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悪役令嬢は全能ですっ! ~前世は女傭兵!? 四季咲きのミア・ローズ、最強の領地を目指して~   作者: 葉月双
五章

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3話 悪魔と地下牢の攻防


 私は拳銃を仮創造しようとした。

 でもダメだった。

 自分の魔力を感じることはできる。

 だけど、魔法を使おうとすると霧散する。


「ミア令嬢。君の首に付けたのは魔界の魔道具です」イケメンが言う。「魔法を使用不能にする効果があって、外せるのは僕とホーリエン王だけですねぇ」


 私は首のチョーカーに触れる。

 繋ぎ目みたいなのがない。

 引っ張ってみたけど、取れそうにない。


「ふむ。これを外すか、さもなくば死ね」


 私はイケメンの顔に跳び蹴り。

 イケメンは少し驚いた風な表情でガード。

 私の不意打ちをガードするとは、只者じゃないね。

 まぁ、騎士2人が翻弄されていたので、強いとは思っていたけれど。


「くっ、なんて凶暴な令嬢」


 イケメンは私から少し距離を取った。

 とはいえ、ここは地下牢の中。

 距離なんて限られている。

 私はさっと距離を詰めて、イケメンの股間を蹴り上げる。


「うおっ!?」


 イケメンは驚きの声と同時に、足を閉じてガード。

 体術はかなり上手みたいだね。

 私が次の攻撃に移る前に、イケメンが再び距離を取る。


「本当に公爵令嬢ですか君は!」イケメンが言う。「魔界の野犬の方がまだ大人しい!」


「ほう。魔界の犬はよっぽど臆病なんだね」


 私は服の中に隠し持っていた短剣を投げつける。

 もちろん狙いは顔面。


「どこから出した今!」


 イケメンは顔を横に逸らして短剣を回避。

 だがその時には、すでに私はイケメンの正面。

 私はもう1本の短剣を装備して、突き刺すように攻撃。

 イケメンは回避したが、体勢が悪かったので横腹を掠めた。

 イケメンの服と皮膚が裂ける。

 私は止まらない。

 近接格闘術、舐めるなよっと!


「このクソガキ!」イケメンの表情が歪む。「執拗に股間を狙いやがって!!」


 だって私の身長だとそこが1番狙いやすい弱点なんだもの。

 そこに興味があるからではない。

 断じて違う。


「じゃあ、たまにはこっちね」


 私はイケメンの顔面に跳び蹴り。

 イケメン、ギリギリでガード。

 やはり体術に長けているようだね。


「クソ! 人間のガキのくせにっ! なんでそんなに戦えるんだ!?」


 イケメンが蹴りを放つ。

 私はスルッと回避。

 威力的には、かなり危険な蹴り。

 どうやら、蹴り足に魔力を通わせて破壊力を上げているようだった。

 それ、当たったら私、かなりのダメージ負うんじゃね?

 ゾクリ、と心が震える。

 楽しいっ!


「何だそのケダモノみたいな表情! 本当に公爵令嬢なのか!?」


 蹴りを躱されて驚いているイケメンの股間に、私は正拳突きを放った。

 それはもう、渾身の正拳突きだった。

 確実に男のモノを破壊するに足る威力の正拳突き。

 最高の型に最高の速度を乗せた、自分でも驚くほど上手に打てた突き。

 なのだけど。

 私の視界からイケメンの股間が消える。

 そして私は地下牢の壁を殴ってしまった。


 最高の正拳突きで。

 ハッキリ言って、

 痛いっ!!

 すごく痛いっ!!

 私の拳がぁぁぁぁぁ!!

 クソ、今のはイケメンが躱したんじゃない。

 私の位置が変わったのだ。

 魔法の痕跡があるので、イケメンが魔法で私の場所を入れ替えた。

 たぶん転移とか移動とか、そういう属性だと思う。


「とんでもない令嬢ですね……」


 イケメンが更に魔法を使う。

 次の瞬間、私の短剣がイケメンの手に移動した。

 投げた分も合わせて2本ともである。

 ああんっ!

 唯一の武器だったのにっ!

 公爵令嬢の着る服には、あんまり武器を隠せないのにっ!

