純白の花嫁
吐く息が白い。
「もうスッカリ冬だね。真っ白」
「うん。やっぱり寒いね」
理子は同僚の女の子たちと雪の中をザクザクと歩く。しばらく歩くと小さなかわいらしいチャペルが見えてきた。
そこには雪よりもまだ白い美しい花嫁がいた。
「きれー」
息をするのも忘れて花嫁を見つめる。
「あー!理子!!加奈と真希も来てくれたんだね。遠いとこありがとう」
にっこり笑うキレイな花嫁に誰も声をだすことができない。
「あれ?どうしたの?わたしに何かついてる?」
ただただ自分を見つめる友人たちを不思議そうにみる。
「紗世…キレイ…キレイすぎる」
突然大粒の涙を流し出した理子に紗世は戸惑う。
「理子?どうしたの?まだ式もはじまってないのに泣くなんて!早いよっっ」
「だって…だって。本当に綺麗なんだもん。こんなに綺麗な花嫁見たことない。紗世があんまり綺麗で幸せそうだから…わたし嬉しくって。どうしよう…涙止まらない」
「理子は泣き虫だね…。今からそんなんで本番はどうするの?でもありがとう。わたし今とっても幸せだよ」
理子につられてあとの2人も涙ぐむ。
「あー!加奈と真希まで泣いてるぅ。もう泣き虫なんだからっっ!」
トントン。
ドアをノックする音が聞こえる。
「はーい」
「紗世さん。新郎が紗世さんの花嫁姿を今か今かと待ちわびていますよ。もうウロウロして落ち着かないみたいで。そろそろドレス姿見せてあげてもらえますか?」
「そうだ!まだ彼に見せてないんだった」
ぺろっと舌をだし軽くウインクする。
「じゃあ、またあとでね!あんまり泣くと化粧が崩れちゃうよ」
そう言って控え室をでていった。
「紗世…なんか少し変わったね。更に綺麗になったし、すごくイキイキしてる。やっぱり愛があると違うのかなぁ」
「本当に。あんな綺麗な花嫁をもらえるなんて花婿は幸せだね。紗世のウエディングドレス姿を見た彼の表情が見たいな」
理子がいたずらにニヤっと笑う。
「ごめんね。遅くなって。控え室に理子たちが来てくれたんだよ。会うのひさしぶりだから嬉しくって。理子なんてね…まだ本番も始まってないのに泣いてるの…おかしいでしょ?」
「……」
「聞いてる?」
「……」
「どうしたの?ドレスの感想言ってくれないの?」
「いや…」
「なんか変?」
「そうじゃなくて…」
「化粧が濃いとか?だってこれくらいが良いってホテルの人が…」
「違う…」
「じゃあ、何?」
心配そうに彼の顔をのぞき込む。
「いや…。紗世があまりにも綺麗だから…」
「なにそれー!?」
「冗談じゃなくて…本気だよ。まだまだ未熟だけど俺と一生一緒にいてください」
「はい…」
紗世がそっと彼の手を握る。
こんな幸せがあるなんて思わなかった。
3ヶ月前のことを思い出す…。




