かわいい恋
「また会ったね。花嫁の妹さんがこんなところにいていいの?」
ホテルの中にある喫茶店でコーヒーを飲んでいた紗英に新藤が話しかけてきた。
「だって喉かわいたたんだもん。朝から挨拶とか色々大変で…。今ね!お父さんがひたすらお姉ちゃんのドレス姿を写真に撮ってるの。チャンスだと思って抜け出してきたの。コーヒー1杯くらいは飲む時間あるだろうって」
「紗英ちゃんらしいね」
「わたしのことよく知らないくせにー。でもわたし新藤さんのことお姉ちゃんに聞いてちょっと知ってました。失恋した時に自分を支えてくれた人がいるって。好きになるかもしれないって。名前とか具体的に聞いてなかったけどさっき新藤さんに会ってこの人かぁって思った」
「結局振られたけどね」
「でも本気だったと思います。新藤さんのこと好きになってきてたって。ま…結局振られたことにはかわらないんですけど」
「紗英ちゃんってけっこうブラックだね…」
「お姉ちゃんみたいに純粋な女なんて今時いませんよ。ブラックなわけじゃなくてわたしは現実を見てるんです!わたしだったら時田さんを選ばないで絶対新藤さんを選ぶもん。やっぱり将来安泰な方が良いもん!もしお姉ちゃんが忘れられないならわたしを彼女にしてくれてもいいんですよ?」
ふざけた感じであきらかに口調は違うがにっこり笑う紗英の顔が紗世と重なってついつい新藤は言葉につまってしまう…。
「新藤さん!ギャグで言ってるんだからギャグで返してくれないと困ります」
今時の女子大生のノリでちょっと身をのりだす紗英。
そんな紗英の顔に自分の顔を近づけ…
「じゃあ、まだ飯塚のこと忘れられないから俺と付き合ってくれる?」
しばしの沈黙…。
「なーんちゃって!紗英ちゃんこれでイイ?」
新藤がにっこりと紗英に笑いかけるが紗英は動けない。
顔を真っ赤にして黙りこんでしまっている。
「やっぱり俺のセンス古いかな?でも近くで見ると本当に紗世に似てるね。でも紗英ちゃんの方が若いな」
紗英の異変に気付かずに笑う新藤。
「あ!こんな時間だ…。そろそろ戻らないとね。またあとでね」
紗英の分も伝票を持ってでていく新藤の姿を紗英はひとり見つめていた。