罪を認める時
「あれ!こんにちは!並木さん」
涼子は満面の笑顔で手を振る。
少し動揺した様子で並木がこたえる。
「あぁ。佐田さん!偶然だね。君もここにごはんを食べにきたの?」
「いえ。あたしはあっちで買い物です」
涼子は向こうの通りの大きなショッピングビルを指さす。
「もしかして噂の彼女ですか?」
「あぁ。紹介するよ」
「徳島真樹です」
にっこり笑う彼女は大学の時より綺麗になったようだ。そして彼女の左手の薬指にはダイヤが光っている。
「あ!指輪キレイですね」
すかさず突っ込む彼女に真樹は笑ってこたえる。
「ありがと!やっともらったの」
幸せそうにしてる彼女を見て涼子は少し哀れになった。自分の彼氏が指輪を買ったその日に別の女の家にいたなんて…。
「佐田さんが選んでくれたんでしょう。修くんがこんなかわいいの選べるはずないと思って問い詰めたら白状したの。ありがとね!わたしのこと覚えてる?」
「先輩は有名人でしたから…」
「別に有名人じゃないよ。たまたま雑誌にでてただけ」
なぜだろう。
心臓がドキドキいっている。彼女の顔を真っ直ぐ見ることができない。耐えられなくなり涼子はその場を去ろうとする。
彼女は全てを知っているんじゃないか。
「ごめんなさい。あたし待ち合わせの時間が…。じゃ」
急いで立ち去ろうとする涼子を止める。
「待って!あなたも有名人だったじゃない」
「真樹さん?突然どうしたんですか?」
涼子の動揺は明らかだ。冷や汗が流れる…。
「待ち合わせなんて嘘でしょ?一緒にお茶でも飲みましょ」
「結構です」
涼子は今すぐにでもこの場から逃げ出したかった。彼女の威圧感に耐えられない…。
この人は誰?!
「ダメ!話は終わってないわ。別にいいじゃない。この間は未遂だったんだから…。確かに修くんはあなたの部屋に泊まったかもしれない。でも何もなかったでしょう。彼は途中で我に返ったでしょ?」
「何のことですか?わけわかんない」
「ねぇ、今ここで謝って」
「なんであたしが?もしあなたの彼氏があたしの部屋に来たなら悪いのはあたしだけじゃないはず。まず自分の彼氏に謝らせたら?」
真樹は呆れたような困った顔をする。はっきり言ってその姿も美しい。
「本当。あなたって全然反省しないのね…。いろんな人を傷つけて、自分も傷つけて。そろそろ種明かししようかな。修くんが指輪選びを頼んだ時からゲームは始まっていたとしたら?全部わたしと新藤が考えたことだって言ったらあなたはどうする?」