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それは突然に、だが、おもしろそうだった

 そう言えば、オンラインゲームをやっていた気がする。


 しかし、ここにはその様な物はない。


 いや、そもそも、オンラインゲームが出来る環境がない。


 さて、あれは夢だったのか?


 それとも、これが夢なのだろうか。


「さて、では、新戦艦に対する提案があるそうだな」


 その声と共に全員がこちらを向いた。


 ここは随分と古めかしい。いや、それは当然か。今は明治なのだから。


「はい」


 そう答えてある提案をおこなう。


 今は記憶で言うならば戦艦薩摩に関する会議の席上だ。


 薩摩は言わずと知れた「時代遅れの戦艦」ではあるが、今、この時点でそうなる事を知る者は誰もいない。


 20世紀をようやく迎えた今、世界は12インチ連装砲2基を搭載する標準戦艦から、装甲巡洋艦の主砲である8~10インチクラスの中間砲を更に搭載する準弩級艦の時代を迎えている。


 そんな中、ジェーン軍艦年鑑にはイタリア海軍技官が発表した単一巨砲艦なるものが掲載されていた。


 それを実現したのは英国である。


 だが、その同じころ、日本の対岸にある米国でも二階建て砲塔という特異な、いや変態級の形態から背負い式へと細胞分裂して正常進化を達成した新戦艦が議会に掛けられたが、残念ながら予算案は成立しなかった。


 そうした世界の歯車がドレッドノートへと進んでいる今、日本では準弩級戦艦を国産する話が進んでいる。


「主砲塔を3基積むのか?」


 出席者からは疑問の声が聞こえてくる。


 この時代、まだ斉射は採用されておらず、各砲塔が個別に目標を選定し、交戦する事が標準的な戦法である。


 そこに主砲塔を増やす。


 個艦性能は高まるのは確かだが、中間砲を複数搭載する事に比べ、火力がどうかと言うと、実は疑問である。


 準弩級をはじめとするこの時代の戦艦は、同航戦や反航戦ばかりではなく、乱戦への対応も考慮していた。


 つまり、片舷に集中して指向するのは火力の集中にはなるが、回り込んでくる巡洋艦などへの対処に主砲や中間砲を残しておくことも考えていた。


 当初の弩級が舷側に砲塔を配置するのはそうした準弩級からの流れを残していたからと言える。


 日本で初の弩級戦艦、河内型はその様な考えから生まれた亀甲配置を採用していた。


 斉射を基本とする時代には無駄な砲塔が存在する無駄な配置だが、準弩級の考え方としては両舷へ同時に指向できる能力と言うのは有効とされていた。


 未だ斉射という運用が確立されていない時点においては賭けである。


「はい。中間砲を排し、主砲を増強するというのはジェーン年鑑へも寄稿された最新の手法であります」


 そして、後のサウスカロライナ級となる米戦艦に関する資料も配布した。


「これは4基か。しかも二段」


 後の常識となる背負い式だが、今の日本ではそのまま採用できない。


 この当時、日本が有していた英国式戦艦と言うのは視察塔や換気口が砲塔上部に存在し、背負い式で前後方向に発砲すると直下にある視察塔や換気口に爆風が向かってしまう。


 ならば、ガングート級の様に4基を甲板に並べれば良いではないか?


 しかし、それをやるには全長が足りない。そんな巨大船台や船渠など日露戦争時代の日本には存在しない。

 だからこそ、妥協して3基とした。


 もちろん、4基に出来なくはない。


 世界を見渡せば世界最小の弩級戦艦であるスペインのエスパーニャ級は薩摩より小さな艦形に4基を載せているが、2,3番砲塔は舷側であり、片舷に指向できるのは3基しかない。


 そして、今の日本に1隻に4基載せる余裕もない。3基ならば、試しにやってみようという意見も出るだろうが、4基では筑波型や鞍馬型といった同時期に建造する準主力艦の主砲を奪う事にもなりかねない。 


 煮え切らない意見、批判的な質問に応対する事1時間近く。


「毎分2発近い発砲が可能な最新砲塔であれば、単一巨砲とやらも可能性はあるか」


 何とか説得する事に成功した。


 こうして日露戦争の最中に起工されるのだが、戦争に間に合うはずもなく、それどころか準弩級に準じた鞍馬型に至っては就役を待たずに旧式化してしまう。


 そう、ドレッドノートの完成が世界を駆け巡る事になった。


 この頃の日本では英国の様なチートな建造能力などない。建造には長期間を要し、ドレッドノートの準姉妹艦やその改良型が英国海軍に姿を現す頃にようやく完成をむかえた。


「まさか、英国がこうも素早く新時代を切り開くとは。我が国は無駄な回り道をせずに済んだな」


 周りからはその様な安堵の声が漏れる。


 そして、たった2隻で安堵している場合ではない。


 他の戦艦は一夜にして旧式化したのは日本も同じ。


 その為、新たな戦艦の建造も始めなければならない。


「艦形を拡大したうえで、3連装と?」


 河内に代わる戦艦には当時一般的な連装ではなく、ようやく研究が始まった3連装を導入することにした。


「幸運にも3連装砲塔を開発しているイタリアの協力を得ることが出来る見通しが立ちました」


 3連装砲塔の実用化を行ったのは、イタリア、そしてオーストリアだった。


 その片方と話が付いた。ヴィッカース繋がりというので話が通ったらしい。


 だが、本場イタリアのダンテ・アリギエーリの4基ではなく、3基ではあるが。


 やはり、まだまだそこまで大きな艦を建造できない事が大きい。


 とはいえ、この後すぐに金剛型を発注し、国内にも大型艦建造を可能なように拡充される。

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