7話 【全能】で捜査すれば余裕じゃね?
「私は別にいいけど、犯人の目星は?」
私はジェイドを見ながら言った。
正直、私は時々、誰かを撃たないとストレスが溜まる。
だからまぁ、撃っていい相手は大切なのだ。
王族のお墨付きで撃てるなら最高だよね。
「これから治安維持隊の屯所を訪ねて、捜査資料を見るっ!」
ジェイドは元気よく言った。
「お姉様に犯人捜しを依頼するなら、せめて資料ぐらいは用意しておいて欲しかったです。気の回らない王子様ですね」
ローレッタ、やけにジェイドにツンツンしてね?
私はもうドーナッツの件は許したよ?
「い、依頼じゃないぞ! 一緒に! そう! 俺様とミアで、犯人を捕まえるのだ!」
「こらジェイド」クラリスが言う。「アタクシも参加しますわよ?」
「お姉様がやるなら、あたしも参加します」とローレッタ。
「ミアがやるなら俺も!」
「じゃあ僕も!」
みんなの視線が私に集中する。
え?
私の決断待ち?
ふむ。
どうやらみんな、犯人を見つけてローレッタにいいところを見せたいようだ。
ローレッタは言葉通り、私がやるなら一緒がいいというだけだろう。
お姉ちゃんっ子なのだ。
可愛い。
って、えっと、犯人捜しだっけ?
「やるよ。でも最後は私が撃つ。いいね?」
「ははは! ミアは犯人をぶつのか! いいぞ! 俺様が許す!」
やったぜ!
王子様の許可が下りた!
中央直轄領の、しかも王都で堂々と射殺できる!
「まぁ強盗殺人なんてする奴はゴミクズですわ」クラリスが言う。「アタクシも打ってやりたいですわ」
「あれ? みんな撃ちたい感じ?」
「あたしは撃ちたいです」とローレッタ。
「俺はちょっと……まだ勇気が……」とレックス。
「僕も無理だと思います……」とノエル。
さすがローレッタ。
そしてレックスとノエルはまだ子供だから仕方ないか。
いや、ローレッタも子供だけどさ。
素質が違うよね、素質が。
「はっはっは! お前たち情けないな! 俺様はミアより先にやるぞ!」
「いいけど、私の分を残しておくように」
てか、王子は何で撃つのだろう?
銃ないよね?
弓矢かな?
それとも私に借りる気なのかな?
「じゃあ決まりですわね。このあと、治安維持隊の屯所に行って資料を見ましょう」
クラリスが言うと、セシリアがスッと私の近くに立った。
「ミア様、発言してもよろしいでしょうか?」とセシリア。
「側仕え如きが……」とジェイド。
「いいよ」
「そうだ! いいぞ! 早く発言しろ! 聞いてやる」
私が許可すると、ジェイドも許可した。
えっと、ジェイドの許可っているの?
王子だからいるのかな?
というか、セシリアは普段なら私に許可など求めない。
なぜなら、私の教育係でもあるからだ。
ほら、私の言動を諫める必要があるから、いちいち許可なんて取らなくていいのだ。
両親とそういう感じにたぶん契約が交わされている。
まぁ、今回は王子もいるし、私を立てるためにちょっといつもより控え目な態度にしている、と言ったところ。
実に真面目だよね、セシリアは。
「治安維持隊の屯所には、従者をやってはどうでしょうか?」
ああ、セシリアこれ、私らに出歩いて欲しくないんだなぁ。
まぁ気持ちは分かる。
王子と姫が何をやらかすか心配なんだよね?
「ふむ。従者か! いい考えだな!」
「じゃあ私らは訓練しながら待とうか」
「いや、やはりダメだ!」ジェイドが強く言う。「直接行く! 俺様たちで! みんなで! 行くのだ! 訓練が嫌なわけじゃないぞ! 行くべきだと思うのだ! 俺様は!」
「私はどっちでも」
私は肩を竦めた。
「では行くぞ! 飯を食ってから!」
言ってから、ジェイドは丁寧に食事を進めた。
わぁお。
さすが王子様。
食べ方がすっげぇ綺麗。
私よりずっと洗練されている。
正直、ちょっと見直した。
ローレッタも「ほう……」と興味深そうにジェイドの食べ方を見ていた。
ちなみにクラリスも綺麗な所作だった。
◇
屯所に到着すると、治安維持隊たちが引きつった表情で私たちを出迎えた。
どうやら、すでに情報伝達が行われていたようだ。
ちなみに、屯所には子供たちと護衛騎士1人だけで歩いて来た。
まぁ、本当は王族の護衛騎士が少なくとも10人は周囲に潜んでいるけれど。
クラリスとジェイドが用件を伝えると、屯所のリーダーが私たちを奥の部屋に通す。
その部屋には、すでにお菓子が用意されていた。
お菓子だけでなく、事件のファイルもテーブルの上に並んでいる。
実に準備がいい。
うちに来る時も、事前に教えて欲しかったなぁ。
とはいえ、周囲の騎士たちが目的地を知らなかったのかもね。
「よぉし! 犯人を見つけるぞ!!」
ジェイドが最初に座った。
私はクラリスをエスコートして椅子に座らせた。
「ありがとう存じますわ、ミア」
「いいんだよ」
ふふふ。
私はまだレンジャー訓練を諦めてないっ!
