表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/26

難問が解決した

 舶用ガスタービンは成功裏に完成し、それをそのまま応用したターボプロップエンジンも問題なく完成している。


 ただ、小型化は難航した。


 出力軸をガスタービン本体と別に設けるフリータービン式を採用して大幅な減速を行う事で小型ガスタービンを高回転で回しながら、その半分程度の回転数で出力できているのだが、それでも直径を小さくできても全長が短くならない。


 そうかといって、遠心式を用いた単軸型ターボプロップにしてしまうと、全長は抑えられるのだが、出力がレシプロ程度にしかならない。

 そのうえ、単軸型の場合、排気の取り回しの問題もあって単発機には採用しにくい。側面にドカンと空いた排気口ってのもなかなか考え物だ。


 一応、解決法がないではない。ベルP39のようにエンジンを機体中央において延長軸で回せばよいのだが、それはねぇ?


 結局のところ、大型機用として最高出力3500馬力を誇る大型ターボプロップエンジンは完成しているので、これを何とか売り出すのが先かもしれない。


 そう思案している所へ陸軍技官がやって来た。


「ガスタービンが完成したそうですね」


 と言うので、色々説明したところ、首をかしげている。


「なるほど、軸流式とフリータービンでは全長が長くなりすぎ、遠心単軸式だと排気の取り回しに支障が出るんですか」


 そう言って考えている。


 そして、何か思いついたらしい。


「ならば、軸流2~3段と遠心式を組み合わせてみてはどうですか?」


 と言って来た。


 そうすれば全長の短いフリータービン式が作れるのではないかと言う。


 そして、より小型の陸用ガスタービンに挑戦しないかと持ち掛けて来た。


「小型機用ターボプロップであれば、サイズも重量も小さくなりますよね?出力も千馬力を切るのでは?」


 と言うので、なるほどとその話に乗る事にした。


 そして、まずは発動機として完成している大型ターボプロップを他社へと説明してみる。


 大型機を作っている川西ならば自社エンジンではないので特にセールスがし易い。


 そう思って川西に発動機の説明を行うとどうやら乗ってくれるらしい。


 うちは九六艦戦で海軍とも縁があるので海軍にも話を通し、九七式大艇を改造してターボプロップとしたところ、性能が飛躍的に向上したので海軍も大喜びしている。


 どうやらこのエンジンを星形9気筒を巻雲(けんうん)として採用したので、同様の命名式で積雲(せきうん)の名で採用するとの事だった。


 さらにそこから話が進んで、十三試大攻に搭載するエンジン候補となる事も決まった。


 ターボプロップが注目されたことでうちには重爆や陸攻を開発してほしいという要望が寄せられている。


 これからの開発となるとそのまま戦争に突入するので相当な高性能機に仕上げておかないと犠牲ばかりを生むことになる。


 陸海軍の要求仕様をただ達成したのでは全く不足と言って良い。


 そうした事を念頭に、爆弾搭載能力は要求仕様の3倍、速度も出そうと思えば600kmを超える機体として設計した。


 他のメーカーは現在持てるエンジンでの参加なので、到底ターボプロップには敵いようがない。馬力が2~3倍も違うのだから勝負にならないのは明らかだ。


 ただ、うちの機体は3500馬力を受け止める機体でなければならず、開発中のより高出力エンジンを前提にしている。


 そうした事が理由だろう。陸海軍の要求する強度を遥かに超える丈夫な機体に仕上がっており、最近分離した塩飽電装と組んで開発した動力銃座の搭載を提示したのだが、どうやらそれらが祟って彼らの考えるコストを大幅に超過したらしい。


 結局、試作に至らず不採用が決まってしまった。


 ちなみに、十二試艦戦についてだが、自社製エンジンがなく、瑞星か栄を搭載するという事が提示されていたので参加していない。


 そもそも、陸攻や重爆の設計で忙しかったのでそれどころでは無かったのだが。


 ただ、重爆と共に陸軍から提示されていた双発偵察機開発は行っていた。


 なにせ、大出力エンジンで高速を出せるというのはどう見ても偵察機向きだったからだ。


 偵察機用に余剰推力も十分に利用できる多発機用小型ターボプロップとして半ばお蔵入りだった2000馬力級エンジンを搭載している。


 単軸型で作った試作エンジンと言う事で異常に全長が長く単発機には全く向かないエンジンだったが、こうして搭載が可能となった。


 どうやら陸軍ではこのエンジンにネという呼称を付けるらしく、ネ11として採用されることになった。 



 その偵察機の高速性能に喜んだのは陸軍だけでは無かった。


 試作段階で余裕で600kmを超える速度を示したことで海軍までもがその海軍版を求めて来た。


 どうも、中島に発注していた十三試双発戦闘機をかなぐり捨ててアプローチしてきたのだが、中島が抗議して沙汰止みとなった。


 その代わりではないだろうが、ターボプロップで単発機を作って欲しいという。


 まずは迎撃用の局地戦闘機らしいが、成績次第では次期艦戦の開発発注も考えるらしい。


 それはそれで三菱の邪魔をすることになるんだが、まあ、仕方がない、雷電なんて開発遅延が分かり切っているんだから蹴落としたところで問題ないだろう。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