔だが、誰かと一緒に来たのか?」


豊前という地名を聞き、隼は驚愕した。

何故なら比良坂町において肆区に相当する場所だからだ。

以前、赤間からの地下通路を見つけ亘が辿り着いた場所でもある。


それに自分は今まで協会におり、会議に参加していたはず。

なのに何故、此処にいるのか分からなかった。

しかも周囲に知り合いがいない事あり、不安に駆られ子供のように縮こまってしまった。


「いや...俺。さっきまで全然違う場所にいて...。豊前って昔住んでいた所の近くだったはず。でも俺、何も知らなくて」


「誘拐?記憶喪失の類いか?青年、自分の名前は言えるか?」


「...松浪隼。富士宮さん、貴方は俺の味方だよね?」


「勿論、運び屋は市民の味方だ。松浪か...たしか碩田(おおきた)にも同じ苗字の者がチラホラいたな。実は私の家もそこにあってな。急な事で済まないが家で君の身分を調べたい。その間、衣住食は保証しよう。どうかな?」


隼は少し考えているようだが、まず同業者であるのならば僅かながらに安心出来るだろう。

それ以上に自分の担当範囲外に来てしまったのであれば自力で移動する事も困難だろう。

今は彼女に協力を仰ぐ事が先決だと考えたようだ。


「咲耶お嬢様、お帰りなさいませ。其方の方は?」


「豊前で倒れていた者だ。記憶が混濁しているようでな。彼に食事と衣服を。私は調べ物をする」


「かしこまりました」


流石は名門富士宮家、この世界にも立派な長屋を持ち咲耶はその家主であるようだ。

隼は手伝いに案内され、着替えをし食事をしながら富士宮の話を聞いていた。


「なんだが懐かしい味がする。山岸先輩の弁当の方が美味しいけど」


「山岸?それはまさか山岸寿彦の事か?何故君がその名を知っている?彼は此処の人間じゃないだろう」


その富士宮の発言に隼は違和感を覚えた。

一体隼の居る“此処”というのは何処の事を指しているのだろうか?


「もしかして、俺。本当に別の場所飛ばされたのか?富士宮さん、此処はまさか比良坂町じゃないのか?」


そう言われ、富士宮は深い溜息をついた。

そのあと、隼を見つめ悲しげな表情を浮かべている。


「まさか君のような若者まで巻き込まれるとはな。そうか、君は比良坂町の人間か。なら申し訳ない。此処から現実世界に戻る方法が分からない以上、君を送り返す事は出来ない。確か、君の言う山岸は壱区の運び屋だな。では、君は壱区の人間なのか。それか...」


「豊前なら俺も知っている。比良坂町の肆区に同じ地名があるんだ。俺は両親の仕事の都合で肆区から壱区に引っ越した。だから幼少期はそこにいたし、縁がない訳じゃない。此処に訪れたのも何か理由があるのかも」


富士宮は側にあった高級な箱に入った絵巻物を広げる。

その正体は島々が連なったこの場所の地図のようだった。

しかし、輪郭は曖昧であり土地の区域も曖昧で不完全と言わざるを得なかった。


「申し訳ない。富士宮家であってもこの場所を正確に把握する事は困難だ。地図も貴重でね。これでさえ、購入するのに苦労したものだ。それともう一つ、君は山岸の事を“先輩”と呼ぶんだな。君は彼の弟子なのか?」


「山岸先輩は組織のリーダーで、実際に教えを受けたのは別の人だ。山岸先輩本人が年が近い人の方がいいっていう考えがあって、でも彼からも沢山の事を教えてもらった。俺が組織のエースとしていられるのはチームメンバーのおかげ」


“エース”その言葉に富士宮は驚愕した。

山岸とて、仕事熱心で優秀な運び屋だ。

そんな彼がエースの座をそう簡単に差し出すとは思えない。

目の前にいる彼はそれ相当に特別な存在である事が分かった。


「なるほど。だが、山岸の所には颯という青年もいただろう。それは風の噂で聞いた事があるんだ。君に教えを説いてくれたのが颯という青年であるのであれば、かなりの年月が過ぎ去ってるという事になってしまうな。正直言って、私がこの世界に来てから1週間程だと記憶している。だが現実では...」


「もう何年も月日が流れてしまっていると言う事か。厄介だな」

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