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意気投合してヤラカス

 さて、順当に艦戦の採用を勝ち取った二宮は慢心しているか?商機に沸いているのか?


 実際には頭を抱えていた。


 航空用ガスタービン。つまりターボプロップエンジンを開発していたのだが、それがうまくいっていない。


 と言うか、出力があり過ぎるらしい。


 欲しいのは小型で2000馬力以内だが、今のところ3500馬力になる大型機用しか実用域に無いという。なんともぜいたくな悩みらしい。


 小型高効率なターボプロップエンジンは未だ完成していない。


 それさえ完成すれば次が見えるらしいのだが。


 さて、そんなことをやっているうちに飛龍も建造されている。蒼龍ベースで艦橋はさらに小型化されている。またもや歴史の修正力が働いているが、さて、これは吉と出るのかな?


 そして、クーデター騒ぎやらなにやらと日本国内は騒がしくなってきた。


 そんな中で塩飽造船が動き出す。


「待っていても始まりませんので、こちらから動きます」


 そう言って海軍に対する島風クラスの小型軽巡ないしは嚮導駆逐艦に類する艦艇の提案である。


 ガスタービンを主機として更なる改良により7万馬力を誇る。ただ、吸排気関係が影響して魚雷発射管配置場所がなく、5連装発射管2基と島風より劣るが、速力は変わらない。


 海軍はその高速力に食いついた。


 だが、その高価格に二の足を踏んでいる。


 更なる提案は軽巡洋艦であるらしい。


 そちらは阿賀野型をガスタービン化したような艦だ。


 だが、それはある意味見せ札でしかない。


 本命は潜高以上に実用的な水中高速潜水艦。


 塩飽造船が電子機器に力を入れてきたのは全てこの潜水艦の為である。


 レーダーやソナーに戦闘方位盤に至るまで電子機械化されたシステムであり、世界最先端であることは疑いようがない。


 第71号艦すらまだの海軍に理解できるんだろうか?


 そして、陸上に目を向けると、とうとう九七式中戦車が登場したらしい。


 そのシルエットはあきらかにT34かと思う様な傾斜面で構成された戦車へと変貌しているのだが、主砲は57ミリ短身砲のままだった。

 陸軍の要求はまだまだ歩兵支援重視らしい。


「外見はほぼT50軽戦車ですが、能力は史実のチハです。ただし、オートマチックですけどね」


 と、よく分からない事を言う。オートマチック?チハが?


「そう言えば、もうガスタービンが完成しているとか聞きましたが?」


 と言うので、二宮飛行器が試行錯誤している事を伝えた。


 彼も興味を持っていたらしく、そのすぐ後に早速接触した様だ。


 その間、空母に関してはほぼ史実に近い方向に逆行してしまった。


 せっかくの舷側エレベータもハリケーンバウもカタパルトも島型艦橋も、なぜか一切合切否定に走っている。


 翔鶴型空母はとうとう現実のソレをなぞる形に修正されているとの事だが、噂に聞いたところによると、龍驤や鳳翔よりも蒼龍や飛龍は運用が窮屈だという。


 その話を塩飽造船でぶちまけた。


 そして、いっその事、21世紀のクイーンエリザベス級空母の様なツインブリッジのガスタービン艦を設計できないか?と持ち掛けた。


 大受けであった。


「それは良いですな!なかなか面白そうです。どうせカタパルトは油圧ですし、全く問題ないですよ」


 と言って、2人で悪乗りして4万トンサイズでラフ設計を行ってしまった。


 さて、二宮飛行器である。


 陸軍からの接触があった影響か、ターボプロップエンジンの方向性が変わってきている。


 大型ターボプロップはそのままだが、小型に関しては軸流遠心式混合になったらしい。


「実際に米国企業が開発している2000馬力以下級ターボシャフトのそれを採用する事にしました。いえ、今の技術で可能な方式で我々の考えを反映させているのでコピーではありませんがね」


 との事であった。


 そして、何を思ったか、まずはエンジンを売り出すという事になり、川西飛行機が開発した飛行艇のエンジンをターボプロップ化するらしい。


 そして、二宮は十二試艦戦に参加しなかった。


 代わりに、陸軍重爆、海軍陸攻の開発を行っている。


 どうやら飛行艇のエンジン変更が好成績だったらしい。


 さらに、そのエンジン変更をみた連中が4発陸攻のエンジン換装と双発の新型陸攻開発の話を持って来たらしい。


 中島飛行機が開発していた大型陸攻「深山」に関しては3500馬力のターボプロップエンジンにより力任せで飛ばすことに成功している。


 そして、期待された二宮製陸攻と重爆だが、余裕で要求仕様は達成するが、コストが問題だった。他社のソレが明らかに安かった。


 こうして、一式陸攻と呑龍の採用は勝ちとれなかった。


 だが、その間に小型ターボプロップを用いた小型機開発は何とか成功し、陸軍に提案されている。


 海軍も十六試艦戦として検討するという。


 ターボプロップは飛行艇での実績によって開戦頃にようやく軍の理解が広まったが、問題もある。


 ターボプロップエンジンは燃料を選ばない良さがある反面、仕様ごとに面倒な調整が必要になる。何でもそのまま入れて飛べるという訳ではない。


 それが問題化するのは陸海軍がターボプロップ単発機を採用してからの事になるので、まだ表面化していないのだが。

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