表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

レムリア番外編 ~死の商人たちのクリスマス~

作者: 墨崎游弥

トイフェル・カナリス

カナリス・ルートのボス。堅物に見られがちだが意外とそうでもない。


八幡昴

弟が大好き。


リュカ・マルロー

女装男子。頭がいい。


クラウディオ・プッチーニ

悪ノリお兄さん。


モーゼス・クロル

モラハラ野郎。


林麗華

トイフェルが大好きなクレバー戦闘狂。


ヨーラン・オールソン

半分死んでいるイケメン。


アポロ・デュカキス

絶対に事故らないバイク乗り。


ロム

パワハラ上司。


エレイン

上品なやばめのお姉さん。


ハリソン・エンジェル

聖職者のおじさま。


タスファイ・ハッセン

堅物な戦士。


アイゼン・カナリス

両性具有。トイフェルの息子であり娘。

 カナリス・ルートの会議はいつもオンライン。一同に会することはほとんどないのだが――今回ばかりは別だ。クリスマスの夜、トイフェルは12人の会員を自身の拠点に集めた。


「さて、揃ったな。改めて、久しぶりだな。元気にしていたか?」


 トイフェルは言った。


「もちろんだぜ、会長。リュカが撮ってきた新しい写真のおかげで気分も最高だ❤」


 まず昴が言い、彼の隣でリュカが微笑む。


「悪くない。ただ……誰がこの会場を作ったんだい? このごちそうも……」


「私とアイゼンだ。ケーキも他の料理もすべて」


 モーゼスの問に答えたのはトイフェル。モーゼス以外はトイフェルが料理をすることを知っていた。が、モーゼスは別だ。彼の価値観は化石のよう。


「料理なんてあなたの仕事ではない。あなたは会長らしく……」

「ボスに口が過ぎるね」


 麗華はモーゼスの言葉を遮った。


「……君こそこの私に口が過ぎるだろう」


 と、モーゼス。

 だが、2人はすぐにトイフェルの放つ圧に気付く。


「残念だ。私のもてなしを受け入れられないとは。あまり乗り気ではないが……貴様を全裸で極寒の北東に捨ててきてもいいぞ」


 トイフェルは言った。

 その名前が表すように、悪魔か魔王のような圧を放ち、モーゼスを威圧する。このトイフェルを前にしては誰も反論できない。


「父さん。モーゼスのことは放っておいて始めようよ。せっかくアポロが拠点を諦めてシャンパンとワインを入手してくれたんだし」


 そんな空気をぶち壊したのはアイゼン。トイフェルの息子であり娘でもある、両性具有の人物。


「そうだな。では好きな方をグラスに注いで……」


 アポロとヨーランからそれぞれシャンパンとワインの瓶が渡され、会員たちはそれぞれ好きな方をグラスに注いでいく。


「行き渡ったようだな。では、乾杯」


 トイフェルの一声で会員たちは乾杯する。いつもは直接会えなくても、仲がいいとはいえなくてもこの時ばかりは息を合わせていた。


 会員たちは食事と会話を楽しみ、楽しい時間を過ごしていた。と、ここでクラウディオが立ち上がる。


「ボス、お前ら!

 春月で有名なゲーム……王様ゲームをしようじゃねえか。ルールは簡単、くじで決まった王様がそれ以外の誰かに何かするように命令を出す」


 クラウディオは言う。

 彼の隣でルールを書いたホワイトボードを指すのはロム。彼女もルールを知っているようだ。


「王様の言うことは絶対。拒否権はないぜ。ま、王様も命令は手加減してやってくれや」


 クラウディオはルール説明を締めくくる。


「ボスに命令……無理です」


 麗華は言った。


「いや、これはゲームだ。北東でよくいう無礼講でいこう」


 と、トイフェルは返した。

 会長トイフェルの許しは得た。会員たちとトイフェルはくじを引き。


「王様だーれだ!」


 ロムの声とともに全員がくじを見た。


「おっ、俺が王様だな」


 そう言ったのは昴。彼の性格をよく知る者もそうでない者も、昴の命令は予想できないでいた。


「続けて」


 と、ロム。


「えーと、5番はこのメイド服をパーティーが終わるまで着る、でどうだ?」


 昴はそう言ってメイド服を何着か見せる。どれも肩周りが大きく、身長170センチ弱の人が着ることを想定したサイズ感。これだけで察する人(主にリュカ)は察した。


 このメイド服、晃真に着せるつもりのものだ!


