罪をつぐなう時
『新藤さ…ん?』
突然の告白に涼子は動揺する。
なぜここで新藤の名前がでてくるのだろうか。
そしてこの徳島真樹と彼にどんな関係があるのか。
汗がしたたり落ちる。
『わたしと新藤は従兄弟同士なのよ。小さい頃から仲良しでよく遊んでた。年が近いこともあって恋愛の話なんかもお互いずっとしてきたの。だから紗世ちゃんのことも知ってるしあなたのことも何となく聞いていた。そんな時タイミングよく修くんにメールを送ってきたでしょ。わたし思ったのよ!あなたは痛い目にあわないと気づけないって。修くんも新藤も反対したわ。でも…最後は納得してくれた。これ以上あなたに自分を傷つけてほしくないって。その気持ち無駄にしてほしくないわ』
涼子は少しずつではあるがことのいきさつと今置かれている状況を理解してきた。
そういうことだったのかー。
怒りと恥ずかしさがこみ上げてくる。
『おせっかいなのよ。あなたに関係ないでしょ?飯塚さんもあなたも嫌いなの。だから全てをとりたかった。それに興味がある人に声をかけて何がいけないの?弱肉強食の世界なのよ。あたしは欲しいものを手に入れるし、それが他人のものでもかまわないわ』
まくしたてるような強気の発言。
だが、真樹はいたって冷静だ。
『そうやって生きてきたはずなのにあなたには何もないじゃない。愛する人も友達もあなたのそばにはいない。どうしてなのか一番わかっているのはあなたでしょ。あなたは真剣に人に向きあっていない。そんな人が誰かの大切な人になれるわけがないわ。まだやり直しがきく。気づいてほしいって思ったの。こんなことしてごめんなさい。でも…もう紗世ちゃんを傷つけないで。これ以上紗世ちゃんを気づけるようなことがあったら…きっと新藤が黙っていないわ。紗世ちゃんのためならきっと何でもするわ。紗世ちゃんはそんなことやめてっていうと思うけど。でもこれが最後通告よ』
反発するべきか。
このまま退散するべきか。
判断できずに佇む涼子にひとりの女のが近づく。
『あんたのせいで。あんたのせいでわたしの人生は狂ったのよ。大事な旦那をとられて。わたしは流産までしたの。もう何も残っていない。あなたを殺してわたしも死ぬわ』
女の手にはナイフがキラリと光った。