わたしの知らない彼
「昨日はおいしいごはんをありがとう。ごちそうさまでした」
朝起きると紗世のところにそんなメールが届いていた。なんとなくちょっとくすぐったくなる。
時田との恋であんなに悩んでいたのに…もう新しい恋をしようとしている。そんな自分に少し呆れながらも前を向かなくちゃと自分の中の自分がささやく。
冷たい水で顔を洗いサッパリした気持ちで会社へ向かった。
新藤と紗世は毎日メールや電話のやりとりをするわけではない。それでもなるべく時間を作ろうとしてくれる彼の優しさが嬉しくて、自分も優しい人になろう!思いやりのある人になろうと思わせた。充実しているからか紗世は心穏やかでいられることが多くなった気がする。
「悪いんだけどこの書類新藤くんのとこに届けてきてくれないかな?受付に預ける話になってるから。この書類届けたらそのまま直帰していいよ」
突然部長に頼まれた仕事。
まだ時間的に早いけどもし彼の仕事がそんなに遅くまでかからないならごはんでも誘ってみようかなぁ。ぼんやりとそんなことを考えながら新藤のところへと急ぐ。
紗世が思っていたより少し遅い到着だったが、無事に書類を届けることができて安心して会社をでようとした時…。
外にいる新藤の姿が目に入った。
「しんどうさ…」
呼びかけようとした紗世の前に誰かと親しげに話している新藤がうつる。聞き覚えのある声…。
「今日はお仕事何時に終わるんですか?」
「あいかわらず君もしつこいね。こんな風に毎日通われてもかまってあげられないよ」
「またお寿司いきましょうよ」
「おごらせるつもり?」
「さぁ?別にそんなつもりじゃないけど」
楽しそうに話す新藤と涼子を見て気が遠くなる…。2人の会話から新藤が涼子を相手にしていないのはわかる。
でも紗世と一緒にいる時の彼とは違う。そこには素の彼がいた気がした…。
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