「ボクか女性陣ならまだ……」


 と、リュカ。


「5番はいるかしら?」


 エレインはそうやってメイド服を着ることになる者を探した。すると。


「私だ」


 トイフェルが名乗り出た。


「あっ」


 昴は思わず声を漏らしたが。


「無礼講だろう? 私が着れば解決する……私が着れば……」


 声には不服さがあった。が、トイフェルは割り切ってメイド服――それも一番スカートが短いものを取って着替える。会員たちから見えないところで。


「どうすっかな……ボスが着ることは想定してなかったぜ」


 昴は言った。


「じゃあ誰の想定?」


「お前」


 リュカに聞かれると昴は即答。リュカは赤面した。


「ずるいよ! そんなにしてほしいならこんど着てあげるからさっ!」


 と、リュカ。

 今の昴とリュカはまるでカップルのよう。互いに親友のつもりだが、もはやデキているようにしか見えない。


 そんな中、トイフェルが着替え終わって戻ってきた。

 元々綺麗な顔のトイフェル。顔と服は合っている。が、問題は体。可愛らしいメイド服と鍛え抜かれた逞しい肉体はなんともミスマッチだ。

 ※これを想像して性癖に刺さった方は作者と同じ性癖です。


「あっ、案外いける……」


 と、昴。


「っ……晃真が着る前提でそのメイド服準備してたんだからね……」


 隣でリュカは言った。


 仕切り直しだ。

 ロムがくじを回収し、配り直す。


「王様だーれだ!」


「私ね」


 今度の王様はエレイン。彼女の命令もやはり読めない。


「続けていいぜ」


 クラウディオは言う。


「11番がセクシーポーズをして7番が写真を撮る。これでどう?」


 と、エレイン。


「そうね。なら写真は私が撮るということで」


 ロムは言った。彼女が7番らしい。


「11番はどこ?」


「私が11番だ」


 トイフェルが名乗り出る。クラウディオは「マジかよ」とでも言いたげな顔でトイフェルのくじを確認。くじは11番だった。


「会長、嫌なら変えようかしら?」


 エレインは尋ねる。


「……いや、続けてくれ」


 トイフェルは答えた。


 トイフェルはグラビアでありがちなポーズをとって、ロムが撮影。しかもトイフェルはメイド服ときた。噴き出しそうになる者もいれば、失礼だと思いながらも眼福な者もいた。


「やはりトイフェルはノリが良いですね。会長になってから変わったと思いましたが。よかった」


 トイフェルを見ながらハリソンは言った。


「そうなのか? 昔の会長を知らないから、意外だ」


 と、タスファイ。


「そうですね。くじが回ってきましたよ」


 ハリソンに言われてタスファイはくじを引く。続いてハリソンも。


「王様だーれだ!」


 毎度おなじみのロムの掛け声。


「俺か……」


 と、タスファイ。

 王様くじを引いた割には嬉しそうではないタスファイ。それもそのはず、2回もトイフェルが標的になるのなら王様になりたいはずがない。


「5番が自分の十八番を歌う。これでどうだ?」


 タスファイは言った。


「わかったよ。私が歌おう」


 ここにきてまさかの標的がモーゼスに。モーゼスは携帯端末から音楽を流し。


「それでは聞いてくれ。『皇帝宣言』」


 どこから仕入れてきたか『皇帝宣言』。ロムとエレインはすぐさま眉間にしわを寄せた。タスファイもいい気分はしない。


「……会長の美声が聴きたかったのに」


 タスファイはぼやく。その隣ではハリソンがニコニコと笑いながら手拍子をしている。彼だけだ、愛想笑いでも不快そうな表情でもない表情なのは。


「お前俺の嫁なら

 黙って俺に従えばいい

 俺のすることには一切口を出すんじゃない

 いいか絶対だ」


 と、モーゼスは歌い上げる。


「最低ね」


 リュカはぼそりと呟き、ヨーランもうんうんと頷いた。が、モーゼスは特に気にせず。


「どうだい。私の十八番だ」


 と、モーゼス。


「やっぱクソ野郎じゃないの」

「歌が上手いのがイラッとくるわね」

「聴く価値もないね」


 ロム、エレイン、麗華が順に言った。


「どうせなら皇帝失脚まで歌ってくれれば面白いんだけどね」


 リュカもつまらなそうに言った。

 モーゼスの歌は不評だったが、ハリソンに対してはそうでもなかった。


「君は歌も上手いのですね。聖歌隊に入ってみては?」


 ハリソンは言った。


