突然の知らせ
ピンポーン。
「お!紗世。ごはんがきたよ」
新藤が嬉しそうに笑う。
ホテルの人たちが手際よく料理を並べていく。上品で色がきれいでおいしそうな料理。
海鮮が好きな紗世のために新藤が頼んでくれたと思われる料理がズラーッと並んでいる。デザートのスイーツも忘れてない。
「すごい…!おいしそうだね。でもこんなに食べれるかな?」
困ったように笑う紗世に新藤がこたえた。
「食べたいものを食べたいだけ食べればいいよ。あとは俺が責任持って食べるから」
「ありがとう!きれいなお料理。食べるのもったいないな」
「ここの料理は全部おいしいから遠慮せずにどうぞ。食べてみて」
「うん」
まずあわびのグラタンを一口。
「わっ。これすごいおいしい!他のも食べてみようっと」
次々と料理を口に運んでいく彼女を楽しそうに見つめる彼。
結局紗世はデザートのマロンパイまで全て完食した。
「胸がいっぱいで食べれないかもって言ったのに全部食べてるし」
からかうように笑いかける新藤。
「だっておいしかったんだもん」
少し恥ずかしそうにうつむく紗世。
「嬉しいよ。全部食べてくれて。紗世の元気な顔が見れたのも嬉しい」
新藤が紗世の後ろにまわりぎゅっと強く彼女を抱きしめた。
「もう少ししたら散歩いこう。ほら。カロリー消費しなきゃね」
「意地悪…」
紗世もきゅっと彼の腕を抱きしめた。
「夜はやっぱり静かだね」
ふたりでホテルの裏庭にきていた。
「星がきれい」
夜空を見上げる紗世の手をとって、ぎゅっと握りしめる。
しばらく外を歩いていたら紗世の携帯がなった。
「誰かな…。あ!理子だ。ちょっとごめんなさい」
新藤から手を離し、電話にでる。
「理子。どうしたの?」
「…紗世。落ち着いて聞いて。時田さんが事故にあったって…。紗世の携帯つながらなくてわたしのとこに連絡があったの。いまどこ?病院にこれる?…紗世聞いてる?」
「事故…?誰が?よくわかんないよ」
「紗世!しっかりしてね。まだ状況はよくわからないの。ただ良い状態ではないって。わたし今から病院に向かうから。紗世はどうする?」
「今…東京にいないの…。でも何があっても朝までには帰るから。時田さんは起きた時にわたしがいたらイヤかもしれないけど」
心配そうにこちらを見ていた新藤に一言早口で言う。
「ごめんなさい。新藤さん。わたし東京に帰ります」
「え?何?何かあったの?紗世!待てよっ。どうしたの?」
「…時田さんが事故にあったって…急いで東京に帰らなきゃ…」
「事故?容体は?」
「わかんない…」
「今、車だすから」
「じゃあ、駅まで」
「どうして?東京まで送るよ」
「いえ」
「東京まで送らせて」
「ごめんなさい。気が動転してよくわからないの…こわい」
「荷物はそのままでいいから。財布と携帯だけ持って早くでよう。大丈夫だから」
紗世の肩を抱く腕に力が入る。
「大丈夫だから」
自分に言い聞かせるように新藤はもう一度強く言った。




