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悪役令嬢は全能ですっ! ~前世は女傭兵!? 四季咲きのミア・ローズ、最強の領地を目指して~   作者: 葉月双
五章

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11話 大公閣下と小公爵


 私たちはひとまず、ホーリエン城に戻った。

 世界間を繋ぐ扉の出口がここだったのだ。

 たぶん、私が出口にローズ領をイメージしたら、ローズ領に直接帰れた気がする。

 まぁ仕方ない。

 来た時と同じってイメージしちゃったから。


「お帰りミア」と玉座に座ったマルティン。


「やぁただいま。そしてこのまま私とローレッタはローズ領に帰るよ」

「……あたしも、国に帰る……またね」

「あ、待ってイーナ」


 私が引き留めると、イーナちょっと面倒そうな顔をした。

 お前っ!

 私を親友だって言ったじゃん!?

 その態度は親友……いや、いいや。

 知りたいことを聞こう。


「なんで私と親友なの?」

「……だって、団長からマリンの話、いっぱい聞いたから……。この80年で、いっぱい……だから気分は親友」


 そんなに私の話したの!?

 何を話したの!?

 うわっ、これは聞くの怖いっ!


「じゃあ、またね」


 そう言うと、イーナは水晶を抱えて謁見の間を出た。


「ミア、帰る前に確認したいんだけど」マルティンが言う。「割譲する領土の件」


「ああ、うん。それは大事だね。何?」

「我がホーリエン王国領のまま、君を公爵にする方向と、領土をハウザクト王国に譲渡する方向と、どっちがいい?」


 なるほど。

 確かにそれは決めておかないとね。

 せっかくだし、ホーリエン王国で公爵になるのも悪くないね。


「どっちも違います」ローレッタが言う。「そこは今後ローズ公国として独立します」


 なぬっ!?

 私はビックリした。

 初耳だったから。

 マルティンや周囲の大臣たちも驚いていた。


「本当に?」マルティンが確認のために言う。「本当に独立でいいの?」


「はい。大丈夫です」ローレッタが言う。「お姉様が大公となり、あたしが小公爵となります!」


 小公爵って何!?

 初めて聞く爵位だけど!?

 少なくとも、ハウザクト王国にもホーリエン王国にも存在しない爵位だ。


「大公についての説明は不要ですね?」


 ローレッタの問いに、みんな頷く。

 大公というのは、公国の主のこと。

 地位としては王様より下で、公爵より上。

 この世界における公国とは、公爵領1つから5つまでの小国のことを言う。

 公爵領6個以上で王国。

 政体によっては共和国とか、まぁ色々。

 とにかく、公爵領5個以下ならば治めるのは大公なのだ。

 まぁ、この世界と言うよりは、ヨーラル大陸のルールかな。


「そして小公爵というのはですね」ローレッタが言う。「次期皇帝のことを皇太子、次期国王のことを王太子と呼ぶように、次期大公を小公爵と呼ぼうかなと」


「なるほど。私に何かあった時は、ローレッタが大公になれるように、だね?」

「はい。まぁ、お姉様に何かあるとは思えませんが、一応」


 現状、大公の子供は男なら公子、女なら公女と呼ばれている。

 王女、王子みたいなもん。

 でも皇太子や王太子のように、明確な後継者を指す言葉は存在していなかった。


「分かった」マルティンが言う。「それらも含めて、正式な手続きにしばらく時間がかかると思うけど、意に沿うようにするよ」


「あ、今の公爵どうするの?」と私。


 そう、今後ローズ公国になるにしても、今はホーリエン王国の公爵領。

 つまり公爵家が治めているはず。


「ふむ……」マルティンが思案顔を浮かべる。「中央で登用する方向で調節しよう」


「分かった。よろしくねマルティン」


「ああ。任せてくれ。でも残念だな」マルティンが少し寂しそうに笑う。「君が成人したら、正式にプロポーズしたかったのに。大公と王じゃ、無理だね」


 はっはー!

 確かにどっちも国を離れられないから無理だね!


「まぁでも、そこまで責任感じる必要ないよ」


 一晩共にしたって言っても地下牢だしね!