「……全員に受けなかったわけじゃないようで何よりだよ。考えさせてくれ」


 モーゼスは言った。

 そんなとき、流れを変えたのはクラウディオ。


「おい、次いくぜ。せっかくボス意外が標的になったんだ。もっと楽しんでいこうぜ」


「そうよ。またくじを回すから続きをやるのよ」


 ロムは言う。

 そうしてくじが行き渡り。


「王様だーれだ!」


 全員がくじを確認する。


「ぼくだね。というわけで、6番が渾身の可愛さで『萌え萌えきゅん』をする。これでどうかな?」


 と言ったのはヨーラン。

 まさか次にまたトイフェルが標的になるだろうとは誰も思っていなかった。だが。


「いいだろう」


 トイフェルは言った。またしても標的はトイフェルだ。トイフェルじゃねえか!


 トイフェルはすっと立ち上がり。


「萌え萌えきゅん❤」


 やった。トイフェルが萌え萌えきゅんをやった。このときのトイフェルはもちろんメイド服を着ている。まるでメイド喫茶のメイド♂だ。


「会長! そこまでやらなくても……!」


 と、タスファイ。


「いや、私だけ拒否というわけにはいかない。私もカナリス・ルートの一員だ」


 それがトイフェルの精神。そんな彼の精神に打たれ、会員たちが悪ふざけで始めた王様ゲームはフェードアウトしていった。


 しばらく酒や他の飲み物を飲んでいると、今度はタスファイとハリソンが前に出た。


「そろそろいい感じになってきましたね。では、プレゼント交換と行きましょう」


 と、ハリソン。


「ここにある箱を持って、音楽に合わせて回す。音楽が止まったときにあったものを受けとることになるぞ」


 タスファイも付け加え、会員たちにプレゼントボックスを渡す。これらはすべて会員が買ったもの。100デナリオン前後で。


「では音楽を流しましょうか。ミュージック、スタート」


 タスファイが端末から音楽を流す。流れたのはまさかのデスメタル。歪んだギターの音に速すぎるドラム、喉が潰れたような声が響く。ハリソンの眉がぴくりと動き、それを悟ったタスファイは音楽を止めた。


「早いな」


 ヨーランは言った。まだプレゼントを隣に渡せていない。


「……放送事故だ。ハリソンにこの音楽はまずい」


 タスファイは答えた。


「では仕切り直しです。頼みますよ、タスファイ」


「今度こそ……」


 タスファイは別の音楽を流した。次はちゃんとしたクリスマスソング。会員たちはプレゼントを隣に渡して、また隣へ。そのまた隣へ。

 しばらくするとタスファイが音楽を止めた。


「ストップです。では、中身を見てみましょうか」


 と、ハリソン。


 会員たちはおもむろにプレゼントを開け始める。


「お、北東のサケじゃねーか。これは昴が選んだだよな?」


 クラウディオが『純菊』と書かれた結構な大きさの酒瓶を取り出して言った。


「よく分かったな。春月の名物だぜ。サケ……まあそうだな、サケ(いわゆる日本酒)だな」


 昴は答えた。


「ありがとな。で、お前のは?」


 クラウディオに聞かれると、昴はネクタイを見せる。


「コイツだ。洋装しねえから使うことがないんだが、きっかけにもなりそうだ」


 昴は言った。

 確かに昴はいつも和装。今日も紋付き袴でかっこよく決めている。


「ちなみに、誰が選んだ?」


「私ね」


 麗華が名乗り出た。

 色からしてトイフェルに似合う色、しかもネクタイ。麗華はトイフェルに渡そうと選んだのだろう。


「ありがとうよ」


 トイフェルは言った。


 その他の面々もプレゼントを見せ合っている。なぜこのプレゼントを選んだのか、何をしてほしいのかを話す会員たち。

 そんな和やかな時間もそろそろ終わる。


「……さて。今日は集まってくれて感謝する。来年もこうやってパーティーをしよう。まずは新年会、バーベキュー、クリスマスパーティー。私はこういうことが大好きでね」


 トイフェルは言った。


「明日からもまた、秩序を守ろうではないか」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ツイッターからきました。経緯は分かりませんが、キャラ達の掛け合いが面白かったのでブクマしました! メイド服筋肉可愛い。時間があった時に読ませて戴きますね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