必ず近いうちにクラリスをサバイバル訓練に誘う!
さて、私も座ろうかと思ったら、ローレッタが寄ってきた。
そしておもむろに私のお尻を抓った。
なんで!?
痛い痛いっ!
ローレッタを見ると、かなりムスッとしている。
ああん!
ムスッとしてても可愛いから困る!
ローレッタはチラッと椅子を見る。
そして私を見る。
これは、エスコートして欲しいのかな?
私はクラリスにやったように、ローレッタをエスコートして椅子に座らせた。
ローレッタはニッコニコの笑顔で「ありがとう存じます」と言った。
良かった、正解だったみたい。
そして、それを見たレックスとノエルがジーッと私を見詰める。
お前らもか!
仕方なく、私は2人もエスコートしてあげる。
「ぎゃ、逆……」
「ミアですから……まぁ……」
2人は嬉しいやら困ったやらの表情で言った。
「ジェイド、あなたはどうして先に座りましたの?」
「俺様は王子だからな! 先に座って当然だ!」
「……バカ」
クラリスは溜息混じりに言った。
ジェイドはなぜ罵倒されたのか分からず困惑顔。
私も分からない。
まぁいいか。
とりあえず私も座る。
「容疑者リストあるかい?」
私が言うと、治安維持隊がファイルを1つ私に渡した。
テーブルの上にあったやつだ。
みんなそれぞれ、ファイルを取って読み始める。
私は面倒なので、【全能】を使うことにした。
目的は容疑者リストの中の誰が今回の犯人か確定すること。
イメージは矢印。
私の顔とリストの間に魔法陣が浮かぶ。
「おぉ」とジェイド。
魔法は発動したが、矢印は現れなかった。
私は容疑者リストをポイッとテーブルに戻す。
「この中に犯人はいない。【全能】を使ったから間違いない」
「さすがミアですね!」とノエル。
「とりあえず、資料に目を通してみようかねぇ」
前世の私ならともかく、今の私は頭いい設定。
少なくとも、IQは150ぐらいあるはず。
たぶん。
あるといいなぁ。
私も含め、みんな真剣に資料に目を通した。
レックスはちょっと資料を読むのに苦戦している様子。
「誰か意見は?」
一息吐くタイミングで、私が言った。
「なんて酷い事件だ! 許せん! 我が国でこんな極悪な犯罪が起こっているとは!」
「まったく同意見ですわ。酷すぎますわ。物を取るだけでも許せませんのに、被害者を全て殺すなんて……」
ジェイドとクラリスは自分の感想を述べた。
「犯人は複数ですね」
「それは俺も思った」
ローレッタの意見にレックスが賛同した。
「かなり手慣れているので、以前から犯罪を繰り返しているのではないでしょうか?」
そう言ったのはノエル。
「ああ、その通りだよ君たち。これは極悪で酷い事件で、更に犯人は複数」私が言う。「しかも手慣れている。分かり易く言えばプロの仕事。しかもこれは、普通の犯罪者じゃない。もし普通の犯罪者なら、かなり訓練されてる。治安維持隊か騎士か、最低でも兵士。そうでなければ、傭兵団《月花》とかね」
資料を見て分かったのは、あまりにも手際がよくて容赦がないこと。
芸術的なまでに洗練された手口。
殺して奪う。
奪ってから目撃者を殺すのではない。
最初に殺してから奪っている。
あるいは目的は殺しか?
「《月花》ですか?」
ローレッタが驚いた風に言った。
「いや、違うと思うよ。彼らならできる、って意味で名前を挙げただけ」私が肩を竦める。「被害者の中に、要人が2人混じってる。もしかしたら、これは要人の暗殺がメインで、他はカモフラージュかもしれないね」
だとしたら誰が?
何のために?




