計画的犯行
案外あっけなかったなと思う。
彼女のために一生懸命指輪を選ぶ彼をできるだけ褒めた。
そして時々寂しそうな顔を見せればいいのだ。
「並木さんの彼女は幸せですね。並木さんにこんなに思われて。絶対嬉しいと思う。彼女がちょっとうらやましいな」
にこっと遠慮がちに笑う涼子に並木は優しい笑顔を向けた。
「佐田さんだって付き合ってる人いるでしょ?モテるって噂聞いたことある」
「噂なんてあてにならないですよ。わたしは好きな人に振られてばかり。いつもうまくいかないの。自信もないし…」
ちょっとうつむき加減の彼女を勇気づけるように少し大きな声だった。
「佐田さんはかわいいし、キレイだよ。自信をもって」
「ありがと」
「あ!指輪のお礼。何か食べたいものはあるかな」
「じゃあ!ビール!ビールが飲みたい。居酒屋でやき鳥食べながら飲みたいな。オヤジっぽい?」
「いや。俺もオヤジだからそういうの好き。いこ」
並木が連れてきてくれたのは本当によくある普通の居酒屋だった。でもメニューはどれを頼んでもおいしい。
「並木さんは彼女とこういうところくるんですか?」
さりげなく彼女のことを聞く。
「たまにね。自慢じゃないんだけど俺の彼女けっこうキレイでさ。昔雑誌のモデルなんかやってて。だから付き合いたての頃は高級イタリアンとか背伸びして連れていったりしてたの。でも彼女に『わたしはラーメン屋とか定食屋とか居酒屋も好きだよ』って言われて。それからは無理しなくなった。ノロケになるけど本当に良い子なんだ。あんな子と一緒にいれたら幸せだろうなって思う。だからコレ買ったんだけどね」
「へぇ。惚れてますね」
「そうだね。ケンカもたまにするけどやっぱり彼女がいないとダメなんだ」
「じゃあ、浮気とかは?」
「ないな」
「すごいね。わたしはよく浮気されるんです。並木さんみたいに一途な人好きになればいい?」
「そうだね」
お酒のペースが早くなってきている並木を見て徐々に自分にはまってきていると確信する。
「終電なくなっちゃった」
待ってましたと言わんばかりのタイミングで涼子が切り出す。
「せっかくだからあと一杯だけ付き合ってくださいね」
涼子に腕を組まれても何も言わないくらい並木は酔っ払っていた。
そしてバーで何杯か飲んだあと。
「まだ飲みたりない。家で飲みませんか?」
無邪気に囁くのだった。
部屋に入った瞬間彼女は本性を表した。
並木に抱きついたのだ。
「ついてきた俺が悪いけどダメだよ。ごめん。タクシーで帰るよ」
そう言って立ち去ろうとした彼にさらに強く抱きつく。
「行かないで!そばにいてくれるだけでいいの。わたしが眠るまでいてくれればいい。近くにいて」
目を潤ませながら訴える彼女。
「わかったよ。じゃあ、君が眠ったら帰るよ」
「ありがとう。眠るまで手を握っててください」
そして…。
手を引かれベッドルームへ連れていかれた並木はそこで理性を失った。