和解
『ごめんなさい。あとありがとう』
涼子は絞りだすような声でいった。
『うん…。今度ケーキでもおごってもらおうかな。高いやつね!』
紗世の笑顔と言葉に涙が止まらない。
『本当に本当に…ごめんなさい。時田さんのこともごめんなさい。入社した時から気になってたのは嘘じゃなくて。でも隣には常に飯塚さんがいた…。かわいくて綺麗で優しくて。すごく嫉妬しました…。こんな人いるんだって。飯塚さんが時田さんのこと好きなのわかったから余計にほしくなって頑張って。でもどこか物足りなくて浮気して…。自業自得ですよね。それなのにまた取り返そうとして…。たくさん傷つけた。今思えば本当は飯塚さんが好きだったんじゃないかなって…。憧れて傷つけたくてそれが憎しみに変わって…。こんなわたしにもまだ優しい。庇う価値もないわたしを庇うなんて本当にバカですよ…』
『庇う価値があるかはわたしが決めるの!1年だけど先輩だから言わせてもらうよ。佐田さんちゃんと幸せになりなさい。それから人を信じなさい。あなたが信じて相手にも信じてもらって。信頼できる人にならきっと甘えられる。強がる必要なんてないって思えるよ』
『ありがとうございます』
『ありがとうは幸せになってから言って。おかげさまでわたしは幸せだし。幸せを見つけたら今度はお茶しよう。前に断っちゃったけどあれ撤回する。まわりをよく見て!あなたの味方は必ずいる』
コンコン。
ドアをノックする音が聞こえた。
『はーい』
『ごめん。時田さんを愛してたってところあたりから聞いちゃってた』
『立ち聞き?佐田さんに雄介には内緒ねって言ってたのに。バレちゃしょうがない。本当に好きだったんだから仕方ないでしょ』
『開き直りやがったな』
病室に笑い声が広がった。
『佐田!前に読んだ企画書だけどおもしろいと思ったよ。仕事頑張れよ。俺も紗世も応援してるから』
『ありがとうございます』
深々と頭を下げて涼子は病室をあとにした。