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「はやぶさ」の完成

 1933年、ようやく耐久性を獲得したガスタービンを用いた実験艦の建造が、わが塩飽造船に発注された。


 本来ならば工廠で建造するはずだが、ガスタービンというモノを知らない工廠ではなく、開発に関わっていたうちが引き受けることになった。


 さてどうしようかと考えたが、はやぶさ型ミサイル艇をモデルにすることにした。


 試験艦なので搭載するのはガスタービンのみ。やはりその高速力を見せつけた方が良いだろう。


 そうなると、ガスタービンを2~4基搭載する事になる。はやぶさ型駆潜艇の様な複合型にする必要もない。


 ただ、ウォータージェットは採用できない。


 昨年、イタリアで近代的なウォータージェット艇が開発されたのだが、海外への販売や技術移転を行っておらず、あらぬ疑いを掛けられない様に採用を見送る事にした。


 そんな訳で、一般的なギヤード減速を用いたスクリュー式だ。


 船自体ははやぶさ型ミサイル艇と同様に全長50m程度、排水量220トン程度しかない。


 塩飽造船自体、やっと内航船の建造が軌道に乗り、5000トンクラスの船渠の建造が始まったばかり。そんなに大きな船は建造できない。


 武装も何もないその試験艦は順調に建造が進み、海軍へと引き渡す事が出来た。


「まるで『はやぶさ』じゃないか」


 と、例の技官は驚いていたが、日本でのガスタービン艦艇の歴史を教えると更に驚いている様だった。


 海軍での試験も順調に行われ、最高速力は40ノットに達した。


 気を良くした海軍はこのまま魚雷艇や少し大型化して水雷艇にでもと意欲的な姿勢を見せていたが、友鶴事件が起きた事で事態は一変。

 それでもどうにかと言う話はあったのだが、第四艦隊事件がトドメとなってしまった。


 ガスタービンは軽量である反面、いわばバラストとなるべき水線下の重量を軽くしてしまうので思うように強武装に出来ない。

 それが結局、海軍がガスタービンから遠ざかった理由だった。


 同じころ、南部銃製造所では新型航空機関銃の開発が行われていた。


 BARの縁でM2重機関銃の情報を知る事が出来たのだが、やはり50口径は8ミリクラスよりも大きくて重い。


 そこでふと考えたのが、弾薬全長を8ミリ実包とほぼ同じとし、そのサイズで50口径機関銃を開発する事だった。


「あれ?そう言えばどっかにあったな、そんなもの」


 と、思い出そうとすると、頭にMG131が浮かんできた。


 そう言えばそうだった。MG131はそれまでの8ミリ級機関銃MG15や17とほぼそのまま換装できることを目的に作られたはずだ。


 となれば、早い段階で同じコンセプトの機関銃を作るのはどうだろうか?


 と言う事で、八九式航空機関銃の外寸を参考に、そのスペースに収まる50口径機関銃として設計する事にした。



 その頃の二宮飛行器では後の九六艦戦となる九試単戦の試作に応じて開発を行っていた。


 エンジン開発も順調に進めており、V型、水平対向は既にそれなりの域に達している。


 ただ、21世紀の技術を落とし込むのはもはや限界と言って良い所まで来た。


 必要な燃料や潤滑油が手に入らない上に、ピストンリングやバルブの材質にも限界が来ていた。


 単に21世紀の技術を放り込むだけではそろそろ限界。後は如何にこの時代に合わせて改良、改善していくのかという事になるのだが、すでにガスタービン開発をしており、航空機用も視野に入っている。5年もすればターボプロップ機が飛ぶであろう現状で、新たにレシプロエンジンに資金を投入するのは躊躇した。


 そんな訳で、エンジンに関してはようやく実用化出来た星形9気筒エンジンを搭載した。


 燃焼効率が良いエンジンなので中島のエンジンよりも高出力であり、600馬力を実現していた。


 何より、塩飽造船と共に開発した引き込み脚の効果は絶大で、三菱や中島よりも大型化した機体にも拘らず、それら以上の速度を出すことに成功した。


 そんな機体が採用されるとは夢にも思わなかったが、どうやら採用が決まったらしい。


 その要因は何だったのかと聞いてみると、南部銃製造所が開発した新型機銃を搭載した事だという。


 あの、MG131をパクったようなコンセプトで30口径機関銃とほぼ同寸法でありながら、ワンランク上の火力を持つことが評価されたんだとか。


 こうして制式採用された九六式艦上戦闘機には、同じく九七式一三粍機銃として採用されたソレが胴体2丁、翼内2丁採用されている。


 この機関銃。どうやら陸軍が中島に指名開発させていた九七式戦闘機にも採用されるんだとか。


 その頃、陸軍は新型軽戦車の開発を行っていた。


 九二式重装甲車が非常に優秀であった事から、これを大型化、重装甲化した軽戦車の開発が始められることになった。


 全面的に傾斜した車体に陸軍内で研究開発された航空発動機をベースに空冷直列ディーゼルとして開発した新型エンジンを搭載する事が出来た。

 変速機もシンクロを採用する事に成功し、操作性は折り紙付きだ。

 目指すはオートマチック。すでにトルクコンバーターも試験段階ではあるが完成している。


 主砲は当然のように九四式三七粍対戦車砲と共通弾薬となっている。


 この戦車砲、なんと、南部銃製造所が新規に開発した液気圧式駐退複座器を装備してまるで欧米の戦車砲の様にコンパクトになっている。


「いやいや、元を質せば塩飽造船と二宮飛行器が飛行機用ショックアブソーバーとして開発していた技術を用いただけですよ」


 などと言っている。


 造船所はどうか分からないが、飛行機メーカーが関わっているなら、いっそのこと、その技術を生かして日本でも国民車の開発が可能なんではなかろうか?


  

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