婚約破棄されて優良物件と幸せになりました
私の見た目は目つきが悪く、意地悪で性格悪そうで、整った顔も冷たそうで怖いそうです。
でも見た目で判断されても困ります。この顔は生まれつきですので……。
言葉少ないのも、上に立つ者は個人の考えだけでなく、周りの事も良く考慮して返事をしなければいけないと言われて育ったからです。
公爵家の娘として王太子殿下の婚約者として選ばれたのも高位貴族の務めと思い、王太子妃教育も不平なく頑張ってきました。
婚約者になった後も王太子様が私に興味が無くとも国の為と思い耐えてきました。
そんな私に国の要職の貴族や諸外国の王族、貴族が出席する国王主催のパーティーで王太子殿下は婚約破棄を突きつけたのです。
「サリナ・アレフォート!この場で貴様との婚約を破棄する!!」
「一応お聞きしますが、お気持ちは変わらないのですか?」
「変わるはずなかろう!貴様がエルメを虐めていた事実をどう言い訳するのだ!!それが王太子の婚約者がすることか!?恥を知れ!!エルメ、其方がこの悪役令嬢に何をされたか言ってやれ!」
「持ち物を隠されたり、破られたり、殿下に声を掛けただけで咎められたり、友達と話していても親しくしてはならないと言われたり、私がご挨拶しても無視してお返事も頂けず、1週間前の放課後噴水に突き飛ばされた事もありました。私は毎日辛くて…。学園に居てはいけないのだろうと不安になりました」
「その様な虐めをする者を未来の王妃には出来ない!よって俺はサリナ・アレフォートと婚約破棄し、エルメ・ダンソン男爵令嬢と新たに婚約する事を皆に宣言します!
父上、いいえ、国王陛下、この場でサリナとの婚約破棄とエルメとの婚約を認めて頂けますか?」
「グレイ、その方は本当にそれで良いのだな?」
「もちろんです!!」
「サリナ嬢、其方から何か異議等はあるか?」
「私からは異議は何もありません。陛下」
「では、サリナ嬢は虐めを認めるのか?」
「私は虐めは一切しておりません。
エルメさんが、言われた持ち物を隠された、破られたと言う事実はご本人がされたとの裏が取れております。ご報告は影からいっていると思います。
声を掛けて咎められたとの事は、婚約者のいる殿方に気軽に声を掛け、二人っきりでお会いになっていたからでございます。殿下を含めお友達の殿方は皆様婚約者がいらっしゃいます。ですから恥知らずな行いを咎めました。お友達の殿方達の婚約者様達が嘆いておられましたから……。
挨拶をされて無視されたと言われましたが、この国ではいつから下の立場の者から上の立場の者に声を掛けて良いことになったのでしょうか?
ご実家ではマナーも習われていないのでしょうか?」
「が、学園では皆平等にと掲げています!」
「学園はいわば社交界に出る前の小さな社交界です。大人になる前に学園で失敗しながら学ぶ場所です。咎められたら、その都度、考え改める事ができる場です。エルメさん、貴方は何故咎められたのか考えましたか?」
「考える訳ないじゃない!だってサリナさんが言う事は意地悪な事ばかりじゃない!あれはダメこれはダメって私にばっかり!誰だって男女問わず友達になっておしゃべりする事の何を咎められなければならないのですか?」
「貴族の婚約は当人同士の意思ではなく、家と家との繋がりです。その為にお互いに誠実で無ければいけません」
「サリナ様の言う通りです。私達は婚約者の事を信じる事が出来なくなりました。信頼できる方では無いのに結婚するなど無理です」
一人の令嬢が声をあげた。
「「「「ですから私達はこの場で婚約破棄を申し込みます!!」」」」
そして、エルメと仲良くしていた、いわゆるイチャイチャして鼻の下を伸ばしていた子息達に婚約破棄を申し出た。子息達は皆真っ青になっていた。
「放課後噴水に突き飛ばされたと言われましたが、私は授業が終われば直ぐに王太子妃教育の為王宮に向かっています。1週間前もです。証人は王妃様です」
「そんな事はどうでも良い!
人は皆平等であり、身分制度を廃止し、誰もが学べ、食べられる権利を与えるべきだと俺もエルメも思っている」
「グレイ様の言う通りです!人は皆平等なんです!」
二人は良い事を言ったと自負していた。
「人は平等ではありません。それに誰が爵位撤廃に賛同するのでしょうか?
万が一皆が平民になったとしても必ず上下関係は出てきます。国を腐敗させない為、国を滅ぼさない為、国を維持する為に貴族が居て、国民や領民の為に貴族達は日々努力しているのです。
殿下もエルメさんは平民になったらどうやって日々暮らしていくのですか?もしかしてご自分達は平民になっても、生活は変わらないと思ってらっしゃったのですか?もし、そうなら頭の中にお花畑があるのでしょうね」
「俺達を愚弄するのか!不敬罪だ!誰かその女を捕らえろ!!」
王太子は怒鳴りながら命令したが誰一人従う者は居ない。
「グレイ、サリナ嬢との婚約破棄とエルメ嬢との婚約を認める」
「ありがとうございます!」
グレイは国王の言葉に喜びエルメと抱き合った。
「そして今日この場を以てお前を廃嫡し平民に降下する」
「な、なぜですか?何故廃嫡にならないといけないのですか?」
「身分制度の撤廃を望んだのは其方であろう。希望通り身分を持たず平民として生きていけ。
エルメ嬢、其方はグレイの婚約者だ。一緒に平民として生きていくが良い」
「そ、そんな!?お父様!私平民になるなんて嫌よ!助けて!!」
エルメは真っ青になり、父のダンソン男爵に縋りついた。
「お前が望んだ事だ。グレイ殿と生きて行くが良い。我が家にはエルメと言う名の娘は居らん」
「二人を市井に連れて行け」
国王陛下の言葉に警備兵達が嫌がるグレイとエルメを会場から連れて行った。
「婚約破棄を申し出た勇気ある令嬢達、それぞれ良い方向に計らうから安心するが良い。新しい婚約者候補もこの場に居るだろう。良い門出を祈っておるぞ」
令嬢達は国王陛下にカーテシーをし、両親と其々会場を後にした。
サリナを除いて。
「サリナ嬢、馬鹿な息子がすまなかった。其の方が日々王太子妃教育や外交、貴族間交流、市井や教会への支援を頑張ってくれていたのは我々が1番知っていてありがたかった。其の方を手放すのは王家としては避けたい。サリナ嬢さえ良ければ新しい王太子候補のユルンの婚約者になってくれまいか?」
「サリナ様、僕は平凡な男ですが、サリナ様の横に立てる様に頑張りますので、僕と婚約してくださいませんか?僕は兄上とは違い貴方を愛しています」
「承知いたしました。今後ともよろしくお願いします」
「サリナ様がお庭でスイーツを食べる時の笑顔に惚れました。これからもその笑顔を守る為頑張ります。他国のスイーツも出来るだけ用意しますね。僕は結構優良物件ですよ」
ユルンが耳元で言った言葉に、まさか見られていたのかと恥ずかしくて真っ赤になったサリナの可愛い顔を見て、会場に居た独身子息達が恋心を抱いたのは真っ赤な顔のサリナはまだ知らない……。
沢山の作品の中からこの作品を読んでくださりありがとうございます!
良かったら評価お願いします
頂けたら作品作りの活力になります