小さな嘘
新藤に声をかけることなく紗世はそのまま駅の方向へと歩きだした。
彼が何をしていたわけではない。自分を裏切っていたわけでもない。
わかっているけれど…なんとなく嫌な気持ちになる。
「はぁ…」
自然とため息がもれる。
電車にのって、最寄りの駅について。コンビニによって雑誌とティラミスとハチミツ豆乳を買う。無性に甘いものが食べたい気分だ。
せっかくいつもより早いんだから家でゆっくりしよう。
家に着いて、テレビを見ながらごはんを食べていると携帯がなった。
新藤からだ。
でるかどうか迷っているうちにコール音はならなくなり…その後一通のメールが届いた。
『今日会社に書類届けてくれたんだって?ありがとう!連絡くれればごはんでも誘ったのに』
何て返事をすればいいのかわからない。
『今日は仕事のあと予定があったので。ごめんなさい。また今度ごはん行きましょうね』
嘘をついてしまった…。予定なんて特になかったのに。
新藤と涼子が一緒にいるところを見てとっさに逃げだしてしまっただけなのに。
『そっか…残念。うちの会社の近くにおいしい寿司屋があるんだ。今度いこう』
そのメールには返事をだせなかった。
涼子が言っていたお寿司屋さんのことだろうか…。新藤と涼子は毎日会っていたのだろうか…。
こんなことなら時田さんと札幌にいっておけばよかった…。そんなことまで思ってしまう。
「わたし最低だ…」
その日の夜、紗世はなかなか寝付けなかった。