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三人目の転生者

 海軍では平賀譲が台頭、巡洋艦夕張が出現した。


 ただ、まだまだガスタービンは実用域にない。


 そんな折、そろそろ退官である。


 そんな時、新たに不思議な話を耳にした。


 瀬戸内のしがない造船所が英国からスクラップ潜水艦を買い付けたという。


 わざわざそんな遠くから屑鉄を買うとか何やってるんだと思ったが、それがR級潜水艦だという。


 ピンときた。


 それは従来の潜水艦ではない。


 R級潜水艦とは世界初の対潜潜水艦だ。


 水中排水量500トン、全長約50メートルという数値は特に目を引くモノはない。


 しかし、その速力は驚異的だ。水上速力9.5ノットはまあ良い。なんと、水中14ノットと言う高速なのだ。

 搭載する原動機の出力不足で満足な充電が出来ず、もっぱら沿岸域でしか活動できない欠点はあるが、これがどんな潜水艦なのかは、21世紀の目で見れば一目瞭然。


 コイツはもしかして?と思った。


 時に1925年である。


 訪ねた瀬戸内の造船所は木造漁船を中心に、ようやく鉄船対応の設備を導入し始めたという平凡な内容だった。


 しかし、その次代を担う若者はやはり、そうだった。


「薩摩の設計者ですか。もちろん、そう言う事ですね?」


 という彼。


 訪問の理由を察していた。


 当然のように潜高型を研究しようとしているのかと尋ねると肯定する。


「今の時点から海軍が研究すると言う事もまだ発想がないでしょう。71号艦がはじめてでしたか」


 と言って来る。


 そして、鳳翔にダメ出しまで受けてしまう。


「鳳翔は英国でも話題になっていました。艦形もハーミーズに比べて小さい事も無く、舷側エレベータ装備だとか。波浪は大丈夫でしょうか?」


 たしかに、巡洋艦ベースよりはマシだが、確実に安全とは言い難いだろう。そのせいもあって、ワシントン条約により空母改装が決まった赤城、加賀については英国に倣った多段空母という方式となり、舷側エレベータも設置されない計画である。


「これに関しては、後々の改善点ですが、どうやら解放型格納庫である点は頂けませんね。第四艦隊事件の様な海難があれば犠牲を覚悟しないといけませんよ?あの構造は」


 と突き放し様な発言であった。


 それに対してエセックス級空母の利点を説明したが、それに対して首を振る。


「エセックスは開放型格納庫がメリットなのではなく、甲板装甲や隔壁による防護力こそが利点ですよ。現に大戦時や戦後の波浪で飛行甲板前端がめくれ上がる様な事故もあります、結果、ハーミーズや大鳳の様なハリケーンバウへと改修されていきます」


 開放型がメリットでは無いという彼。


 そして、鳳翔ベースで龍驤を建造する際の留意点や採用すべきモノも提示される。


 それはハリケーンバウの採用。彼が設計したカタパルトの採用、密閉式格納庫の採用であった。


 どこか納得のいかない話ではあったが、現実の巡洋艦ベースの船体ではなく、高速貨物船ベースの鳳翔は空母としては正解ではないかと言う。


「空母に必要なのは安定性です。揺動はすくなく離発着がし易いのが理想ですよ。そのためには巡洋艦よりも戦艦がベースの方がよく、次点は商船でしょうか。高速船形を追求した巡洋艦は向いてはいません」


 という。


 とは言っても、日本の空母保有トン数からもはや戦艦ベースのような大型空母は無理がある。どうしてもサイズが小さくなってしまうのは仕方がない。


「はい、だからこそ鳳翔がベースにふさわしい。その点は良い選択ではないでしょうか?」


 との事なので、龍驤の概要もまとまった。


 そして、彼にガスタービンの話もしてみると、非常に乗り気である。


「それは面白そうですね」


 ガスタービンは海軍ではなく二宮が主体で開発しているので彼の実家、塩飽造船が関わっても問題などは起きない。


 そんな彼を招いて見学させたが、なぜか頭を抱えている。


「よくこれで動かしていましたね」


 という彼の指摘を受けて改善点が山のように積み上がっていった。


 動くには動くという状態であったガスタービンは彼の参画でようやく実用化へと歩を進めることが出来そうである。


 さて、龍驤だが、彼の提言を受けて作成した要目を海軍に示したが、納得しない者が多かった。


 が、そこへ二宮から寄せられた空母に対する要望も添えると、多くの関係者が頭を抱えた。


 多くの者が求めた理想像からは乖離していたからであろう。


 とはいえ、航空の第一人者の意見を無下に否定はできない。


 海軍軍人では無かったが、空母へ初めて着艦をキメたのは彼である。誰も頭が上がらない。


 艦橋など無くせ、煙突など下へ向けろと赤城や加賀での実績を主張する技官や軍人が多かったが、それらの必要性よりも、艦上での指揮や機体の移動を指示するのは専門の管制部署が艦橋に必要であるという二宮側の要望は説得力が高かった。


 巨大な艦橋を持つ英空母に興味の無かった連中が俄然注目しだすが、アレすら違うのを俺たちだけが知っている。


 そして、最後の仕事となった龍驤設計では戦後空母のような巨大艦橋を持つ艦形として完成されることになる。


 海軍では大いに不満を抱く軍人や技官だらけだ。


 27ノットに抑えられた速力には不満しかないらしい。


 2段格納庫を否定された舷側エレベータにも不満があるらしい。


 無駄に費用がかさむカタパルトに見向きもしていない。 

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