 ローズ領に戻ると、父も母もすぐに私たちを抱き締めた。

 セシリアとフィリスはガチ泣きしていたし、本当に心配をかけてしまったね。

 後日、落ち着いてから聞いたのだけど、私とローレッタの護衛騎士2人は称号を剥奪され、投獄されているらしい。

 公爵令嬢を2人とも守れなかったのだから、ある意味では妥当な罰なのだけど、ちょっと納得いかない。

 相手は人間じゃなくて悪魔だったし。


 5インチ砲で一撃だったけど、普通に戦ったら私でも勝てたか際どい。

 私は強いけど、肉体的にはまだ8歳だからね。

 まぁそんなわけで。

 私は法務省管轄の地下牢を訪れていた。

 もちろん、移動は馬車だったし、周囲は護衛騎士にガッチリと固められた状態での移動だった。


「ミア様……ご無事でなによりです……」


 私が専属騎士に選んだグレン・ファーリーは牢の中で泣いていた。


「君はまだ騎士を続けたいかい?」


 私が質問すると、グレンはとっても驚いた表情を見せた。


「自分には、その資格はありません……。ミア様のことも、ローレッタ様のことも、お守りできませんでしたから……」

「まぁ、再びローズ騎士になるのは無理だろうね」


 私やローレッタが強引に復帰させても、グレンが肩身の狭い思いをするだけ。


「自分はこの程度の処分で済んだこと、感謝しています」グレンが涙を拭って言う。「処刑されてもおかしくないのに、5年の刑で許されています」


 私とローレッタが生きて戻ったからである。


「ところで、私は新たに領地を手に入れたんだけど……」


「はい?」とグレンが首を傾げた。


「信用できる者が必要だから、君とニーナを連れて行きたいんだよね」

「し、しかし自分は役目を果たせなかった元騎士で……」


「お姉様、説明が雑です」ローレッタが言う。「グレン。お姉様はこの度、ローズ公国の大公閣下となりました」


「そうですか、大公閣下……え?」


 グレンが目をまん丸くした。


「向こうではお姉様やあたしを侮る者もいるでしょう。まだ若いですからね、あたしたち」

「更に! 大公の座を狙う不届き者もいるかも!」


 私はとっても楽しい気分で言った。

 小説とか漫画だと、絶対に私に対抗しようとする勢力がいるはず。

 悪役令嬢なんかも出てくるかも!

 あ、それ私だった!


「そんな奴がいたら、あたしが即刻、黒焦げにしますけど」


 ローレッタが真面目な表情で言った。

 ああんっ!

 ドロドロの権力争いとか面白そうなのにっ!

 でも確かに、ローレッタが一撃で全部終わらせてしまいそう。

 なんせ、助けに行った時には城を1つ制圧してるような性格だもの。

 我が妹ながら、いい感じに成長していると思うよ。


「まぁそんなわけで」私が言う。「君さえ良ければ、一緒にローズ公国に行って欲しいんだよね。建国式典みたいなの、やるっぽいからさ」


 マルティンの提案で、誰が公国の主か国民に示すための式典だ。


「本当に、自分でいいんでしょうか?」

「いいさ。でも、もうこっちには戻れないよ? 割と強引に連れて行くから」


 グレンは仕事をサボったわけじゃない。

 相手が悪かっただけのこと。

 実力だってあるし、伸び代もある。

 5年も牢で腐らせるには惜しい人材だと思う。


「ミア・ローズ大公閣下」


 グレンはその場で片膝を突く。

 とっても綺麗な姿勢だった。


「連れて行って頂けるのであれば、自分はこの命を閣下に捧げます」


 それは重いよ!

 でも言える空気じゃない。

 私だって空気ぐらい読める。


「ありがとうグレン。近く迎えに来る」


 そう言って、私とローレッタは別の牢へと向かった。

 私らを案内している刑務官が先頭だ。

 もちろん、私たちが向かったのはニーナの牢。

 そしてニーナにも同じ提案をした。

 ニーナはグレンと同じように、私に命を捧げることを誓った。

 重いっ!

 なんなの重い!

 もっと気楽に考えてくれてもいいのにっ!

 牢から出れて仕事に復帰できるラッキー、みたいな。


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