8/12
お父さんとジョウシ
こんな話を聞いた。
同僚のSが小さかった頃の話だ。
「大変な仕事があるからお父さんをしばらく借りるね」
Sにそう告げたのは、Sの父親とたまに顔を会わせている〈ジョウシ〉という男だった。
ジョウシはSの父親に厳しく、会う度に怒鳴りつけていたが、Sに対してはいつも優しかった。
「Sくん、ドラえもんとカオナシ、どっちがいい?」
DVDでも買ってくれるのかと思ったSは、嬉々として「ドラえもん!」と答えた。
1ヶ月後に帰ってきた父親の手を見ると、そこには親指しかなかった。
いや確かにたまに親指あるけども!