あたたかい食卓
「結局お金ってことでしょ?」
吐き捨てるように言う。
「かわいい顔して優しいふりして!最後は王子さまを選んじゃうんだもん。これだからお姫さまは…」
憎たらしそうな彼女の声がホテルの部屋に響く。
「お姫さまがいらないなら時田さんもらおっかなぁー」
「涼子ちゃんさ。いまもまだ時田が好きなの?こんな関係続けてる俺が言うのも何だけど…」
「こんな関係…良いじゃないですか。あたしは楽しいし、あなたも満たされる」
「涼子ちゃんが良いなら良いんだけど。ただ時々それで良いのかなって。時田への執着も本当は紗世ちゃんへの執着なんじゃないかなって…」
「なにそれ!時田さんが好きだったのは本当。飯塚さんが邪魔だったのも確か。でもそれだけ。飯塚さんさえいなければって思ったことはあるけど。新藤さん狙ってたのにな…」
「紗世ちゃんがいなくても新藤さんは君を好きにならない。それに時田も涼子ちゃんを選ばないよ。自分をちゃんと見てほしいなら自分もその人をちゃんと見なきゃ」
「余計なお世話。あたしは楽しければいいの!お説教されるならあなたにはもう会わない。他にもあたしに会いたい人はたくさんいるんだから!」
「ふーん。それなら良いけど」
「時田さんだって飯塚さんがいるのにあたしに会いに来てたの。結局飯塚さんだってその程度よ。綺麗でかわいくて優しくて。理想をそのままにしたような女なんてつまんないのよ…」
「そっか。でも時田はその過ちを死ぬほど後悔してる。取り返しのつかないことをしたって。同期で入社した時から一緒だけどあんなあいつ初めて見たよ。今まで好き放題やってきたやつだけど紗世ちゃんのことは本気で好きだったみたい。だからしばらく放っておいてあげてよ」
「男の友情ってやつ?飯塚さんだってあたしのおかげで玉の輿だよ。むしろ良かったじゃん」
「いい加減にしなよ!紗世ちゃんがどれだけ傷付いたかわかるの?」
「知らないよ。今まで恵まれていて傷ついたことなんてなかったんだからいいじゃない。天使みたいに笑って腹立つのよ」
「俺帰るわ…」
「ばいばい」
「涼子ちゃん。俺はさ…涼子ちゃんが好きだよ。涼子ちゃんの弱い部分も全部見てきたつもりだよ」
「いきなり何のつもり?!」
「じゃあね」
「おかえりなさい」
「ただいま」
「外寒かった?」
「うん」
「シチュー作った」
「おいしそうな匂いしてる」
「でしょ」
結婚して初めて一緒に暮らしてお互いのことを少しずつ知っていく。毎日新しい発見があって楽しいし、幸せだ。
「紗世。これおいしい!」
「やった!まだいっぱいあるよ」
ふたりで食べるごはんがこんなにおいしいなんて思わなかった。ふたりでいると暖かい気持ちになれる。
「わたし幸せだな」
「突然どうしたの?」
「新藤さんと結婚してよかったなって」
「俺も!これからもっともっと幸せになれるよ!」
「うん。「明日は何作ろうかな」
紗世は夕飯の買い出しでスーパーにきていた。カバンの中の携帯がブルブル震える。
「もしもし」
「おひさしぶりです!佐田です」
更新遅くなってすみません。
年明け早々風邪をひいてしまいました。
仕事もだいぶ落ち着いてきたので小説を再開します。
今年もよろしくお願いします!




