彼女からのプロポーズ
3ヶ月前の事故の日…夜明けを迎えても時田は目を覚まさなかった。もうすぐ完全に日が昇る。
もうダメなのか…。
誰もが最悪の事態を想像して息をのむ。考えてはいけないとわかっていても…ついつい悪い方へ悪い方へと頭が…心がいってしまう。
「理子!ごめん。5分だけ時田さんとふたりっきりにしてもらっていいかな?わたし彼に話たいことがあるんだ。その間誰も入ってこないようにお願いしたいの。ごめんね」
真っ直ぐな瞳で理子を見る紗世!理子が好きな意志の強い瞳がキラキラと揺れている。
「うん!わかった。ゆっくり時田さんと話して」
理子がそっと病室をでていく。
静まり返った病室。そこには紗世と時田しかいない。
「時田さん…。わたし今もやっぱり時田さんが好きです。頑張っても頑張ってもあなたが手に入らないことががもどかしくて…いっそのこと逃げてしまおうかなって思ったの。自分を想ってくれる人と一緒にいる愛もあるのかなって。その人を傷つけてることに気づきもしないで自分が楽になればいいやって。でもそれは違ったみたい。後悔したままじゃいつになっても楽にならないの。日に日につらくなっていくだけで…。わたしきっと努力が足りなかったんだと思う。時田さんがわたしだけをみてくれるようにもっと努力すればよかったなって。後悔してる…。でもね!もう後悔はしたくないの。一度きりの人生だからワガママでも思いっきり生きたい。わたし時田さんの奥さんになりたいです。絶対に後悔させないから。時田さんに幸せにしてもらおうなんて思ってない。わたしがあなたを幸せにする。だからわたしと結婚してください。もうあなたは目を覚ましてるでしょ?わたしの話聞こえてるでしょ?」
時田の手をぎゅうっと強く握る。
が、反応はない。
もう一度強くにぎる…。
するとと彼の手が力なくきゅっと紗世の手を握り返す。
「やっぱり目を覚ましてた…」
目にいっぱい涙をためて時田を見つめる紗世。涙で前が見えない。
「おはよう。朝だよ」
「紗世…?なんでここにいるの?」
「なんでって…。時田さんの奥さんになることにしたからでしょ?」
にこっと笑う。
カーテンをあけると太陽が眩しかった。