 まぁいいか。

 私は再び距離を詰める。


「まだやるのか!? イカレてるとしか言いようがない!」


 イケメンは驚愕の表情だったけど、私は無視して攻撃を加える。


「クソっ! お前をガチで殺すわけにはいかないんですよ!」

「さっきは割と強い蹴りを放ったくせに」

「うるさいっ! 頼むから大人しくしろ!」


 次の瞬間、私の両手に木製の枷がはめられた。

 たぶん、魔法で枷を私の手首に移動させた。

 私の手の位置も、手枷にはまるように移動させたのだと思う。

 かなり精度の高い魔法だ。

 私より魔法のレベルが上であることは間違いない。

 まぁ関係ないけどねー!

 私は蹴りを主体として攻撃を続けた。

 手が使えなければ蹴ればいいじゃなーい!


「どんな教育を受けたらそんな攻撃的になるんだ!?」


 イケメンは割とギリギリで私の攻撃をガードしたり躱したりしている。

 現在戦って感じたのは、体術的には互角ぐらいかなぁってこと。

 身体が大きいのと魔力を攻撃に乗せられる分、イケメンの方が有利ではある。


「自衛隊教育……よりは傭兵団の教育かなぁ」


 むしろ私の性分かな?


「ここまで攻撃的な人間は初めてだ! いい加減にしろ!」


 イケメンが言うと、私の両足にも木製の枷がはめられた。

 更に悪いことに、その足かせは鎖で地下牢の床と繋がっている。

 私の移動範囲が極端に制限された、というわけ。

 クソ、近寄って来たら頭突きで玉を潰してやる。


 私の決意を察したのか、イケメンは私には寄らず、牢の入り口へと移動。

 牢の外には出なかったが、最大限の距離を取ったということ。

 イケメンは何気に肩で息をしている。

 体力はあまりないみたいね。

 とりあえず、右の拳がジンジンする。

 さっき、本気で壁を殴っちゃったからなぁ。

 痛い。


「さて。少し頭を冷やしてもらいましょうか」

「冷静だよ、私は」

「冷静に僕を攻撃していたと? ますます質が悪いというか、凶暴すぎて野犬ってレベルじゃないですよまったく……」


 イケメンが小さく首を振った。


「質問しても?」と私。


「どうぞ」

「名前は?」

「オスカル。オスカル・バウド。中級悪魔です」

「悪魔だって? なら私は魔王かな」

「事実ですよ。僕は悪魔。魔界から召喚されて、ある契約に基づいて行動しています」

「はん。そりゃいい。面白いね」


 すっごいファンタジー!

 ゲームの『愛と革命のゆりかご』に悪魔は出ない。

 ついでに、こっちの世界で私は色々と調べたけど、悪魔が実在しているとは知らなかった。

 悪魔関連の伝承みたいなのはあったけど、どれも眉唾だったし。


「悪魔について話せるだけ話しておくれ」

「悪魔に興味が?」


 オスカルが問い、私は何度も頷いた。

 きっと私の瞳は恋する乙女のようにキラッキラのはず。

 だって悪魔だよ?

 悪魔の王とかいるのかな?


「ふん。下等な人間どもに、我々悪魔がいかに素晴らしい存在か説くのも悪くないですね」


 オスカルがニヤリと笑った。

 ナチュラルに人間を見下しているみたいだね。

 体術は私と互角ぐらいのくせに。


「我々はまず、人間より長寿で、人間より力が強く、人間より速く動け、人間より魔力量が多いですね」

「魔物みたいだね」

「低脳なこの世界の魔物なんかと一緒にするな!!」


 オスカルは酷く怒った風に言った。


「ごめんごめん。続けて」


「我々と人間の最大の違いは、その寿命のあり方です」オスカルが言う。「我々は契約を結び、願いを叶える代わりに、人間の寿命を自分のモノにできる」


「つまり、願いを叶え続けたら永遠に生きられる、ってことかな?」

「その通り!! 故に我々は永遠の存在! 故に我々は人間よりも知識を溜めることが可能で、魔力を増やすことが可能! つまり人間よりも上位の存在!」

「私の拉致は誰かの願い、ってことだね」

「その通りです。ミア令嬢。君の拉致を望んだのはホーリエン王」


 そこまで言って、オスカルは何かを思い出したようにハッとする。

 なんだろう?


「君を連れてきたこと、報告に行く。またあとで我々悪魔がいかに素晴らしい存在であるか説きましょう」


 そう言って、オスカルは姿を消した。

 魔法で移動したのだ。

 さて、とりあえず現状を再確認しておこう。

 私は床に座る。

 とっても冷えていて気持ちいい。

 初夏だからね。

 地下牢は涼しくていい。

 

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