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怪談師・六勝喜太郎①

 みなさんこんにちは。怪談師の六勝(むかつ) 喜太郎(きたろう)と申します。


 今日はみなさんにある人形のお話をしたいと思いましてね、参上した次第でございます。


 あれは確か半年ほど前のこと。

 友人の女性が可愛らしい西洋人形をくれましてね、その時私はとても喜びました。


 でも、その人形を貰ってから不幸なことが起こるようになったんです。


 まず、私の髪が全て抜けました。


 それまではラーメンマンと同じような弁髪(べんぱつ)だったんですけどね、一夜にしてゴッソリ抜けたんですよ。


 次に私の母親でした。


 人形が家に来てから3日後、母が突然爆発したんです。

 まるで戦隊モノのヒーローに倒された怪獣のようにドカンと、本当にいきなり爆発したんです。


 目の前で母を失った私はおかしくなりました。おかしくなって叫び狂いました。


 んでその3日後くらいに正常に戻ったんですけど、その日にまた事件が起きたんです。


 妻が家に男を連れ込んでいたんです。


 その日もいつものように仕事に行ってくると嘘をついて公園のブランコに向かってたんですけどね、ふと胸騒ぎがして帰ってみたら、ちょうど妻と間男が致している最中だったんです。


「絶対にバレないと思ったのに! 絶対に絶対にバレないと思ったのにぃ!」


 妻は謝るどころか、自身の不倫隠しの自信を叫ぶばかりで、男のほうも


「絶対にバレないと思いました。天地がひっくり返ってもバレない自信がありましたし、そのようにやっておりました」


 などと言うばかりで悪びれる様子は一切ありませんでした。


 ここで気づきました。これはさすがにおかしいと。

 あの人形をもらってから立て続けに不幸なことが起こっていると、その時気がついたんです。


 私はすぐに人形を押し入れの奥深くにしまいました。


 しかし、翌朝起きて居間に行くとあの人形がちょこんと座っていたんです。なにごともなかったかのように、そこに座っているんです。


 ならばと思い、私は人形を持って環境センターに行きました。ここに捨ててすぐに燃やしてもらうのです。


 係の人に400円を支払って燃やして、帰りに同じ値段の牛丼を食べて帰りました。


 家に着くと、あの人形が居間に座っていました。燃やされたはずのあの人形が。


 私はちゃんと見ました。この人形が燃やされるところをはっきり見届けて、それから帰ってきたのです。


 なのにこの人形は昨日と同じ顔をして、なにごともなかったかのように、平気の平左(へいざ)でそこにいるのです。


 私はムカつきました。


 こうなったら私が物理的に破壊するしかない!


 そう思いハサミを手に取り、西洋人形の服を切り刻みました。少し胸がふっくらしていたのでちょっとだけピコーンしてしまいました。


 次に工具箱からハンマーを取り出し、力いっぱい人形を殴りました。頭から足の先まで、手の先まで、ぺっちゃんぺっちゃんのもんじゃもんじゃになるまで叩きました。


 粉々になった人形をゴミ袋に入れていると、身体の中から紙が出てきました。


 お札でした。


 私はすぐに人形をくれた友人に電話しました。すると彼女は、


「あなたが不幸になればいいと思った」


 と言いました。


「なんでそんなことするんだ! 君のせいで僕は散々な目に遭ったんだぞ!」


 私は我を忘れて怒鳴り散らしました。


「それはこっちのセリフよ! あれだけ私を抱いておいて、結婚してくれるって言っておいて、全然奥さんと別れてくれなかったじゃないの!」


 彼女は彼女で怒鳴っています。


「うるせー! 死ねー! バーカ!」


 私はそう言って電話を切りました。


 不倫相手の女から人形なんてもらうんじゃなかったと心底後悔しました。


 その後私はお札と粉々になった人形を寺に持って行って供養してもらいました。


 すると不思議なことに身体が軽くなり、なくなったはずの髪の毛がどこからか私の頭に戻ってきて、母も生き返り、人形をくれた女性と、妻の不倫相手が死にました。


 やっぱり神様は正しいものの味方なんだなと、しみじみ思いましたね。


 さて、今日のお話はここまでです。またお会いしましょう。それではごきげんよう。

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