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恋心

家へ帰ると見覚えのある車がとまっていた。

「やっと会えた。電話でてくれないし。メールも返ってこないから心配したよ」

「新藤さん…」

紗世は力なく笑顔を作る。

「元気ないね…。なんかあった?」

「別に何も。仕事が忙しくてちょっと疲れてて。メールちゃんと返しますね。今日はごめんなさい」

パッと目をそらして家の中に入ろうとする彼女を追いかけてつかまえた。

「ちょっと待って!どうしたの?なんか俺のこと避けてる?理由があるならちゃんと言ってほしい。体調が悪いなら今すぐにとは言わない。明日でも…あさってでもいいから」

「ごめんなさい。新藤さんが悪いわけじゃくて…ただ…」

「ただ何?焦らなくていいからゆっくり話して」

「わたし…あの…書類を持っていった日に新藤さんのこと見かけたんです。佐田さんと一緒だった。親しげに話しててそれを見て、そのまま走って帰ってきてしまった。何かを疑ってるわけじゃないです。でもわたしといる時より自然で楽しそうな感じがして…また自信がなくなってしまいました。時田さんのときもそうだったから…。わたしの知らないところで彼は彼女に会っていたから。新藤さんは違うってわかってます。それに…」

「それに…?」

「わたしその時こんなことなら時田さんと札幌にいくって言えば良かったって思ったんです。最低でしょ?モヤモヤしてるうちに電話もメールも返せなくなってしまって。ごめんなさい」

新藤はにっこり笑って、紗世のほっぺた両手ではさむ。

「なんだ。あの時みてたなら声かけてくれればよかったのに…。佐田とは何もない。彼女にわたしをあなたの会社で雇ってくれって頼まれたけど断った。俺に興味があるのか暇なのかわかんないけど毎日のように会社の前に来てさ。話くらいはするけど…それ以外はないな。前に1度だけごはんを食べにいったけどそれだけだよ。あんな風に通われてもどうすることもできないし」

そしてちょっと怒ったように紗世をにらみ、ぎゅっと抱きしめる。

「お願いだから他の人を選べば良かったなんて言わないで!すぐ好きになってもらえるなんて思ってないし、長期戦覚悟だけど。でも俺のことちゃんとみてよ」

「ごめんなさい。わたし新藤さんのこと自分で思っている以上に好きだと思う。佐田さんと一緒にいるところ見て苦しかった。つらかったの…。わたし以外の人と楽しそうにしてるの嫌だった」

「紗世…」

カタンカタン。他の住人が帰ってきたようで階段をあがってくるのが聞こえる。

「家の前だって忘れてた…」

紗世がかわいくぺろっと舌をだす。

「車とめてきて。一緒にごはん食べよ」

彼女がにっこり微笑んだ。


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